『メセナnote』80号掲載(2014年3月発行)

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福原義春 (公社)企業メセナ協議会名誉会長

 1990年の企業メセナ協議会創設からまもなく四半世紀を迎えます。設立当時、ある新聞社の論説委員に「すべての社会運動は30年が命です」といわれましたが、この間、メセナは着々と歩みを進め、社会からの理解も深まってきました。幅広い領域で活動をするNPOなど非営利組織も文化とのかかわりを強く意識するようになり、企業が中心となって牽引するだけでなく、さまざまな主体や連携による多彩な活動が各地に広がっています。
 文化とは人間の営みであり、社会の根本となるものです。企業はメセナに取り組むことで、単なる利益団体ではなく、社会機関であることが明確になります。顧客やステークホルダー以外の人々に対する接点を持つことができ、大きな視野が開けてくるはずです。社員一人ひとりがよりよい社会を創造したいとの思いを実現することも可能です。そうして自らの感性を磨くことで創造力や革新性が育まれ、企業の文化資本として蓄積されていく、民間企業がメセナを推進する理想の一つがそこにあります。さらに協議会では、企業の力を集め、内外の機関との連携・協力をはかる文化振興プラットフォームを形成してきました。今やメセナ運動は国や自治体の文化政策にも影響を及ぼし、日本の芸術・文化振興を担う存在として大きな期待が寄せられています。
 日本が持つ力の中で最も大きなものが文化の力でしょう。これまでは、次の成熟期に向けた基礎固めをしてきました。社会も企業もドラスティックに変わっていく中で、新しいメセナの理想をつくり、皆で力をあわせて実現に向かっていただければ幸いです。

ふくはら・よしはる
1987年(株)資生堂代表取締役社長、97年会長、2001年より名誉会長。90年より(公社)企業メセナ協議会理事長、07年会長。東京都写真美術館館長など公職多数。近著『メセナの動き、メセナの心』『美「見えないものをみる」ということ』

 

 

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福地茂雄 (公社)企業メセナ協議会顧問

 7年間、協議会の理事長として多くのメセナ活動に接してきました。その中で、大企業だけでなく各地の中小企業も創意工夫に満ちた活動を積極的に行い、内容も多様性に富むものであることを実感してきました。メセナが始まった当初に考えられていたような、芸術文化を「見せる」「聞かせる」活動から、かかわる人が自ら「行う」ものへと変わっている。このエネルギーを大事にしていくことです。まちづくりや生活の中に息づく文化も、未来の社会を創造していく礎となります。
 東日本大震災に際してはGBFundを設立し、大きな反響を得ました。小さな傘でも土砂降りの時に差し出すのだと、迅速さを心がけました。企業や個人の方々からも繰り返しご寄付をいただいており、皆で応援する仕組みとして継続してほしいと願っています。
 メセナは企業のプロダクトブランドにはつながりませんが、活動を続けることで「この会社なら信頼できる」というコーポレートブランドを確実に向上させます。これから人々が求めるのは、目に見えない美徳や努力です。お金を払って得られるものではなく、いかに顧客を喜ばせ満足させようと努める「思い」があるか、それが感謝を超えて感動を生み、イノベーションにもつながっていきます。日本のものづくりやサービスが世界から称えられ、選ばれる真髄はそこにあります。人の感動に結びつく力、それを育むのが文化であり、日本人の感性が発揮されるところでしょう。
 同時に、他の文化を理解し尊重するバイカルチャーの心も大切です。メセナも世界に広がる中、新しいリーダーたちの目で幅広く文化を捉え、協議会を牽引していただければと思います。

ふくち・しげお
1957年アサヒビール(株)入社、代表取締役社長、代表取締役会長などを歴任。2004年(公社)企業メセナ協議会副会長、07年より理事長。08〜11年NHK会長。現在アサヒグループホールディングス(株)相談役、新国立劇場理事長、東京芸術劇場館長。


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