企業メセナ協議会の会員が集い・出会う場を生み、メセナ活動にかかわる情報交換・研鑽の場として開催する会員ネットワーク勉強会。第6回目の勉強会が、2019年2月26日(火)、エスパス ルイ・ヴィトン東京にて行われた。

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表参道の一角にある、ルイ・ヴィトン 表参道店。入り口に展示の案内が掲げられている。

 

海外メセナに学ぶ
主催の企業メセナ協議会からの挨拶があったのち、今回の視察先であるエスパス ルイ・ヴィトン東京のディレクターである西田直子さんと早田あゆみさんより、活動のご紹介が始まった。
フォンダシオン ルイ・ヴィトンについてのお話と、エスパス ルイ・ヴィトン東京の取り組み、そして現在エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催されている企画展のご案内であったが、海外とつながるメセナ活動であることも相まって、参加者も真剣に聞いており、暖かい雰囲気とともに日本のメセナ活動への意気込みや熱意を感じる会であった。

 

フォンダシオン ルイ・ヴィトンとは
フォンダシオン ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン財団)は、現代アートと、現代アーティストのインスピレーションの源となった20世紀の作品の保存・発信に特化した芸術機関。2014年10月、フランス・パリにオープンした美術館は、カナダ系アメリカ人の建築家フランク・ゲーリーが手がけたもので、既に21世紀を象徴する建築物として価値を認められており、芸術の発展に目を向けたフォンダシオンの独創的な取り組みを体現している。

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フォンダシオン ルイ・ヴィトン外観(北側ファサード) © Fondation Louis Vuitton / Louis-Marie Dauzat
ガラスの屋根が特徴的な、帆船を模したフォンダシオン ルイ・ヴィトンの建物。「私はパリのために、フランスの深遠な文化的使命感を象徴するような壮大な『船』を設計する夢を描いている」とゲーリーは語った。『船』は古くからパリの紋章に描かれているモチーフでもある。

開館以来、400万人を超える来館者をフランス、そして世界各地から迎えており、テーマに基づく所蔵品コレクションをはじめ、他の財団や美術館などとの連携を行っている。また、北京(2015年設立)、ヴェネツィア(2014年設立)、ミュンヘン(2013年設立)、東京(2011年設立)に設けられたアートスペース「エスパス ルイ・ヴィトン」にて開催される所蔵コレクションの展示を目的とした「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムのディレクションも行っており、まさに世界規模のメセナ活動として存在感を放っている。

作家活動が見渡せるように、一人の作家について複数点の収集を行っていたり、オーディトリアムではパフォーミングアーツの上演も行えるなど、その視点の広さと軸の強さには驚かされるばかりである。

 

エスパス ルイ・ヴィトン東京
このアートスペースは、著名な建築家・青木淳氏がデザインしたルイ・ヴィトン表参道ビルの7階に位置しており、訪れる人々にまるで空に浮かぶガラス張りの異空間のような印象を与える。このスペースで開催される展覧会は無料で公開され、企画にあわせてパフォーミングアーツの上演も行うことがあるという。まさにフォンダシオン ルイ・ヴィトンとのつながりを感じさせる特徴である。

エレベータを降り、白を基調とした廊下を抜けると、そこに悠然と現れる天上高8.5mの広がり。エスパスとはフランス語で「空間」の意味であり、まさにここは日本の首都東京の一等地、表参道において独特の雰囲気を醸し出している。空に浮かぶアートスペースであり、最大の特徴は全面ガラス張りの外に見える、東京という都市の姿であろう。

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日常空間から非日常空間に抜ける「境界線」。新しい出会いを予感させる

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展示の手前、廊下部分には、作家の説明やフォンダシオン ルイ・ヴィトンの説明など、必要な情報をパネルやスクリーンにて得ることができる。

 

「体感」に主眼を置いているこの場所に於いて、エスパス ルイ・ヴィトン東京では2015年より年間で2本の「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムによる展覧会を行っている。内容によってはブラックボックスにもなりうるこの空間は、企画の中身にあわせて変容するうえ、時間帯によっても違う顔を見せる、「生きた空間」なのである。

 

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Fondation Louis Vuitton Building in Paris by Frank Gehry
展示風景、エスパス ルイ・ヴィトン東京、2015年
© Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

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Pierre Huyghe - Creature
展示風景、エスパス ルイ・ヴィトン東京、 2016年
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo: Jérémie Souteyrat/Louis Vuitton
©ADAGP, Paris 2016

