2018年の「銀クリ」は10月1日〜12月26日に開催。左上より時計回りに、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)第370回企画展「続々三澤遥」、資生堂ギャラリー「それを超えて美に参与するー福原信三の美学」(18年10月19日~12月26日)、クリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンで同時開催されたCREATION Project 2018クリエイターと福島の窯元がつくる「大堀相馬焼167のちいさな豆皿」(18年11月27日~12月22日)。
「メセナ美術部」は、企業・企業財団のギャラリー、美術館、博物館などに所属する担当者を中心としたオープンカフェ。現場視察や情報共有と関係者の横のつながりをつくる場として2013年に発足以来、年に1〜2回開催している。2018年12月13日(木)、第9回目となる「メセナ美術部」が開催され、銀座に隣接する4つのギャラリーを巡る〈「銀クリ」ツアー〉が行われた。
 
IMG_2181_2.JPG
ツアー前には、DNP銀座ビルの会議室をお借りして事前ガイダンスを設け、「銀クリ」や各ギャラリーの取り組みについて、今回のツアーの発起人である(株)リクルートホールディングスの小森福見氏をはじめ、それぞれの担当者より紹介があった。
 
 
 
「銀クリ」は、東日本大震災後の来館者の落ち込みをきっかけに、銀座に数多くある企業のギャラリー同士がつながることで、銀座エリアをもりあげようと、2012年にスタート。資生堂ギャラリー、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)、クリエイションギャラリーG8、ガーディアン・ガーデンと、隣接する4つのギャラリーをスタンプラリーで巡ることで、アートやデザインの情報を発信しながら「銀座のクリエイション」を周知してきた。以来、毎年3〜4ヶ月の期間を設けて開催し、各館の来館者を増やすとともに、ギャラリー同士の関係性を深めてきた。
スタンプの数により、各ギャラリーに縁のある人気アーティストが手がけた缶バッジやチケットケースなど、オリジナルグッズがプレゼントされる。2014年にはイラストレーター・安西水丸氏やグラフィックデザイナーの永井一正氏らの缶バッジが、2015年にはグラフィックデザイナー・色部義昭氏らの缶バッジや大日本タイポ組合によるGバッグなどが景品となった。
 
 〈「銀クリ」ツアー〉のスタートは、グラフィックアート・グラフィックデザインの魅力を発信する、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)。事前ガイダンスでは、DNP文化振興財団の田仲文氏から、1986年に開設したギャラリーについて紹介。日本を代表するグラフィックデザイナーの一人、故田中一光氏の提案によるギャラリー創設の経緯について触れるなど、グラフィックデザイナーと仕事を行うことが多い印刷会社として、グラフィック専門ギャラリーに特化する意義を語った。国内外の作家の厳選作品をコンパクトに収録した「ggg Booksシリーズ」はすでに120冊以上を刊行しており、ギャラリーの活動の軌跡としても、グラフィックデザインのアーカイブとしても貴重な資料となっている。
 
会場では、「第370回企画展 続々三澤遥」が開催されていた(2018年12月3日〜2019年1月26日)。日常で見慣れたはずのものの新たな可能性を探り、人々に新鮮な驚きを与え続ける三澤遥氏の柔軟な思考と発想力を伝える展覧会。
 
R0010717_2.JPG
11の実験的なプロジェクトを通して、三澤デザイン研究室の創作活動の一端を紹介。
 
R0010704_2.JPG
動的な機能を持つ紙を探求した「動紙」。紙が自ら動くようすに、ぞくぞくする。
 
R0010728_2.JPG
印刷・加工技術とファインペーパーをかけ合わせ、新たな可能性を探った「現象体」。
 
R0010727_2.JPG
鉛筆の削り屑のうつくしさに心動かされて誕生した「紙の花」。
 
続いて、現代美術をはじめ、新しいアートの潮流を紹介してきた資生堂ギャラリー。事前ガイダンスでは、資生堂企業文化部学芸員の井上香苗氏より、1919年のオープンから今年で100年を迎え、現存する日本最古のギャラリーの歴史が紹介された。戦後間もないころから2017年開催の第七次椿会による「椿会2017-初心―」展に至るまで継続して開催される「椿会展」は、第一線で活躍する作家たちを「椿会」メンバーとして迎え入れ、定期的に行っている展覧会だ。戦争を乗り越え、一時は閉鎖も余儀なくされたギャラリーが、やっとの思いでこれを開催していく様子からは、並ならぬ情熱が感じられた。
 
ギャラリーでは、「それを超えて美に参与するー福原信三の美学 Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE,THE EUGENE Studio」が開催(2018年10月19日〜12月26日)。近代の日本において写真芸術家として活躍した資生堂の初代社長・福原信三が、絵画や俳句などジャンルを超えて広く芸術に関心を持った様子や、それを資生堂の商品づくりにも取り入れ、日常に芸術を持ち込んだことが伝わってきた。
 
