【写真1 第12回 国際オーボエコンクール・東京 本選 於:紀尾井ホール】©K.Miura
ソニー音楽財団主催「第12回 国際オーボエコンクール・東京」が本年2018年9月29日~10月7日に開催された。1985年の創設以来3年毎に開催され、今や世界の若手オーボエ奏者の登竜門となっている。開催の1年以上前からの広報活動や、コンクール全日程の運営、入賞者たちの副賞コンサート等、長期に渡り事業が展開されている。今回も、東京・市ヶ谷駅に程近い、公益財団法人ソニー音楽財団をたずね、企画事業部の戸上眞一部長と、野口雅裕さんのお二人にお話をうかがった。
 
 
オーボエってどんな楽器?
1280px-Oboe_modern_要キャプション>By Hustvedt - Own work, CC BY-SA 3.0, httpscommons.wikimedia.orgwindex.phpcurid=3547115.jpg
フランス語で「高い音の木」という意味のオーボエ。2枚のリードを震わせて音を出す。演奏は、木管楽器の中でも難しく、音が出せるようになる迄にも時間がかかる。正確なピッチや強弱など、音のコントロールも難しい。音楽表現に使うには高度な技術が求められる。一方で、オーケストラの中で、高音部で美しい旋律を奏でられる楽器として、古今の作曲家が珠玉のメロディーを残している。
 
【写真2 オーボエ By Hustvedt - Own work, CC BY-SA 3.0, httpscommons.wikimedia.orgwindex.phpcurid=3547115

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ドヴォルザーク作曲「新世界より」の有名な旋律も、オーボエ族の楽器が奏でる。時に、オーケストラの色調・クオリティを左右するといえる。
 
【写真3 オーボエ キー部分 約3オクターブの音域が出せる】
 
 
 
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【写真4 コンサートの会場ロビーでは、世界のオーボエメーカーの楽器が展示された】©K.Miura
 
 
 
過去の入賞者たちは世界のオーケストラで活躍
オーボエに特化したコンクールは国際的にもたいへん珍しい。オーケストラのクオリティを決定づける楽器として、オーボエの重要性を唱えたソニー音楽財団初代理事長 故大賀典雄(元ソニー株式会社会長、1930-2011)氏の発案で始まったという。歴代の入賞者たちは、ヨーロッパを中心に主要都市のオーケストラのオーボエ首席奏者、音楽大学教授としてなど、多方面で活躍中である。オフィシャルガイドブック記載の、「過去の入賞者とその後の活躍」の一覧は壮観。
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【写真5 オフィシャルガイドブック B5版72ページ、コンクール来場者へ無料配布された】
 
 
 
世界中から169名のオーボエ腕自慢が応募
シュロキャン予選1.jpgのサムネイル画像今回は、すでにプロオーケストラに所属する者も含め、24の国と地域から169名が応募。オーディオ審査を経て、東京オペラシティ リサイタルホールでの第1次予選に臨んだのは、12の国と地域の46名。うち18名が第2次予選に進み、ソニー音楽財団委嘱の邦人作品を含む45分のリサイタル形式で演奏した。近年は、アジア勢の活躍も著しいという。
 
【写真6 予選:ロシアのアンドレイ・チョロキャンさん(第3位入賞)
 於:東京オペラシティリサイタルホール】©K.Miura
 
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【写真7 本選 弦楽合奏との共演
日本の浅原由香さん(最高位・第2位入賞) 於:紀尾井ホール】©K.Miura
 
 
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本選では、弦楽伴奏とオーケストラ伴奏での演奏という豪華なステージが用意され、予選を勝ち進んだファイナリスト6名が800席を擁するコンサートホール、紀尾井ホールで演奏した。最高位(第2位)に日本の浅原由香さん、第3位にアンドレイ・チョロキャン(ロシア)、アルマン・ジコルム(フランス)の両氏が選ばれた。
 
【写真8 渡邊一正指揮、東京フィルハーモニー交響楽団と共演する浅原由香さん(本選)、最高位入賞を果たし、本年4月10日に東京・春・音楽祭でのリサイタル開催が決定】©K.Miura
 
