企業メセナ協議会設立から25年、2014年から2015年を「Corporate MECENAT Year of Japan」とし、今年(10/23)と来年(3/8)に開催する国際会議「文化は資本だ-創造経済とは何か」の導入プログラムとして、地域文化や伝統文化などに関わる多彩な企業メセナをご紹介する「メセナフォーラム」を連続で開催しています。
第3回メセナフォーラムは、熊本・鹿児島へのフィールド視察とし、地元の企業や団体が地域固有の文化を支える拠点を参加者11名で訪れました。

◆視察1日目:8月28日(木)【熊本】

お昼に熊本市に到着し、いよいよ視察スタートです。

最初にうかがったのは、熊本市現代美術館です。

熊本市現代美術館

まず、熊本市美術文化振興財団の岩﨑様から、市の美術館として掲げていらっしゃるビジョンや活動内容についてうかがいました。「アートの力を見せる」「アートへの愛情を育てる、根づく土壌をつくる」「アートが人をつなぐ、アートで都市をデザインする」を理念とする市民のための美術館として、展覧会のみならずコミュニティ活動を含むさまざまな事業を展開されているそうです。

館内は主任学芸員の坂本様にご案内いただきました。ジェームズ・タレルやマリーナ・アブラモヴィッチなどの作品に囲まれてくつろげる図書館「ホームギャラリー」や、親子で利用できる「街なか子育てひろば」、さらに9/15まで展示中の企画展「水戸岡鋭治からのプレゼント まちと人を幸福にするデザイン展」などを拝見しました。

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「水戸岡鋭治からのプレゼント」展

館内は撮影禁止だったのですが、企画展は撮影OK。美術館の中に機関車が!子どもも沢山いて、厳正された静かな美術館のイメージとは全く違いました。

「市民のためにある美術館」という岩﨑様のお話のとおり、美術館のなかで子どもから大人まで思い思いに過ごされていた様子が印象的でした。今回は時間が限られていて断念しましたが、次回訪れた際には必ず「ホームギャラリー」のジェームズ・タレルの下に寝そべりたいと思う事務局スタッフでした。

お菓子の香梅「古今伝授の間」

続いて向かったのは、「古今伝授の間」。東海道五十三次を模した桃山式庭園として名高い「水前寺成趣園」を最も美しく眺めることのできる場所に位置しています。慶長5年(1600)に、細川家初代・幽斎公(細川藤孝公)が八条宮智仁親王へ、当時の日本の学問の最高峰である「古今和歌集」の解釈の奥義を伝授されたことから、「古今伝授の間」と呼ばれることになったそうです。
水前寺成趣園に到着すると、お菓子の香梅の代表取締役会長・副島様を始め、山本様、笹原様がお迎えくださり、古今伝授の間へとご案内いただきました。
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昨年のメセナアワードに応募頂き、This is MECENATにも認定され、協議会関係者の中でも「行ってみたい」という声が多かった古今伝授の間。

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「極限に美しい被写体は、カメラマンの技術レベルを超越して、誰が撮っても美しく写る」by事務局スタッフ

名園を眺め、お茶とお菓子をいただくという、贅沢なひととき。
「極上のくつろぎ」を企業理念とするお菓子の香梅さんだからこそ、この空間と時間を大切に守っていらっしゃることが全身で感じられました。

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右側にいらっしゃるのは、古今伝授之間の運営を担当されている山本様。古今伝授にまつわる歴史的なお話、熊本に古今伝授の間が移った経緯などを丁寧にご説明下さいました。

水前寺成趣園も皆で視察。遠くからも近くからも美しい庭園でした。
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外から見た古今伝授の間。こんもりとした茅葺屋根が可愛らしいです。

ピーエスオランジュリ、ピュアリィ、器季家

1日目最後の視察先は、唐人町の通りに位置する3軒、ピーエスオランジュリ、ピュアリィ、器季節家です。
ピーエスオランジュリは、旧第一銀行の洋館を活用して、空調機や加湿器の開発・製造を手掛けるピーエス株式会社が製品のディスプレイを行っています。

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地元の方がミーティングで利用されることもあるそうです。

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手前にある「柵」で水によって温度、湿度を調整している仕組みです。触ると水滴があって冷たい。

吹き抜けで解放感も音響効果もあるつくりに加え、気温・湿度ともに最適な環境。心地よいとはこういうことか、と納得の空間。コンサートやギャラリーを開催する場としてぴったりだね、と参加者の皆さんも口々におっしゃっていました。

