企業メセナ協議会設立25周年記念として、「文化は資本」との考えに基づき、国内外よりアーティストや文化関係者、ビジネスリーダー、研究者や企業経営者など幅広いゲストを招き、東京と大阪にて国際会議を開催しました。            (以下敬称略)

東京セッション 
2014年10月23日(木)16:00~21:00/電通ホール  
 


クリエイターズ・セッション「コミュニティ、そして世界を開くアート」20141023_012.jpg20141023_016.jpg
左:橋本裕介
右:マリアナ・アルテアガ


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左:久保田 翠
右:マルコ・クスマウィジャヤ    


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左:野村 誠

パネル・ディスカッション「新たな経済と文化による社会創造」20141023_099.jpg20141023_093.jpg
左:イ・ビョン クォン
右:ウェンディ・オニール
 

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左:北川フラム                

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                                       Photo:中村貴史
 
 東京セッションは、クリエイターズ・セッション「コミュニティ、そして世界を開くアート」と、パネルディスカッション「新たな経済と文化による社会創造」の二部構成で行われた。

 前半は、アートを通したコミュニティとの関わりについて、パネリストがそれぞれの実践を紹介しながら、アルテアガ氏は市民自らが荒廃したまちでコミュニティを奪還する契機となると指摘、野村氏はプロジェクト参加者が自分事として関わることが重要であると述べた。福祉施設を営む久保田氏は、アートによるソーシャル・インクルージョンの観点から、障がいを越えて、さまざまな人が共に生きる社会を目指していると語った。また橋本氏は、フェスティバルを通じて実際の京都、新たな都市像を発見できると語り、クスマウィジャヤ氏は、農村でのアートプロジェクトで、村人が新たなスキルと視点をもたらした例を紹介した。
 野村氏は、効果が得られることを期待してアート活動を行うのではなく、創造のプロセスに生まれる豊かさに注目し、活動の結果として何が起こるかを見るべきだという。同様に久保田氏は、マニュアル通りの対応をしないことが障がいを持つ人の幸せにつながると語った。アートは既成の価値観や概念に揺さぶりをかけるものであり、異なる見方を示すことで可能性が生まれる、それを見守り続ける人や翻訳する人が必要との指摘もあった。
 後半は、文化と経済の関係を掘り下げるパネルディスカッション。オニール氏は、芸術文化による交流が相互理解と平和を深め、個人の生活やコミュニティに重要な役割を果たすと、ACC設立の趣旨を説明。クォン氏は、創造経済は韓国政府の重要な課題であるとし、クリエイティブなコンテンツを持続的に確保する源は芸術であり、そこから経済や社会的な活力を学ぼうと多くの企業が創造経済へのアプローチを模索していると語った。尾﨑氏は、今日の商品には機能価値とともに情緒価値が求められていると指摘、それに加えて社会課題にいかに企業が応えるか、その方向性を見出すことが創造経済につながると述べた。北川氏は越後妻有や瀬戸内での実践を踏まえ、美術は、自然あるいは文明、人間との関係を表す技術であると定義。一人ひとりの違いを肯定することが芸術の根底にある思想であり、価値だと語った。
 クォン氏は民間の文化交流の可能性とともに、創造経済においてはプラットフォームが重要であり、その前提として多様性や包容性に関するコンセンサスを得るための議論が必要だという。オニール氏はACCがプラットフォームであり、文化交流によって緊張を高める国々に貢献したいと語った。尾﨑氏は、文化は国を超えたポジティブな交流を可能にするとして、協議会としても各国とのネットワークを深め、情報収集と発信の環境整備を進めたいと述べた。企業がメセナ活動で先行投資を行い、よい循環で経済活動が活性化していく、そのような議論を進める必要があると主張した。

議事録はこちら:クリエイターズ・セッション1023.pdf パネルディスカッション1023.pdf


大阪会議   
2015年3月7日(土)13:00~19:30/クリエイティブセンター大阪
2015年3月8日(日)11:00~19:30/大阪ビジネスパーク 松下IMPホール    

■3月7日
セッション1「世界の企業メセナの現状」

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左:加藤種男、イザン・サトリナ・モハメド・サレフディン、ロール・ショデ
右:ロスリ・アブドゥル・ラヒムほか登壇者


