メセナアワード

メセナアワード2016贈呈式

2016年11月24日(木)、「メセナアワード2016」贈呈式・記念レセプションをスパイラルホール(東京・青山)にて開催しました。当日は、受賞者と受賞関係者、メセナご担当者、アーティスト、文化機関などのほか30名強のメディア関係者を含め、約260名の方々にご出席いただきました。
贈呈式では各受賞活動の紹介に続き、文化庁より「特別賞:文化庁長官賞」(1件)、企業メセナ協議会より「メセナ大賞」(1件)および「優秀賞」(5件)へ表彰状とトロフィーを贈呈。 受賞企業の代表者はそれぞれ受賞の喜びをスピーチされ、審査委員からは選考評が述べられました。贈呈式終了後には、同会場にて記念レセプションを実施しました。

メセナアワード2016贈呈式 受賞者スピーチ

日本毛織株式会社 取締役社長 富田一弥 様

メセナ大賞:工房からの風


「工房からの風」は2001年から開催し続け、本年で第14回を迎えた野外クラフト展です。新人工芸作家の発掘・育成の場として、作り手と使い手を結ぶ懸け橋となり、心豊かな生活文化や芸術を育みたいという思いで築き上げてきました。
当社は自然の恵みであるウール製品を供給することで、創業以来社会に貢献してきました。この精神は“人と地球に「やさしく、あったかい」企業グループ”という経営理念へ息づいて、人間家族や地域社会のお役に立ちたいと願っています。特に、「人とみらい開発事業」におけるまちづくり・暮らしづくりは、「工房からの風」の拠点である市川市や、創業の地である加古川市などの工場跡地の再開発をベースとしています。工場操業でお世話になった地元の皆さんとの縁を大切にしたい、ともに発展できるまちづくり、暮らしづくりを目指しています。
私どもの最初のメセナ活動は、1988年「朝日ニッケ英文エッセーコンテスト」に始まりました。これは、ウール・衣料製品の利益の一部を社会に還元するためのもので、スクール・ユニフォームの主力顧客である高校生を対象とし、多感な時期の感性溢れる若者の考えを英文エッセーにしたものを募集し、優秀者をオーストラリア研修に招待することで、若者たちの国際感覚養成の一助になる文化事業を目指したものです。2005年まで続け、「ニッケピュアハート エッセー大賞」、「ニッケピュアハート イラスト大賞」へと発展しました。
ニッケグループ発祥の地である加古川でも、工場跡地でショッピングセンターやスポーツ・介護施設などを運営しています。市民の皆さんの健康増進とスポーツ振興に寄与することを願い、第1回の開催から「加古川マラソン大会」への特別協賛を続けています。以上のように、弊社のメセナ活動は事業にとても近く、また長いものでもあります。文化や伝統を育む一方で、自らは未来を創造する企業へ進化したいと思っています。
ニッケグループはこの12月で、120周年を迎えます。今後も皆様とともに発展できる“みらい生活創造企業”を目指して、チャレンジを続けます。本日は本当にありがとうございました。

株式会社CBCテレビ 代表取締役社長 林 尚樹 様

優秀賞 縁の下発掘賞:CBCクラブ文化賞(くちなし章)

このたびは「CBCクラブ文化賞(くちなし章)」に「縁の下発掘賞」を賜りまして本当にありがとうございます。
「CBCクラブ」は、日本における最初の民間放送局である、私ども中部日本放送が発足した時からの理念「文化の発展と向上に寄与することが放送の使命である」に基づき、昭和32年に創設しました。クラブの先生方と私どもとで、二人三脚で賞を毎年選んできました。この活動に対して光を当ててくださった企業メセナ協議会の皆様、そして関係者の皆様、本当に御礼申し上げます。
「黙々一芸」。誰にも知られず、ただ、自分の仕事を一生懸命こつこつとこなしている方々を発掘してきた「くちなし章」ですが、今日は私どもがこの「くちなし章」をいただいたような、晴れがましいような、また気恥ずかしいような、嬉しいような色々な気持ちの中でここに立たせていただいています。よくぞ私たちの地道な活動を発掘していただきました、ありがとうございます。
私ども中部日本放送、CBCテレビは、今年開局60周年を迎えます。そして来年CBCクラブも60周年の節目を迎えます。節目の時期にこのような賞をいただいたことが、また次の活動の励みになってくると思っています。
私どもは放送を通じて、これからも地域文化の貢献のために、なお一層頑張ってまいります。本日はどうもありがとうございました。