ピュアリィは、築130年以上の古民家をリノベーションし、地場企業かねくら株式会社が店舗活用。自然素材の食や天然コスメなどが販売されています。昔の船着き場を活用した地下のレストランでは坪井川を目の前に食事ができる素敵な空間になっています。

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昔ながらの内装と、外の風景のマッチングがまた絶妙です。

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地階へ降りていくと現れるレストラン「福のや」。元は川に面した船着き場なので、表の通りからは見えず、文字通り隠れ家のよう。壁の石垣も当時のものだそうです。

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川を眺めながらお食事ができます。

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中は非常にアットホームな雰囲気に包まれていて、古さとモダンさがうまく融合している空間です。

西館の2階は、かねくら社が運営する多目的スペース「Purely West Gallery」。展示やライブ、舞台の場として活用されているそうです。
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器季家は、100年近く前に建てられた卸問屋の倉庫を活用したカフェ。レンガ壁が印象的で、熊本市の景観重要建造物に指定されているものの、40年以上もシャッターが閉じていたそうです。この歴史的な建物を再生させたいと、オーナーが2011年にカフェをオープン。熊本名物の馬肉や粉子を使ったメニューのほか、熊本の作家による陶芸品や肥後の和てぬぐいなどが展示販売されていたり、地元の方による書道教室やお花の展示会なども開催されているそうです。
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40年間もシャッターが閉じたままだったこの建物を、なんとかまた開けて、風を!人の気を!ここの中に通したい!という気持ちでゼロからカフェをオープンされたオーナーが熱く語って下さいました。

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可愛らしい小物が点在している店内です。

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カフェの横では現地の小物や食品も販売。

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カフェの裏には卸問屋からの建築がそのまま残されています。ここに建っているだけでも、当時の風情を感じられるほど。奥に見えるのがカフェ。

◆視察2日目:8月29日(金)【熊本・鹿児島】

熊本県庁:熊本県副知事・小野泰輔氏訪問

2日目のスタートは熊本県庁から。地域における文化振興に尽力される副知事の小野泰輔氏のもとを訪れ、熊本県ならではの取り組みをうかがいました。
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熊本の文化・風土・をいかに守り、活かし、発展させていくか、事例とともにじっくりお話しいただきました。例えば、「くまもと子ども芸術祭」。伝統芸能を次世代に継承するために始まり、出演者は全員子ども。民間ベースでの支援も増えているそうです。また、地域経済の活性化においても大事な要素である「手仕事」に着目した「くまもと手しごと研究所」は、地元の方が手がける食や行事、風習などを「手しごとキュレーター」が紹介しているそうです。

さらに、自然豊かで資源に溢れた地(熊本の水は全て湧水!)を生かした産業などもご紹介いただきました。「地方から日本を復活させたい」という小野副知事の言葉に、参加者の方々も共感され、中央と地方の連携や協働の可能性など、副知事との議論は尽きませんでした。

河原町

小野副知事との会談から興奮冷めやらぬまま、次なる視察先として向かったのは河原町。シャッター街となった河原町繊維問屋街を、クリエーター・アートの町として再生させ、活性させようと立ち上げられた河原町文化開発研究所の代表・黒田様にご案内いただきました。

実は、黒田様には視察の準備段階からご協力いただいておりました。視察先をご紹介いただくほか、当日のアテンド、そして小野副知事との面会まで…。黒田様のご協力なくしては、今回の視察は実現できませんでした。黒田様、本当にありがとうございました!

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この奥をさらに行くと右へ左へと、迷路みたいになっていました。

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残念ながら熊本を発つ時間が迫り、慌ただしい視察ではありましたが、古い建物の合間にギャラリーやカフェがあり、時間の流れが絶妙に入り混じるクリエイティブな空間に、ただただ感嘆するのみでした。
河原町では、若手アーティスト育成のため毎月第2日曜日に「河原町アートの日」が開催されています。今回は拝見できなかったので、次は第2日曜日をめざして訪れようと誓う事務局スタッフでした。

指宿白水館・薩摩伝承館

熊本から新幹線と電車を乗り継ぎ、窓から海を眺めながら、指宿白水館へ。白水館にある「薩摩伝承館」では、白水館の創業者・下竹原弘志氏と子息の和尚氏が60年にわたって収集した約3,000点のコレクションが公開されています。

薩摩伝承館ができるまでのストーリーやこれからの展望など、白水館の代表取締役社長・下竹原様より直接お話をうかがうことができました。館内のコレクションはボランティアガイドの方が1つ1つの背景をご説明くださり、薩摩の歴史・文化を深く知る機会となりました。

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中心でお話されているのが指宿白水館の下竹原社長です。直々にご説明をいただきました!