R0010735_2.JPG
同展第1弾では、企業家・写真家として社会創造的な活動にかかわった、福原信三の価値観を、平面作品やインスタレーション等を手掛ける日本のアートスタジオ、「THE EUGENE Studio」とコラボレーションしてスペースに提示した。写真は、福原が愛用したカメラと同型の「トロピカル・ソホ・レフレックス」。
 
R0010746_2.JPG
資生堂出雲町店(薬品部、飲料部)と竹川町店(化粧品部)。
 
R0010748_2.JPG
福原は、当時、新しい芸術だった写真の普及にも力を注いだ。
 
R0010736_2.JPG
R0010731_2.JPG
ツアー中には、コーヒーのサービスも。空間全体はイギリスの建築家集団ASSEMBLEが手がけた。
 
2019年1月16日~3月17日(日)まで、「アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio Ⅱ」が開催されている。
 
3箇所目は、リクルートの運営する2つのギャラリーの一つ、ガーディアン・ガーデンで開催していたCREATION Project 2018クリエイターと福島の窯元がつくる「大堀相馬焼167のちいさな豆皿」。本展は日本のものづくりや産業をデザインの力で発信するチャリティ企画展。毎年多くのクリエイターの協力のもと開催しており、今年の販売収益金はセーブ・ザ・チルドレンへ寄付される。同ギャラリーは1990年オープン以来、グラフィックと写真の分野で若手クリエイターを応援してきた。会場では、(株)リクルートホールディングス企画スタッフ・桑間千里氏より「1_WALL」展について紹介があった。新しい表現を追い求めるクリエイターに壁一面に作品を表現してほしい、という願いが込められた同名のコンペティションではグランプリに輝くと、1年後の個展開催の権利とその制作費が授与される。たくさんの若手がここで大きく活躍するきっかけを得ている。
 
R0010763_2.JPG
CREATION Project 2018クリエイターと福島の窯元がつくる「大堀相馬焼167のちいさな豆皿」(クリエイションギャラリーG8で同時開催)。福島県浪江町の伝統工芸品・大堀相馬焼は、東日本大震災の影響で窯元たちが拠点を移しながらも、陶器づくりを続けている。
 
R0010789_2.JPG
会場では、窯元の皿づくりのようすを写真でも紹介。
 
R0010758_2.JPG
167名のクリエイターのデザインによる個性豊かな豆皿が2つの会場で展示・販売された。
 
CREATION Project 2018クリエイターと福島の窯元がつくる「大堀相馬焼167のちいさな豆皿」、もう一つの会場はクリエイションギャラリーG8。会場では、(株)リクルートホールディングス 企画スタッフ・羽鳥有貴氏より、1985年のオープン以来、デザインを通じてさまざまな出会いをつくってきた同ギャラリーの紹介が行われた。
なかでも、創始者・故江副浩正氏が情報誌の表紙デザインを依頼したことをきっかけに、グラフィックデザイナー・故亀倉雄策氏にリクルートのシンボルマークを頼んだ経緯や、同氏がアートディレクションを手がけたデザイン誌『CREATION』など、日本のグラフィック史にも深くかかわる話題も興味深かった。
 
R0010793_2.JPG
ギャラリーに縁の深い、クリエイターたちによる豆皿。壁にはグラフィック作品も。
 
R0010778_2.JPG
CREATION Projectは1990年にはじまったチャリティープロジェクト。本展の豆皿による販売収益金は、未来を担う子どもたちの支援のため、セーブ・ザ・チルドレンに寄付される。
 
R0010786_2.JPG
R0010782_2.JPG
福島県浪江町立なみえ創成小・中学校でワークショップが行われ、子どもたちによる豆皿も会場に展示された。
 
R0010766_2.JPG
2018年の「銀クリ」スタンプラリーでは、三澤遥氏らの缶バッジや横尾忠則氏のチケットケースがプレゼントされた。
 
*取材を終えて*
徒歩数分という距離を活かし、4つのギャラリーが連携した「銀クリ」。現代はさまざまなものごとが細分化し、個人の趣味嗜好の広がりも少なくなったように感じています。そうした意味でも、スタンプラリーで4館を巡る活動は、新たなクリエイションの魅力に出会うきっかけとなると感じました。
 
 
◎訪問日:2018年12月13日(木)
◎訪問先:
 東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F/B1
 
 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
 
 東京都中央区銀座 7-3-5
 ヒューリック銀座 7 丁目ビル B1F
 
  東京都中央区銀座 8-4-17
 リクルート GINZA8 ビル 1F
 
 
 
 
ページのトップへ戻る