昭和シェル石油株式会社 代表取締役副社長 岡田智典 様

優秀賞 若手貝画賞:シェル美術賞


このたびは「若手貝画賞」という素晴らしい賞を頂戴し、誠にありがとうございます。
「シェル美術賞」は、創設当時の私どもの経営幹部が社会貢献をするにあたり何ができるのかと考えた中で、「若手で才能がありながらもなかなか世に出ることが難しい、そうした作家のためにぜひ賞を設けたい」との思いに至り、今からちょうど60年前の1956年に創設した完全公募の美術賞です。その思想は今も「次世代を担う人材を育成するため」という社会貢献活動の基本思想として、私どもに脈々と引き継がれています。60年の節目の年にこのような素晴らしい賞をいただき、大変感激しております。
長い歴史の中で、色々なことがございました。創設から現在まで、時代の変化、ニーズに対応するために試行錯誤しながらも、一貫して若手作家の継続的な支援に取り組んできました。その結果、現在実施されている企業主催の美術賞の中では最も歴史が古い存在となりました。
美術界においても多くの方々に評価をいただき、若手作家の登竜門とも称され、毎年1,000点を超える応募をいただいて審査しております。過去の受賞作家からは「受賞によって新しく飛躍する勇気をもらった」「自分の絵の強い方向性を見定めることができた」という話や、「絵画を目指した人であるならば、一度はシェル美術賞に夢を託す」という言葉を耳にすることもあります。
長年望んでおりましたメセナアワードにて賞をいただくことになり、大変光栄に思うと同時に、「私たちのエネルギーで未来を元気にする」という当社の経営理念を実現するための活力をいただいたように感じています。今後も若手作家の育成と現代美術の発展に寄与するとともに、多くの方々に芸術を身近に感じていただく機会の創出に努めてまいりたいと思います。
最後になりますが、これまで「シェル美術賞」に参加していただきました多くの作家の方々、美術の素人である私たちにご指導をいただきました先生方、また開催にあたりご支援いただきました多くの方々に、この場を借りて改めて感謝申し上げたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

株式会社竹中工務店 取締役会長 竹中統一 様

優秀賞 建築文化接近賞:季刊誌[approach]の発行


このたびは、「建築文化接近賞」という大変栄誉ある賞をいただき誠にありがとうございます。季刊誌『approach』の52年間の活動に光を当てていただいたことを大変感謝しております。
『approach』は企業広報誌の先駆けとして、私の父・竹中錬一が発案し、瀬底恒女史を編集に迎え、アートディレクターの田中一光さん、画家の飯島一次さん、アメリカで活躍された写真家の石元泰博さん、また本年ご逝去された建築写真家の村井修さんなど錚々たる方々にご参画いただきました。
東京オリンピックが開催された1964年に第一号を発刊して以来、“不易流行”“高質なコンテンツとデザインの持続”という創刊時の精神を継承し、この冬号をもって216号を重ねます。その間一度も休刊することなく継続できたことは、これもひとえに私どもの建築主様、建築・文化関係の諸先生方、国内外の執筆していただいた先生方、そして国内外の読者の皆様のご理解とご協力の賜であると、この場をお借りして心より御礼申し上げます。
私どもには、「建築は人々の暮らしや歴史、文化、芸術などと切り離しては成り立たない」という信念があります。建築を通じて社会にアプローチした時、あるいは社会の眼を通じて建築にアプローチした時、これまでとは違う世界を垣間見ることができたり、新しい何かが生ずるのではないかという期待を込めて、半世紀にわたり社会に問いかけてきました。今回の受賞を励みに、これからも時代を超えた普遍的な価値を求めて、地域や社会の皆様との対話を重ねてまいりたいと思っております。
一昨年はギャラリーエークワッドに大賞を、2008年には神戸の竹中大工道具館を受賞させていただきましたが、ともども公益財団法人と手を取り合い、今後のメセナ活動の一層の発展に力を尽くしてまいります。今回の受賞について、皆様方のご指導ご支援に心から感謝申し上げ、挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。