 
フレンドリーな雰囲気に包まれた「国際オーボエコンクール」
コンクール中は、宿泊、練習、本番など慣れない場所への移動が伴う。時差で体調が万全でない参加者もいる。こうした場合の対応にも、運営側のていねいなケアがあったと聞く。国際交流は、こうしたところでも始まっているのだろう。
 
また、今回の「第12回 国際オーボエコンクール・東京」は、雰囲気がたいへん和やかだったとか。筆者は、国内外のピアノコンクールを数多く見聞しているが、結構ピリピリした雰囲気が多い。大舞台ともなれば、張り詰めた緊張感は半端ではない。ところが「国際オーボエコンクール」では、オーボエ仲間として予選から参加者同士が、わきあいあいと交流を楽しんでいたそう。また、審査委員長のハンスイェルク・シェレンベルガー氏(オーボエ奏者、指揮者、元ベルリン・フィルハーモニー管管弦楽団ソロ・オーボエ奏者)を始め、7名の審査委員と直接話してフィードバックを受ける機会も設けられ、若手支援の体制が細やかであった。将来のオーケストラ首席奏者同士の交友はこうして始まるのであろう。

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【写真9 審査委員、参加者一同が集まったクロージングパーティ】
 
 
第12回 国際オーボエコンクール・東京 コンクール結果
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【写真10 表彰式】©K.Miura
第1位[大賀賞]             
該当者なし
第2位
浅原 由香 (Japan)
第3位
アンドレイ・チョロキャン (Russia)
アルマン・ジコルム (France)
入賞
ジョエル・ココ (Italy)
裵 紗蘭/ペ・サラン (South Korea)
ナタリア・アウリ (Venezuela)
聴衆賞
アルマン・ジコルム (France)
奨励賞
高橋 鐘汰 (Japan)
 
 
*取材を終えて*
音楽界への拡がり
前回2015年「第11回 国際オーボエコンクール」第1位[大賀賞]の荒木奏美さんは、現在、東京交響楽団首席オーボエ奏者である。東京交響楽団は、本年11月開催の第10回浜松国際ピアノコンクール本選で、ピアノ協奏曲のオーケストラ伴奏を務めた。国際的にも知名度の高い浜松国際ピアノコンクール本選会ともなれば、世界の俊英ピアニストが集う。そのピアノ協奏曲演奏で、オーボエの美しい音色がオーケストラの中で何度も浮かび上がり、ピアノとともに音楽をつくっていく。ピアノとオーボエという楽器の違いを超えて、「国際オーボエコンクール」と「浜松国際ピアノコンクール」の意外な接点を見た思いである。
1985年に、音楽を通じた国際交流と音楽文化の振興に寄与することを目的に始まった「国際オーボエコンクール」の存在感をあらためて感じた。
 
【ご担当者様ご紹介】

★IMG_2043.JPGのサムネイル画像ソニー音楽財団では、「子どもたちへの良質な音楽の提供」「誰もが気軽にクラシックを楽しめる環境づくり」「若いアーティストの育成・支援」を3本柱に活動しているそうだ。その活動も30年を超え、子ども時代に、財団主催のコンサートを聞いた方が、お子さんを連れてコンサートに来場されるフェーズに入ったとのこと。世代を超えた息の長い活動は宝である。

 【写真11 向かって左から、野口雅裕さん、戸上眞一さん】
 
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私自身、参加者100名規模のピアノコンクール主催経験があるので、「国際オーボエコンクール」運営のクオリティの高さには敬服した。オーボエの音色に注目して、オーケストラ曲を聞き直してみると、新たな発見が幾つもある。音楽鑑賞の楽しみがまた広がった。
 
 
 
 
【写真12 メセナライター:福田里香 Rika Fukuda 】
 
 
◎写真提供
   写真1、4~10:公益財団法人ソニー音楽財団
   写真11:公益社団法人企業メセナ協議会
   写真12:中村正樹
◎訪問日:2018年11月2日(金)
     [東京都千代田区六番町4-5 SME六番町ビル]
 
 
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