ブライアン・ジョンソン・ロウエ (創設者・ディレクター) Brian Johnson Lowe (Co-Founder/Director)
マイ・パフォーミング・アーツ・エージェンシー(以下マイパ)は2015年から始まったメセナ協議会の国際交流プロジェクト「アセアン諸国における企業メセナの促進とネットワーク構築に向けて」で協議会のローカル・パートナーとして共にこのプロジェクトに携わっている団体です。
My Performing Arts Agency (MyPAA) has been KMK’s local partner in our 3-year global exchange project ‘Research and Conference in Facilitating Corporate Support for the Arts Activities and Establishing a Network in ASEAN Countries’ since 2015, and working closely together to promote corporate culture of supporting arts in Malaysia.
 

マイ・パフォーミング・アーツ・エージェンシー

マレーシアで2012年に設立した民間組織。クリエイティブ分野における起業家精神を促し、芸術文化活動に従事する人々の能力向上と権限の強化、アートに触れる人々の拡大を目指す。文化団体のマネジメント、戦略的な交渉とアウトリーチの企画等を主な事業とする。また、アーティストと支援者、異国間の文化機関、文化団体と公的機関および民間セクターをつなぐ中間支援の役割も担っている。

My Performing Arts Agency
Privately owned Malaysian company set up to cultivate an ecosystem in which creative workers are able to do what they do best. With a focus on the arts, MyPAA’s roles include arts management for arts organizations, strategic arts engagement and outreach planning. MyPAA also facilitates connections between artists and funders, between cultural institutions of different countries, and between the arts and public and private sectors. 

 

 

――マイ・パフォーミング・アーツ・エージェンシー(以下マイパ)の近況を教えてください。以前、マイパが政府の一部署になりそうだとイザン(創設者・前ディレクター)から聞きましたが。
Q: So please tell me the current MyPAA? Before, I have heard from Izan (Co-founder/ previous Director) that MyPAA would be absorbed in a part of the government.

 

ブライアン:私たちは現在、移行・変化の時期を迎えています。イザンはマイパを退職し、6月から文化経済発展部署(Cultural Economy Development Unit)を率いるようになります。このユニットは政府機関のマイ・クリエイティブ・ベンチャーズの中にある部署で、首相直下の管轄です。
Brian: We are in a period of transition, Cultural Economy Development Unit will headed by Izan from June, which is under My Creative Ventures, directly under Prime Minister’s Office.
 
――まずマイパの設立経緯から教えてください。どのように資金を工面したのですか?当時の設立理念はなんだったのでしょうか?
Q:  So how did it start up the organization? Did you put your individual own assets? What was the philosophy of this organization that driven you forward?

 

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ブライアン:設立当時(2012年)、マレーシアにおける芸術はエコシステム※1の点からみても全然発展していませんでした。芸術を推進・支援する資金のあてもなく、収益化はない、観客もいない、サポートもない。税制優遇の制度についても、きちんと制定されていなかったし、問題はたくさんありました。だから多くの人々が不満を募らせていたのですが、誰も何もできませんでした。そしてそのほとんどはアーティストでした。イザンと私は、芸術と企業といったバックグラウンドを持っています。私たちは「良いと思わなければ変えよう」という理念をうちたて、マイパを設立しました。実際には対外的に出している理念ではありませんが、マイパ内部の哲学・理念として常に存在しています。
私たちの対外的な理念は「芸術を生活の一部とする・芸術によって新しい生き方を見出す」です。私たちが行っている事業は全て国家・政策・社会・環境・そしてビジネスといった広範囲にわたる分野から、この理念に基づいて展開されています。なぜなら、マレーシアにおける芸術の認識度は低く、重要視されていないからです。ですから、どんな事業でも国レベルで行います。
Brian: Arts in Malaysia is not well developed in terms of ecosystem. There is no funding, there is no cross- monetarization, there is no audience development, and there is no support. There is no tax issues, there are lots of problems. So lot of people are complaining. Nobody could do anything about it. And most of them are artists. Izan and I are coming from mixed background; arts and corporate. So when you wanted to make something change, you need sometimes to do things certainly, so our philosophy is that ‘if you don’t like it, then change it’. And we always are led by the philosophy. It is not written, but it is always there as internal philosophy. Our external philosophy is always to make arts a way of like. Everything we do is national, policy, social, environment and business field. Because there isn’t much arts appreciation here. So whatever we do, we address it in that level.
 