東京ミッドタウンマネジメント株式会社 代表取締役社長 中村康浩 様

優秀賞 東京なかつまち技芸賞:Tokyo Midtown Award 2015


このたびはメセナアワードの優秀賞、大変名誉ある賞をいただき心から光栄に思っております。
「Tokyo Midtown Award」は東京ミッドタウンのまちづくりの中から生まれたアワードです。今年、東京ミッドタウンはオープン10年目を迎えています。もともと防衛庁の跡地の再開発でうまれたまちですが、遡ると長州の毛利、萩藩の下屋敷であり、400年近く一般の方が足を踏み入れることができなかった土地です。すなわち、東京ミッドタウンのオープンとともにこの街の歴史が始まったと言えます。
私どもは東京ミッドタウンを将来にわたって永続的に発展させるために、いくつかのコンセプトを設定しました。その一つが「Creativity」です。デザインとアートの街として、この街から新たな才能を発掘し、世界へと発信していきたい。この思いを実現する一つとして「Tokyo Midtown Award」を設けました。
「Tokyo Midtown Award」は、新たな才能を顕彰するだけではなく、デザイン部門では受賞作品を商品化して世に送り出すお手伝いをしています。またアート部門では、受賞者の皆さんに東京ミッドタウンで行うさまざまなイベントに参加していただいたり、東京ミッドタウンの開発主体である三井不動産の新たなプロジェクトの中でパブリックアートとして採用させていただくなど、受賞後も活動を応援しています。
デザイン部門で商品化した「歌舞伎フェイスパック」は、この6月に開催されたG7伊勢志摩サミットの公式のお土産に採用されました。アート部門で受賞された皆さんも、瀬戸内国際芸術祭など数々の芸術祭で活躍されています。
東京ミッドタウンの10年目という節目の年にメセナアワードをいただきましたことは、私たちスタッフにとりましても大変嬉しく励みになります。「東京なかつまち技芸賞」という名前をつけていただき、今後もこの名前に恥じないよう「Tokyo Midtown Award」を育ててまいりますので、これからもよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。

東燃ゼネラル石油株式会社 代表取締役社長 武藤 潤 様

優秀賞 子どもに夢を半世紀賞:東燃ゼネラル児童文化賞

「子どもに夢を半世紀賞」、まさに50年経ってこのような賞をいただけることは非常に光栄なことでございます。
私どもは石油会社です。社会にとって必要なエネルギー、産業にとって必要なエネルギー、人々にとって必要なエネルギーを、「エッソ」「モービル」「ゼネラル」といったブランドで供給しています。そして、私どもは「企業も社会の一構成員である」という考えに基づき、社会にとって必要なエネルギーと同様に、「人々にとって心温まるような、豊かになるようなエネルギーを」と社会貢献活動を展開しています。
この賞は今から50年前の1966年に、「モービル児童文化賞」として、「子どもたちに夢を」と始まりました。過去50年を振り返ると、そこには2度のオイルショックがあり、あるいは企業の統合・合併があり、この「東燃ゼネラル児童文化賞」にとって転機はいくつかありました。そのたびに私どもが考えていたのは、「経済活動と社会貢献活動、これは両立できる」。その確信、信念のもと、50年続けてきましたが、その結果が今回の‟半世紀賞”の受賞です。半世紀経ったということは、また次の半世紀が始まるということです。
私どもはこの受賞を励みに、「東燃ゼネラル児童文化賞」がさらに皆様から喜んでいただける賞になるように努力する所存です。本日は誠にありがとうございました。

