企業メセナ協議会設立から25年、2014年から2015年を「Corporate MECENAT Year of Japan」とし、今年(10/23)と来年(3/8)に開催する国際会議「文化は資本だ-創造経済とは何か」の導入プログラムとして、多彩な日本の企業メセナを連続でご紹介する「メセナフォーラム」。去る9/11(木)、「文化資本と経営」のテーマのもと、第4回目のフォーラムが開催されました。
(前回までの様子はこちら!→ 第一回第三回 ※第二回は台風のため中止。)

 第4回メセナフォーラムは資生堂さま・竹中工務店さまの2社がゲスト。後半のトークセッションではモデレーターとして若手社会学者の古市憲寿氏をお迎えし、2社における企業と文化活動の関係についてトークが行われました。

会場は銀座に昨年オープンしたばかりの美しい資生堂花椿ホール。場内満席の中、それぞれの企業の長い歴史、お二人のご経験に根ざしたお話を伺うことができました。
 

ゲストトーク①:資生堂

まず、株式会社資生堂 企業文化部の樋口様から、創業から今日に至るまでの資生堂の歴史、資生堂ギャラリーの歴史を通じて、資生堂にとって、文化はどう捉えられているか、文化や芸術がどのように社に息づいているのか、をお話いただきました。

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印象的だったのは、今から100年も前に、初代社長・福原信三氏が高品質な商品づくりとコーポレートアイデンティティの確立を目指し、「試験室(ラボラトリー)」と「意匠部(デザインセクション)」を作り、アート&サイエンスを両輪として経営の中に位置づけた、というお話。資生堂ギャラリーはもちろん、創業初期のソーダファウンテン、その後の資生堂パーラー、1920年代に始まる「美髪科」「子供服科」など、化粧品のみならず、食・美術・ファッション・ヘアスタイルまでトータルに美しい生活文化を提案する、という考え方が根幹にあること、そのための拠点を銀座につくり、銀座から発信するとともに、企業文化誌『花椿』を通して、文化的な情報を全国に届けてきた歴史をお話くださいました。

パーラーや美容室も経営し、トータルに美を提供していくにあたっては、新しい価値を見つけていかなければならないという考え方が資生堂の根底にあること。樋口様が長く携わられてきた資生堂ギャラリーにおいても、オープン当初から、すでに同時代に価値が定まった・名を遂げた方ではなく、中堅・若手と呼ばれる方でも将来的に伸びていくだろうと期待できる作家をいち早く応援していきたい、というスタンスがあったこと。資生堂にとって、アート & サイエンスを両輪に、文化は経営上なくてはならないものとして存在してきた、とのことでした。

そのほかにも、花椿マーク、唐草模様、資生堂書体といった資生堂らしいパッケージデザイン、その唐草模様に込められた、(社名の由来でもある)『易経』の「万物資生」の意味、といったことまで、伝統あるデザインの由来にも心惹かれました。

 
ゲストトーク②:ギャラリーエークワッド

続いてのプレゼンターは、株式会社竹中工務店、本社ビル1Fにあるギャラリーエークワッド 主任キュレーターの岡部様。織田信長の宮大工から始まり、創業以来約400年の歴史を持つ竹中工務店らしく、「棟梁精神」「匠の文化」というキーワードが印象的でした。

140911_04.JPG文化事業としては、竹中育英会、竹中大工道具館、ギャラリーエークワッドの3つが代表的ですが、そのほかにも、もともと社員が自発的にさまざまな活動を立ち上げてきた社風があるとのこと。例えば、大阪設計部にネパールから留学生が来たことをきっかけにボランティアとしてはじまった、ネパールに学校を建てるプロジェクト。現地の石造りの建築方法を用い、生徒や先生の宿舎を作るなど細やかなオペレーションも提案、その美しさから、国際石材建築賞を受賞された例がご紹介されました。

「ギャラリーエークワッド」では、その名の通り「竹中」を表に出さず、ニュートラルに社会とつながれる活動を、との考えのもと、「建築」「現代アート」「異分野コラボレーション」「建築の目の提案」の4つを柱に、様々な切り口から「建築」につながる展覧会・ワークショップ等を実施されています。ギャラリー空間もアーティストとコラボレーションし、常に空間を見せるような展覧会を自負しています、とのこと。展覧会で取り上げた建築が重用文化財に指定されるなど、日本近代建築への再評価の流れや、世界の建築教育を紹介する試み、暮らしの豊かさを考えるトーベヤンソン展など、その活動はバラエティに富み、きめ細か。その根底には、住まいや街づくりも、子供の教育も、建築の側から社会を見ることで違った見方ができるという思いや、棟梁精神を持つ会社として、ものづくりや手仕事の楽しさを伝えたいとの思いがこめられていました。