※1 エコシステム:マイパが定義する「芸術分野におけるエコシステム」とは、アートやクリエイティブにおける起業家のための環境づくりを支援。芸術にたずさわる様々な専門家やアーティストの育成。芸術に触れる機会の増加を指します。
Ecosystem: the ‘ecosystem’ which MyPAA defines, is that supports an environment for creative entrepreneurs, nurture a diverse and highly skilled arts workforce and increase the number of people experiencing arts.
 
この理念は設立当時と少し変わってきています。当時は解決策を他者に求めていましたが、今は自分たちで解決策を見つけています。例えば、企業メセナ協議会が良い例でしょうか。私たちは常日頃から、マレーシア政府に企業による芸術支援は不可欠であり、そのためにも税制優遇を充実させるべきだと訴えてきましたが誰もとりあってくれなかったのです。しかし、企業メセナ協議会とパートナーシップを組むことで、私たち自らで、解決策を探す手がかりを得ることができたのです。例えば、クアラルンプール会議(2016年8月24日 於:ル・メリディアンホテル クアラルンプール)に来てくださったマレーシア企業を集めてディスカッションする機会を設けたり、フォーラムを開いたりできるようになり、マレーシアにおける課題や解決策を話すことができるようになったのです。
Our philosophy was different from what we are now. We used to seek solutions from other people, now we make our own solutions. For instance, KMK is a good example. We always told the government that we need corporate support and we need tax incentives, but they don’t listen. So this partnership with KMK has allowed us to make other solutions like meeting other corporates, facilitating discussion, talk about problems and solutions.

 

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クアラルンプールにあるマイパのオフィス  MyPAA’s office in Kuala Lumpur 

――マイパの組織構成はどのようなものでしょうか?
Q: What is your organization’s structure?
 
ブライアン:私たちの組織はフラットです。厳しく定められたルールなどはありません。好きなところに座り、仕事をします。私たちは階級や階層などの区別を好みません。私たちの組織はコラボレーションによって成り立っています。例えば、私はディレクターという立場にいますが、私がやらなければいけない仕事は沢山あります。ただ単に椅子に座って他人に命令するのではありません。私も仕事をして他のスタッフに寄与しなくてはいけないのです。
Brian: We have something called ‘flat structure’, because we don’t have particular rules. We sit anywhere. We don’t like hierarchy. We prefer collaboration. So even if I am the director, I am responsible for certain things. I don’t like to order around people, I also have to deliver something to them as well. 
 

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左からブライアン(設立者・ディレクター)、モニク(インターン)、アルマーニ(プログラムコーディネーター)、アズィミ(ジェネラルマネージャー)、ヌルル(シニアエグゼクティブ)、オスカー(インターン)
From left to right:Brian (Co-Founder & Director), Monique ( Intern), Armani (Programme Coordinator), Azimy (General Manager), Nurul (Senior Executive), Oscar (Intern)
 
 
 
 
 
 
 
アズィミはジェネラル・マネージャーとしてオフィスを総括しています。アルマーニは広報・イベントを担当しウェブやSNS、またマイパが運営する芸術情報サイトアテリなども担当しています。ヌルルが総務と経理を担当し、エイミーはウェブ・エディターとしてマイパと一緒に働いています。それから、オランダからインターンが2人来ています。マイパはオランダの大学と提携しているので、彼らは6ヶ月ほどインターンとしてマイパで経験を積みます。代わるがわるインターンを入れています。なので4人のフルタイムスタッフと2~3人のインターンでマイパの事業を運営しています。
Azimy runs the office as General Manager, Armani is in charge of website Arteri (https://www.arteri.com.my/) and events. Nurul handles admin and finance. Amy is an Arteri editor. And we have two interns from Holland, which we have a partnership in university in Holland. They have 6 months here, so we have rotation of interns. So generally, we have 4 full-time staff and 2-3 interns. 
 
――では、事業に対する成果というものはどのように計っているのでしょうか?
Q: So how do you measure your achievements? What makes you think it is a success.
 
ブライアン:私達の目的は、エコシステムに変化をもたらすことです。ボラック・アーツ・シリーズを例にあげると、参加者数を重要視しているわけではありません。このボラック・アーツ・シリーズにはピッチセッションというものがあり、様々なフェスティバル・ディレクター、アーティスト、クリエイティブ産業の人々が参加するのですが、仮にそこで選出された10名のうち5名が日本やブリスベンなどで活躍する機会を与えられたとしたら、それらをインパクトとしてとらえています。イベントを通じて、彼らがそういった機会を得ることや、アクティビティへの直接的な変化がうまれるようなこと、つまり影響やインパクトが私たちの評価ポイントになります。
Brian: Our aim is to give influence in a change of ecosystem. For example, Borak Arts Series, it is not how many people came. We have a pitch session, with festival directors, artists and people in creative industry participating, and is out of 10 pitched, five of them are picked up to go to Japan or Brisbane, then an impact of them which we can measure in change in those organization that are direct results of our event.
 