日本トランスオーシャン航空株式会社 代表取締役社長 丸川 潔 様

特別賞 文化庁長官賞:JTA・RAC あおぞら図画コンクール


文化庁長官賞という、大変栄誉ある重みのある賞をいただき誠にありがとうございます。
私ども日本トランスオー シャン航空は、沖縄地区を中心に運航しているJALグル-プの航空会社で、来年7月には創業50周年を迎えます。このような節目の機会に、これまでの取り 組みをご評価いただきましたこと、そしてこのような栄誉ある賞をいただきましたこと、本当に感激しております。社員一同、ますます地域のために尽くしてい こうと決意を新たにしているところです。先ほど宮田長官にもご出身地になぞらえて「島つながり」と仰っていただきましたが、ご支援をいただいた皆様に改め て御礼を申し上げます。
「あおぞら図画コンクール」は、沖縄の離島に住む小学生の子どもたちに、普段住み暮らしている自分 の島の絵を描いていただいています。当たり前だと思っている風景が、実はこんなに素晴らしいんだ、こんなに美しいんだ、こんなに人の心に響くんだ、という ことを再認識してもらい、それを誇りに思い、胸に刻んで島を巣立っていただき、ゆくゆくは大人になり戻ってきて島の魅力や美しさを守り育てる人材になって ほしい、そんな思いで続けてきました。
今年で34回目となりますが、自治体や学校の関係者、ご家庭を含めて、地元の皆様にご支援い ただいたことが今日につながったものと思いますし、私どもが、というよりも地域の皆様とともに賞をいただいたという気持ちでおります。早速沖縄に立ち戻 り、地元の皆様と喜びを分かち合いたいと思います。
今年は400点を超える応募がありましたが、すべての作品を当社のウェブサイト で公開しています。実は海外の閲覧者が非常に多く、トップがドイツで、スイス、イギリス、スペインと続き、台湾、中国、韓国、その次が日本です。世界中の 大変多くの方々に関心を持っていただけるコンテンツに育ったように思います。また、今後登録承認が期待されている奄美・琉球世界自然遺産登録の推進活動 も、JALグループとしてしっかりと取り組んでまいります。今後ますます世界から注目されることになりますので、さらに島の魅力を強く発信し、熱く皆さん と共有していく環境づくりにお役に立てればと思っています。
改めまして、企業メセナ協議会の皆様、審査委員の皆様、ご関係者の皆様に心から御礼を申し上げまして私の挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

 

選考評

委員長 原島 博 氏

本日はおめでとうございます。いつも思うことですが、特に今年は、それぞれの企業のメセナ担当者の方の熱意、あるいは思いが伝わってくる年でした。私ども審査員もその思いに応えるべく、一生懸命審査させていただきました。それが、今回の選考結果になったわけです。本当にいい賞になりました。ありがとうございました。

はらしま・ひろし|東京大学名誉教授
2009年東京大学を定年退職。大学では工学部に属し、人のコミュニケーションを支援することに興味を持ち、その一つとして「顔学」の構築に尽力。科学技術と文化の融合にも関心がある。現在東京大学特任教授。

 

 