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薩摩伝承館は、実は博物館ではなく多目的ホールとして認定されています。この広場では歴史的鑑賞物に囲まれながら結婚式もできます。

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視察も半ばを過ぎたこの日の夜。お食事の場では、参加者の皆様から視察に関する感想やご意見をいただきました。始終ばたばたしていた事務局スタッフもゆっくりとお話をさせていただき、今後に向けて温かいアドバイスをたくさん頂戴しました。3日間ご一緒させていただくなかで、参加者の方々とこうした時間を過ごすことができるのも視察の魅力の一つだなとあらためて思い、より多くの方に参加いただけるような企画を考えていきたいと、気を引き締めた時間となりました。

◆視察3日目:8月30日(土)【鹿児島】

いよいよ最終日。指宿を出発し、鹿児島市内へ向かいます。

マルヤガーデンズ

呉服屋の丸屋が昭和36年に開業した「丸屋デパート」は、三越との資本提携から鹿児島店の撤退を経て、平成22年に株式会社丸屋本社が建物を全面的に改修、「マルヤガーデンズ」として再生されました。館内には「ガーデン」と呼ばれる複数のギャラリーがあり、ショッピングとともに展覧会やワークショップ、映画を楽しむことができます。「Unitement(ユナイトメント)」をコンセプトとし、さまざまな人、モノ、コトが自然と集まる「買い物集会所」として展開されています。今回の視察では、株式会社丸屋の代表取締役社長・玉川様より各階をご案内いただきました。

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画面右にいらっしゃるのが玉川社長です。

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チャペル。シャンデリアが下がっている吹き抜けは元の丸屋時代からそのまま残して活用したそうです。商業施設の上にチャペルがあることはあまり知られていないそうです。

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最上階にはそのままの自然を尊重したお庭が。

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お庭の植物や生き物を紹介する庭師さんの手書きマップ。温かみがあります。

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こんなスペースもあるのです。出演者の方はリハのあとによくお買い物をされているそうです。

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アートスペース。最近まで写真展が開催されていたそうです。

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エレベーター付近にある、「階」の案内。全て手書きで、1つ1つ違ったデザインが素敵でした。

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何気ない通路に突然、ソファと薪の山。

屋上の庭園、チャペル、アートスペース、映画館、ギャラリー、そして店内の品々…。事務局スタッフを含む女性陣はそわそわ。「わざわざ東京から来てお買い物をされる方もいらっしゃるんですよ」と、玉川社長。納得です。
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薩摩焼を扱っているお店で、店員さんが熱心にご説明して下さいました。このように、鹿児島ならではのお店が多いことも魅力的です。

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薩摩焼と言えば豪華な絵付けで有名ですが、若い人にはシンプルなものも人気が高いそうです。ちなみに、画面左のリンゴ。砂糖入れです。薩摩焼でこの色のものは非常に珍しい、とのこと。

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皆様の会話が聞こえてくるようなショットです。

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さくさく進む男性陣はなかなか写真が撮れず…珍しい1枚です。

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丸屋本社の社員さんが選ぶ、セレクトショップ。

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マルヤガーデンズ発祥の地!

尚古集成館

視察の最後に訪れたのは、「尚古集成館」。現存する日本最古の機械工場ですが、島津家の歴史や文化を語り継ぐ博物館として、大正12年に島津家の直営経営により開館。昭和31年からは株式会社島津興業が運営しています。

館内は撮影ができなかったため残念ながら写真はありませんが、尚古集成館の方にご説明いただきながら、映像で見る島津家の歴史や近代化事業を紹介する展示など、拝見しました。

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メセナフォーラム第3回熊本・鹿児島視察は、2泊3日で合計9か所の拠点を訪れました。各地の文化を目にしながら、お迎えくださった皆様がいかに地域文化を大切にしてこられ、さらに今後へつなげようとされているか、濃密なお話をうかがうことができました。視察にご協力くださった熊本と鹿児島の皆様、視察にご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました!

足を運ばなければ見られなかったこと、お話を聞かなければ気づかなかったこと、自分の目で見なければわからなかったことを1つ1つ蓄積していく機会として、今後も企業メセナ協議会では視察を企画していきたいと考えています。

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(執筆:松木まどか)

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