――では、マイパが行っている事業について教えてください。自主イベントはどのように始めたのでしょうか?
Q: Ok, so please tell me about your own productions, how did they start?
 

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ブライアン:ボラック・アーツ・シリーズ(アートマネジメントやクリエイティブ産業の発展をも目的とし、マレーシア国内の各セクターが集まる会議)は、エコシステムのエンゲージメントに問題があるところから始まりました。マレーシアでは行政・民間・民衆・そして芸術団体のコミュニケーションがほぼありません。お互い話したくないのです。この状況を打破するには、まず会議を開き、皆を集めることが大切だと考えました。まず、人々が興味を引きそうなトピックをいくつか選び、2日間の会議を企画しました。パネル・ディスカッションでは行政から1名、アーティスト1名、企業人1名を選出し討論をしてもらいました。この会議は、うまくいきませんでしたが、私たちのしていることはいい方向に向かっていると確信しました。会議終了後、沢山の人がこの会議によって様々な職種の人に会え、話ができる機会になったと話してくれたからです。今までは、誰に話して良いかもわからない、といった状況でしたが、この会議を通じてあるコネクションができたというのです。

Brian: Borak Arts (https://www.youtube.com/watch?v=sIT2VRC7rTc ) came because of problem we found in ecosystem, which was engagement. There is no enough engagement between government, people, arts industry and corporates. They don’t want to talk to each other. So we decided best way to facilitate the situation to have conference. We forced them, and created two-day conference. We created various topic, put one government person, one artist and one corporate in the same panel. That was a disaster! But we knew it was working because we down the barrier as soon as conference was over, lot of people told that they have now access to the government, corporations. Before they didn’t know who to talk to.

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マイパのエコシステムチャート・ MyPAA’s ecosystem chart

 

なので、私たちの行っている事業すべてがあくまでもエコシステムの問題解決・エコシステムに必要なものという観点から始まります。私たちにとってこのエコシステムチャートは最重要書類です。このチャートから問題点・欠落点を探し、それを変えていく。私たちがこのシステムにどれだけ付加価値を与えることができるのかということを常に考えています。
So platforms are always came up from needs form ecosystem first. Ecosystem chart is our most important document. That is for how we define the problem area and fix it based on how we can add value to the problem.
 
――なるほど。では、ロイヤル・アーツ・ガラはどのように?
Q: I see. How about Royal Arts Gala?

 

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ブライアン:ロイヤル・アーツ・ガラ(芸術文化への支援ファンドレイズパーティー)はエコシステムのうち、経済的支援のポイントに問題を見つけたことから始まりました。芸術への資金支援がとても少ないマレーシアでは、行政の助成だけでなく、他にも資金支援の方法を考える必要があったので、このイベントをひとつの支援の形として提案しようと思いました。マレーシアのアーティストはまず行政からの助成を期待します。しかし、助成が行き届かないと、アーティストは文句をいいます。税制優遇制度もありますが、認知度も低く使われていません。ですから、イザンは、この税制優遇制度を何とかして活用してもらおうと考え動いてきたのです。ロイヤル・アーツ・ガラでは1ドル寄付をするごとに税制優遇(タックス・ブレイク)の対象になります。1ドルずつが政府機関に入り、私たちはそのお金に触ることはできません。ガラでテーブル席を買ってくれた企業には、選定委員会のメンバーとして寄付を、どの団体・プロジェクトに分けるか討論する特権が与えられます。最初の1年目は、3~4ヶ月程度で75万ドル(日本円で8000万程度)が集まりました。
Brian: Royal Arts Gala (https://www.youtube.com/watch?v=rlzinkJtTiM) came out of the problem of funding. We look at the chart and find the problem mean to at least provide alternative source of funding. Artists at least expect the government to fund them. And when they didn’t, they came and complain. But they didn’t have other alternative of funding. We have tax redemption system, but no body used it. That’s why Izan worked on for this way to access this, then we would be able to cooperate by setting up this Gala. Every dollar you contribute, you get tax break. Every dollar you contribute goes to the government pool, and we cannot touch it. Every corporate who bought a table of Gala, they sit in a committee that decide where the dollar goes to. First year, we collected 3 quarters of million in 3-4 months.
 