伊東信宏 氏

受賞された企業の皆さんおめでとうございます。私はこの賞に関わって2年半になり、贈呈式でご挨拶させていただくのは2回目でこれが最後になると思います。この間、色々学ばせていただきました。そのあたりのことは本日配布されたリーフレットの中に書きましたが、今これだけ多彩なメセナ活動が日本各地で行われていることが非常に励みになり、芸術がこれだけ社会から求められていることを励みに感じました。
普段、教えている大学生を見ていると、あんまり芸術なんて必要にしていなさそうに感じます。ポケモンGOとインターネットがあれば大体満足というような感じがちょっとする。それに対して、社会の側からは芸術に対する需要がある。学生が芸術なり音楽なりを好きなのは当たり前、と昔は思っていたので、「素晴らしいものではあるけれど、実は使いようによっては怖いもんだ」と話すようにして、大学の外では「芸術って素晴らしいもんですよ」と話していました。どちらも本当だと僕は思っていますが、最近はどうもそれだけではまずいかなと思うことが多くなり、学生には「芸術って素晴らしい」と話して、こういう場所にきた時には「芸術は怖い」ということを言っておいた方がいいのかもしれない、と思うことがあります。
私の専門は音楽ですが、音楽は喉を震わせて聴き手の鼓膜を震わせて、それによって人の心を動かす訳ですから、ものすごく濃密なコミュニケーションで、それだけに人の心は動かせるかもしれないけれど、使いようによってはどちらにでも持っていける「怖さ」を孕んでいる。音楽が怖いというのはそういうことなのですが、そういった側面も気に留めておいた方がいいかなというようなことを感じることが最近よくあります。
今回受賞された活動は、いずれもそういう芸術の深さや奥行きを踏まえた活動をされていて、そういうところも評価されて贈賞が決まったと考えています。これからもぜひこのような深く、奥行きのある活動を続けていっていただきたいと思います。

いとう・のぶひろ|音楽学者、大阪大学大学院文学研究科教授
リスト音楽院客員研究員などを経て現職。著書に『バルトーク』(中公新書、1997年)、『中東欧音楽の回路』(岩波書店、2009年)など。朝日新聞、NHK-FM、などに定期的に寄稿している。東欧演歌研究会主宰。

大竹文雄 氏

受賞された皆様、誠におめでとうございます。
企業が文化や芸術を支援するメセナはすばらしいことですが、それが企業価値を高めるという評価を社会で得られないと、継続性が担保されません。今年から審査を担当させていただいて、多くの企業が自らの強みを活かしながら文化・芸術の支援をし、それが長期的に企業の成長にもつながるように努力されていることを知りました。そうした活動を応援する「メセナアワード」は、すばらしい制度だと思います。惜しくも選にもれた活動の中には、過去に似た活動で受賞しているものを継続し発展させているものや、新たに始められた活動でこれから成長が楽しみなものがありました。今後の受賞が期待できる活動だと思います。

おおたけ・ふみお|大阪大学社会経済研究所教授
京都大学経済学部卒業。1985年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。博士(経済学)。大阪府立大講師等を経て2001年より現職。専門は労働経済学・行動経済学。08年 日本学士院賞受賞。

金沢百枝 氏

受賞された企業の皆様、おめでとうございます。
皆さん、どんな風に審査が行われたか不思議に思っておられるかと思います。年に3回、4回、結構長くて1回3時間くらい、1部屋に集まって皆で議論をするのです。原島先生も仰っていましたが、今回は特に悩みました。すごく悩みました。どの活動も素晴らしくて。地道でそして熱意を持っていて、地域の方々のためになるようにとの思いがどの活動からも伝わってきて、もう困ったねという感じで審査をしていました。
長い会議は大嫌いなのですが、この会議は長くても本当に楽しいものでした。なぜ楽しいのかというと、審査を通じて、日本の各地で皆様方が頑張っていらっしゃるんだなということが本当に伝わってきて、勇気を分けていただくような思いがするからです。普段は大学で教えていますが、社会で皆様が、どのような未来を創っていくのか、それぞれに考えていらっしゃることが、本当に力強く頼もしく思いました。皆様本当におめでとうございます。