セッション2「アートの価値、文化の価値」
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「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ」ツアーの様子

セッション3「創造経済」
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左:河島伸子
右:加藤種男、ジェイソン・ポッツ、河島伸子


■3月8日
特別講演1,2

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左:蔡國強
右:大林剛郎
   

プレゼン・カフェ:ディスカッション
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左:ロスリ・アブドゥル・ラヒム、イザン・サトリナ・モハメド・サレフディン
右中央:キャロライナ・ロア


パネルディスカッション      
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左:ジェイソン・ポッツ、ロール・ショデ
右:芝川能一、蔡國強


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左:吉本光宏、尾﨑元規
右:交流会の様子
                                                     Photo: Shinya Nagatomi

 大阪での国際会議、初日のセッション1ではまず日本のメセナの現況について紹介した。続いて、フランスではメセナが社会的領域にシフトし、近年は個人や起業家によるフィランソロピーが増加しているとの報告があった。マレーシアでは文化振興に政府が大きな役割を担っており、税制整備や同時代のアートに対する支援促進が課題と挙げられたが、あわせてペトロナス社による充実したメセナ事例が紹介された。ディスカッションでは「KMK ASEAN」への期待が示されたほか、企業の常なる改革のためにも、新たな表現活動への支援に取り組むべきとの提案があった。
 同日のセッション2では「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ」ツアーを実施。会場である「クリエイティブセンター大阪」をはじめ、大型美術作品を収蔵しながら展示する「MASK(メガ・アート・ストレージ北加賀屋)」や、空き地を活用した都市型農園「北加賀屋みんなのうえん」など、アーティストやクリエイターらが創造拠点として活用することでエリア一帯を創造活動の集積地に変えるという取り組みを視察した。
 続くセッション3は「創造経済」をテーマとして議論を展開。ポッツ氏は、創造経済の対象は「消費」ではなく「変化」であると指摘し、新たなものを生み出し、その適応のプロセスにおいて生活や思考に変化を与えるという点で、文化への投資は企業の研究・開発と同様であると主張した。芸術・文化への投資が創造経済の鍵とし、未来志向でイノベーションに優れる企業への期待を寄せた。河島氏は、文化と経済の関係について欧米を中心に展開されてきた議論を踏まえ、日本の社会課題の解決に文化が役割を果たし得ると指摘した。経済成長の源泉として文化を捉えるべきとし、「環境」と同様、「文化」が社会の基盤であり、さまざまな分野をインターリンクする存在になるべきと提唱して、常に新たな投資が必要であると述べた。
 翌日午前は、企業メセナ担当者と文化関係者および海外ゲストによるセッションαで、文化振興プラットフォームの形成に向けたネットワーキングの可能性を議論した。午後の本会議は蔡氏と大林氏による特別講演から始まり、それぞれに活動紹介を交えながら、社会に対してアートが与えるインパクトや、経済と文化、これからの文化振興に民間が果たすべき役割などについて考えを表した。続くプレゼン・カフェでは5名のプレゼンテーションに基づき、参加者とともにグループディスカッションで議論を深めた。
 最終のパネルディスカッションでは、文化と経済の関係にパラダイムシフトが起きているとの指摘から始まり、芸術・文化の経済的な価値にとどまらず、その創造性が社会の幅広い分野に変化を起こすことが創造経済の方向性であると示された。世界的な傾向としてフィランソロピーの重点が「支援」から「投資」へ移りつつあること、企業は文化に投資する意味を自ら開発し、投資に対する評価を明示化すべく「文化会計」を確立させるべきとの提唱があった。またデジタル化やネットワーク化が進み、新たなプラットフォームが形成される中で、プロジェクトを結びつけていく方策を探る必要があるとの指摘もあった。いまや芸術・文化への投資が創造経済を生み出し、社会創造に大きなインパクトを与えることを確認して、会議を終了した。

議事録はこちら:
3月7日:セッション1.世界の企業メセナの現状.pdf セッション3.創造経済.pdf
3月8日:開会挨拶.pdf 特別講演1.蔡國強.pdf 特別講演2. 大林剛郎.pdf 
パネルディスカッション大阪.pdf 閉会挨拶.pdf

 
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