――マイパを経営していく中で、様々な事業を展開していく中で、最も大変だったこととは何でしょうか?
Q: What is your most difficult obstacles you have had to face by running the company?
 
ブライアン:マイパにとって何よりも困難であったことは、私たちの発信能力です。私たちマイパは、広報、取り組みなどの点においてはとても優れています。しかし、自分たち自身のことを発信することはうまくできていません、例えば、ウェブサイトにはインパクトや成果、アニュアル・レポート(事業報告書)などは載せることができていません。ですが、日頃から意識的に努力し、成果は内部で評価をしています。もともと外部に発信するために、事業に取り組み成果を評価しているわけではないのですが、変える必要はあると思っています。
Brian: Biggest problem of MyPAA is that we are very bad at telling people our impact, our achievements. We are very good with PR and engagement, but when it comes to things about us, as a company, we are bad. In website, there is no impact, or annual report, or we don’t announce what we have done and are planning to do. As I mentioned, we always make conscious effort and measure things internally, we never made conscious effort to measure with intent to report. That needs to change.
 
――マレーシア社会・コミュニティでマイパはどのような位置づけをされているのでしょうか?
Q: How are you recognized and acknowledged in your society?
 
ブライアン:例えば、国内外においてマガジンやニュース、テレビなどにマイパが取り上げられることもあります。しかし、マレーシア社会において、となると話は別です。この点においては、変えていかなくてはいけないと思っていますし、そのためにはきちんと戦略をたてなくてはいけないのですが、今のところまだどのようにしたら良いのかわかりません。しかしながら、マレーシア社会においてきちんと地位を確立しなくては、私たちの存在意義がなくなってします。これから、文化経済発展ユニットが動き出し、今までマイパが行ってきたこと、提案、資金援助など全てを担うことになるわけです。また、政府機関であるがため、このような情報はすべて一般公開されます。その時、マイパに残るものはいったい何なのか? だからこそ、今きちんとした組織運営戦略が必要になります。
皆、マイパは政府機関だと思っています。または、政府関連組織、イベント・マネジメント会社、などと思っている人もいます。とても多くの思い違い・誤解があります。誰も、私たちが「エコシステム・プレーヤー(エコシステムの推進者)」だとは認識していません。
Brian: We have been recognized many ways both nationally and internationally, in magazines, news on TVs, publications in some countries, in our society itself, not so much. It is something that we need to change and it needs to be a plan for it which we don’t have. Otherwise, we will lose our relevance. Now we have all CEDU, which will do all things like advocacy, funding, everything MyPAA has done. But because it is the government and they will be funded by the government, so they have all strategies to publish all things. Then what does that leave to MyPAA? So we need to have strong strategy so that people will understand what is MyPAA. People think MyPAA is a government, government agency or events management company, so lots of real misconception. But nobody says you are ecosystem player.
 
――では、日本の企業メセナ協議会とパートナーを組んでいますが、これからの展開をどのように考えていますか?
Q: What is your expectation of partnership with KMK?
 
ブライアン:文化経済発展ユニットの計画では、今マイパが推進しているCorporate Founders (企業によるマレーシア芸術文化支援団体)を組織化する予定です。マイパは、日本の企業メセナ協議会とこのCorporate Foundersの中間に位置するのが一番良いと思います。もちろん、何かしら定期的にイベントやミーティングなどをする必要はあると思います。よく、「企業メセナ協議会の会議はまた開かれないのですか?」という質問をされます。
Brian: In CEDU plan, we already came that corporate founders are as an organization. So as usual, they don’t have people to run this thing, so MyPAA can be a bridge between corporate founder in Malaysia and KMK Japan. So we must have regular activities together. They are telling us ‘What is next?’
 
――確かにそうですね。Corporate Foundersも設立できそうです。これからの交流関係にも変化がでてきそうですね。お互いいい方向でパートナーシップを続けていければいいと思います。今日は本当にありがとうございました。
Q: That is true. With the shift happening in Malaysia, it seems that you would be finally setting up Corporate Founder organization. It will give a positive impact on our partnership as well. Hopefully we can move forward together. Thank you so much for today!
 
ブライアン:これからのパートナーシップを楽しみにしています。ありがとうございました。
Brian: We look forward to our future partnership. Thank you very much!

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インタビュー:2017年5月2日
Interview took place on 2 May 2017
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