かなざわ・ももえ|美術史家、東海大学文学部ヨーロッパ文明学科教授
美術史家。『工芸青花』編集委員。東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科、同大学大学院総合文化研究科にて博士号を取得。ロンドン大学付属コートールド美術研究所留学。専門は中世美術史。主著に『ロマネスク美術革命』。

中村陽一 氏

受賞企業の皆様おめでとうございます。今先生方からもお話がありましたが、今年も気づきと学びの多い審査の場でした。
大賞を受賞された「工房からの風」は、私は社会デザインという分野の専門ですが、その目から見ても大変センスの良い活動で、暮らしに結びついた生活文化・生活工芸の取り組みであること、半年かけて次世代の工芸作家の方たちを育てていくこと、自社資源を有効活用していることなど、企業メセナの活動の中でも非常に示唆に富んだ活動だと感じました。
優秀賞、文化庁長官賞を受賞されたそれぞれの活動については、本当に地道で息長く続けておられる活動であったり、大変クオリティの高い活動だと思いました。私の視点からの言い方になりますが、人と人であったり人と地域、人と組織、それらの関係性を編み直す。あるいはもう一度活かしていく、そういった側面に、今年も大変深い感銘を受けることができ、感謝申し上げます。こうした企業メセナの活動が、人々にとってとびきり居心地のいい居場所である「サードプレイス」の基盤を提供する活動になるのではないかと、今年は改めて思いを深くしました。
改めて、受賞企業、関係者の皆様にお祝いを申し上げます。おめでとうございました。

なかむら・よういち|社会デザイン研究、立教大学21世紀社会デザイン研究科教授
編集者、東京大学客員助教授、都留文科大学教授等を経て現職。社会デザイン学会副会長。NPO、ソーシャルビジネスや社会デザインの実践的研究と拡大に取り組む。編・共著『クリエイティブ・コミュニティ・デザイン』ほか多数。ニッポン放送「おしゃべりラボ~しあわせSocial Design」パーソナリティ。

松田法子 氏

ご受賞の皆様、このたびはおめでとうございました。今年受賞された活動では、「CBCクラブ文化賞」、「シェル美術賞」、竹中工務店の季刊誌『approach』、「東燃ゼネラル児童文化賞」の4件が実に半世紀を超える取り組みであり、また日本トランスオーシャン航空の「あおぞら図画コンクール」も35年に及ぶなど、長期間にわたって文化や芸術を支援する継続的な取り組みであったことが個人的にはとても印象深く感じられました。
ところで、この半世紀や数十年とは、日本の企業が戦後復興の時代を乗り越えて高度成長期に移行し、しかしながらその後バブルの崩壊や近年の金融危機などさまざまな歴史をくぐり抜けてきた年月でもあります。その中で、このようにして企業による文化・芸術支援が途絶えることなく、しかも今回受賞された「工房からの風」や「Tokyo Midtown Award」のように、歴史の上に立ちながらも、まさに新しい風を呼び込みながら展開してきたことに大変感銘を受けました。
今回受賞されなかったご活動の中にも、個人的にはとても意義深いと思われたものがあります。例えば、ポラス株式会社の「南越谷阿波踊り」は企業の熱意によって始められたお祭りですが、もはや地域祭礼として成熟しているなど、メセナ活動が明らかに地域社会の時の流れや人の動きに刺激と活気を与えていると感じられる事例もありました。応募活動の中には、数々のそうした種や芽があります。機会があれば私自身も、メセナ活動のような芸術・文化振興に一員としてぜひ加わってみたい、そう思わされる審査でしたし、そのような思いに駆られました。
今後もますます多くの活動が活発に行われ、また認知されていくことをお祈りしております。本日は誠におめでとうございます。

まつだ・のりこ|都市史・地域史研究、京都府立大学講師
1978年生まれ。博士(学術)。都市史・建築史。東京大学工学系研究科学術支援専門職員などを経て現職。日本観光研究学会賞ほか受賞。著書に『絵はがきの別府』等。国内外で幅広くフィールドワークを行う。

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