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Dan Flavin
展示風景、エスパス ルイ・ヴィトン東京、2017年
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo: Jérémie Souteyrat/Louis Vuitton
©ADAGP, Paris 2017

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Dan Flavin
展示風景、エスパス ルイ・ヴィトン東京、2017年
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo: Jérémie Souteyrat/Louis Vuitton
©ADAGP, Paris 2017

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Dan Flavin
展示風景、エスパス ルイ・ヴィトン東京、2017年
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo: Jérémie Souteyrat/Louis Vuitton
©ADAGP, Paris 2017

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Yang Fudong - The Coloured Sky: New Women II
展示風景、エスパス ルイ・ヴィトン東京、2017年
Courtesy of Fondation Louis Vuitton
© Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat

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Bertrand Lavier - Medley
展示風景、エスパス ルイ・ヴィトン東京、2018年
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton
Photo credits: Jérémie Souteyrat/Louis Vuitton
© ADAGP, Paris 2018.

過去の展示。これほどまでに場所自体の属性が変わって見える場所は、ほかではあまりないだろう。

 

企画展視察と新しい芸術体験
活動についてうかがったあと、参加者とともに今回の企画展であるヘスス・ラファエル・ソト「PENETRABLE BBL BLEU」展(2018年12月7日~2019年5月12日)の展示を拝見した。

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空と白と作品の青のコントラスト。不思議な空間の奥行を感じることができる。

東京のビル群と空、その中にぽっかりと浮かぶ芸術作品。このコントラストはほかでは見られないだろう。しかもこの作品は中に入ることでの体験を軸としており、都市東京―エスパス東京―作品という層の重なりの中での芸術体験は、それだけでとてつもない衝撃を与えてくれる。
参加者もそのおもしろさに心を震わせ、自身の身体で体験を得ていた。フランスで始まったこのメセナ活動の根幹の想いを知り、日本でのその活動の意義を聞き、芸術作品自体にも触れるという今回の勉強会の流れは、参加者に複数の視点を与えたように感じた。それは海外と日本の関係の中でのメセナ活動の意義への考え方であり、東京という場所への認識であり、日本でのメセナネットワークのあり方への視座であるように思えた。

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ご担当者の思い
終了後、ご担当をされた西田直子さんと早田あゆみさんにお話をうかがった。

「『敷居が高そうで入りづらい』と言われることもありますが…一度入ってみると、そうではないことに気づいていただけると思います。」とお二人の言葉。

こちらにいらっしゃる方は20代、30代の方が多く、美術学校などの課題で来る学生も多いという。無料であり、表参道という土地柄からか、外国人の方も多いとのこと。
ルイ・ヴィトンの店舗と同じ入り口であるため、店舗で働いている方も、展示やフォンダシオンについての基礎知識を勉強するのだという。
「お買い物をされるお客様がお待ちになる際にご案内したりもします。」と西田さん。
「ビジターズカードというものもあります。エスパス ルイ・ヴィトン東京内に置いてある端末に情報を入力していただくと、今後の展示などのご案内が受け取れるようになります。また、解説ツアーも行っています。」
小中学校の授業や美術系の大学の授業、学術関係の集まりだけでなく、一般の方でも人数が集まれば申し込めるという解説ツアー。会期期間の午前があいていれば、そこで無料で解説を受けながら作品を見ることができるという。

「この立地、この場所が一番の特徴です。日本や日本にお越しになる旅行者の皆様にはエスパスを通してフォンダシオン ルイ・ヴィトンを訪れていただくきっかけになれば嬉しいです。またフォンダシオンを訪れる各国の皆様にはエスパスにおける『壁を越えた』活動を通して、日本と更に日本おける現代美術シーンに興味をお持ちいただく一助となることを願っています。」

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左 西田直子さん   右 早田あゆみさん

 

*取材を終えて*
メセナ活動自体の知名度を上げるという趣旨のみならず、メセナ担当者同士のつながり、高め合いが目的であるこの勉強会。特に今回は海外と日本という視点でメセナ活動を眺めることができたため、日本におけるメセナ活動の現状がより見えたように思えた。
エスパス ルイ・ヴィトン東京は、筆者も入る前は少し緊張したが、中に入ってみるとその穏やかさと懐の広さに驚いた。海外との接点を強く感じることができるこの場所は、一種の旅の趣をも与えてくれるように思う。普段から芸術に触れている方にも、そうでない方にもぜひ訪れてほしい場所だ。一度行くと、そのあとは自然とまた足が向かう場所であることは間違いない。

◎訪問日:2019年2月26日(火)
◎訪問先:エスパス ルイ・ヴィトン東京 (表参道)

 
 
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