特に印象的だった言葉として、「これまで日本全体が産業立国としてすぐれた技術を世界に発信してきたが、これからはそのものづくり、技術を支えてきた精神性はなんだったか、それこそが日本が誇れるものではなかったか、棟梁精神・匠の文化を発信することが大切ではないかと思う」との岡部様のお話がありました。

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トークセッション:

後半はいよいよ古市さんを交えてのトークセッションです。二社の歴史や、それぞれにご担当の長いお二人の経験・思いのこもったお話に、「企業」の文化活動として、「社会」に向けた活動として、さまざまな角度からの質問でさらに議論を深めてくださいました。

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まず古市さん、二社のプレゼンを聞いて、歴史の教科書を見ているようでびっくりしました、とのこと。

それぞれのゲストに対して、文化活動と社内・経営との距離感、文化活動によってどのようなフィードバックがあると考えているか、また、営利企業での活動として避けては通れない、一般的にもなかなか難しい「文化活動の評価」をどう行っているのか、活動において持っている基準は、・・・などの質問が投げかけられました。

資生堂では、企業資料館で収集している資生堂の生み出したさまざまな商品・デザイン・ポスターが、直接企業を理解してもらうためのツールとして役立っている面や、ギャラリーのような文化活動についても「資生堂に文化は不可欠」との歴代トップの理解のもと、第一義的には社会のための活動でありつつ、「この展覧会、アーティストがすごくよかった。これをプロデュースした資生堂もすごいね」と思ってもらえれば嬉しい、とのこと(最近では、若手アーティスト集団「目」による展覧会がかなり話題になったそうです!)。

竹中工務店では、もともと社屋が現在の東陽町に移転した際、浮いた費用の1%を社会に還元しよう、との考えからエークワッド事業が始まり、まず社会のため、建築文化の継承のため、必要だからやる、とのスタンスと、一流企業こそ一流のメゾンを持っているもの、という思想があるとのお話がありました。また今はギャラリーエークワッド・竹中大工道具館ともに公益財団法人化され、会社としても続けていける仕組みができた、とのこと。数値目標にしても、「来場者数は評価軸に入れない」という掟(!)を初期から貫き、活動を通して将来的に竹中の味方になってくれる人が増えればいい、ギャラリーを訪れた1人でも将来建築家になりたいと思ってくれれば、とのことでした。

また、はじめはメセナ活動になかなか理解を示してくれなかった社員の方も、活動を続けることで少しずつ反応が変わってきた、という二社の経験談をうけ、「それは社会の活動でも同じであり、美術館にしてもアートギャラリーにしても、継続することによって少しずつ社会・地域が変わっていくものですね」と古市氏。竹中工務店の本社エントランスに現代アートがおかれていることに、「日本の企業が変わった印象を受けますね・・・!」と驚かれていました。

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そのほかにも、お二人から、日本の美術教育の現状に対する危機感や、将来のアーティストを育てる目的だけでなく、文化業界を支えてくれる鑑賞者・支援者を育てる鑑賞教育の必要性、そのうえで、子供たちに美術や建築をもっと身近に感じてもらう活動の必要性を感じている、などの考えも示されました。

様々なトピックで議論は非常に盛り上がり、最後、古市さんの締めくくりとして、「日本企業は昔から社会性を内包してきたのだと思う」という言葉が非常に印象的でした。「日本の企業は、利潤の追求は当然大切だけど、一方で昔から、社会に対して何ができるかということをずっと昔から考えてきた。“社会的企業”と最近はやり言葉のようにいわれますが、実際のところ、“社会企業”は日本が昔からやってきた企業のスタイルのひとつなんじゃないかと、お二人のお話を聞いて改めて思わされました」としみじみと語られていました。

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フォーラム後は、ゲスト・会場のみなさんと、「せいのもとで lifescape」展を開催中の資生堂ギャラリーの見学、懇親会と、最後まで盛りだくさん。盛況のうちにフォーラムは無事終了しました。

樋口様、岡部様、古市様、ご参加いただいた皆様、そして会場からギャラリー見学までご協力をいただいた資生堂様、ありがとうございました。

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(執筆:末澤汐音)

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■資生堂ギャラリー「せいのもとで lifescape」展
2014/9/5(金)~10/12(日)
詳しくはこちら→ http://www.mecenat.or.jp/ja/events/post/shiseido_20140908/
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