昨年の10月23日に続き、3月8日に開催する国際会議「文化は資本だ-創造経済とは何か」の導入プログラムとして、多彩な日本の企業メセナを連続でご紹介する「メセナフォーラム」。
いよいよ国際会議は最後となります第5回メセナフォーラムを、株式会社竹中工務店様にて開催致しました。

メセナフォーラム第1回から第4回※までは、都内の企業や企業財団にご登壇いただいたり、熊本・鹿児島を拠点としている企業のメセナ活動の視察ツアーを開催したりするなど、企業メセナをさまざまな切り口でご紹介してきました。(前回までの様子はこちら。第1回第3回第4回。※第2回目は台風により中止) 

そして5回目となる今回は、「社会創造におけるアートNPOの役割とは」と題し、企業や企業財団ではなく、もう一つのアクターであるアートNPOの活動に注目。
アートと社会のつなぎ手であるアートNPOから、NPO法人こえとことばとこころの部屋(以下、ココルーム)代表の 上田假奈代様、そしてNPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク (以下、JCDN)代表の佐東範一様をゲストに迎え、お話を伺いました。

後半ではモデレータとして太下義之様 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 芸術・文化政策センター 主席研究員/センター長にも登壇いただき、さらに深くそれぞれの思いを伺うこととなりました。

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①ゲストトーク:上田様(NPO法人ココルーム代表)

P1130204.JPG横トリでの展示ブースで流したのと同じ映像をバックに、プレゼンテーションが進められました。詩人の上田さん。「詩人をフランス語の辞書で引くと『役立たず』。その役立たずがどう生きていこうか逡巡した」と語りはじめられました。
人生をあきらめたくなるような時があるけれど、欠けずにそこにある命。命を感じられるような言葉や態度をそっと差し出す仕事をしようと、上田さんは2003年に詩業家を宣言します。そして、アートが好きな人に限らずいろんな人が集まれば良いと始めた、喫茶店のフリ。大阪市の「フェスティバルゲート」での活動を経て、2008年に隣接の釜ヶ崎に拠点を移します。
なぜ釜ヶ崎で活動を継続するのか。それは、ホームレスの多さや高齢化に気付き、表現する団体として彼らとどう関わっていくかを考えた結論だったそうです。そして、炊き出し現場や施設などでワークショップを開いたのが下地になり、2012年に「釜ヶ崎芸術大学」が開校しました。
上田さんは自身の活動についてこう言います。福祉的なアプローチとは考えていない。お世話するされるの関係ではない、と。表現する取り組みの中で、語り始めたおじさんたちから、人生は本当にいろんなことがあっても人は変われるし、生きていくことが人生を豊かにしてくれることを教えてくれるのだ、と。

②ゲストトーク:佐東様(NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク代表

P1130216.JPGコンテンポラリーダンスとは何かというお話が始まりました。コンテンポラリーダンスは、一番初めの、踊りとは何か、踊りとはどういうことかを、今生きている人が創っているダンス。新しいダンスをつくったら、100年後にはそれが「バレエ」のように在るかもしれないダンスです。オリジナルな踊りを創るための創造力、観る人に表し伝えるための表現力とコミュニケーション力こそ、ダンスがもつ力であり、生きていく生命力にもつながると佐東さんはおっしゃいます。
続いて、JCDN事業について、2000年開始の「踊りに行くぜ!」というアーティスト育成事業やコミュニティダンス事業などの説明のほか、今回は特に「習いに行くぜ!東北へ!!」という災害復興支援事業についてお話いただきました。
「習いに行くぜ!東北へ!!」は、その名の通り、アーティストが被災地の郷土芸能を習いに行くというものです。これは、本当の文化芸術による支援とは、「外から持っていくものではなく、その地にあるものを外に出していくものなのだ」との気づきから生まれたそうです。東北にある郷土芸能がその数の多さだけでなく、どれほどその地域に根付いているか。郷土芸能を引き継ぐことが、地域のコミュニティを継続するための大きな装置のような気がしたと、5歳くらいの小さな踊り手達を見て感じられたそうです。

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後半では、モデレーターである太下さんの進行により、企業や行政のサポートの話や今後の展開について、お二方に補足いただきました。

その中でも印象に残ったのは、アートNPOと企業の協働のありかたです。
上田さんは、釜ヶ崎で活動をしていると、10年先の日本を生きているような気がするとおっしゃいます。今の施策や制度がずれいていると実感すると。いろんな企業の人たちに町に来て出逢ってもらうことで、これから先の10年に対して企業ができることや、やっていくべきことが見つかるのではないかと語られました。
佐東さんは、「おもしろいからやってみたら?」とアートNPOの背中を押すのが企業メセナであり、それによって始まったプロジェクトは多いとおっしゃいます。しかし、活動資金は大事だけれどもそれ以上に、企業との人的なつながりを作り始めることを提案されました。アートNPOは先を走ることはできるが、それをより強固なものにすることを考えるためには、それぞれがもっている方法論を話し合うことが必要で、そしてそれができる段階に来ていると。

私は、弊会のアンケート調査では、これは資金支援が多かったことに対して「非資金援助」を使い始めたと記憶しているのですが、もはや「援助」という言葉で表しきれない新しい関係性を、アートNPOと企業とで構築し始めるのではないかと思いました。
メセナ活動を行う目的として社会課題の解決を挙げる企業は、193社と決して少なくありません。企業とアートNPOの協働による「新しい公共」が生まれる可能性は大きいのではないでしょうか。

 

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