メセナアワード2016 大賞受賞

自然の恵み、人の手の技をいかす工芸で心豊かな生活文化を育みたい

富田一弥 日本毛織株式会社 取締役社長

―メセナ大賞ご受賞、誠におめでとうございます。暮らしを彩るものづくりを、御社の資源を活用しながら支援し、地域との結びつきを大切にしている点などが高く評価されました。

ありがとうございます。「工房からの風」を開催している「ニッケ鎮守の杜」は、千葉県市川市の羊毛紡績工場跡地を再開発した大型ショッピングセンター、ニッケコルトンプラザの一角にあります。工場操業時から半世紀以上におよぶ地元との関係を踏まえ、市の発展につながる事業施設であるとともにコミュニティーセンターとしてレジャー・スポーツ・憩いの場を提供し、地元との一体感を醸成することを目指して1988年に開設しました。そして、中山工場時代の神宮杜の森(現・ニッケ鎮守の杜)を中心とするコルトン広場をつくったのです。野外クラフト展「工房からの風」は2001年に始まり、本年で第14回を数えます。新人工芸作家の発掘・育成の場であり、心豊かな生活文化と芸術を育みたいとの想いで、工芸品の作り手と使い手を結ぶ架け橋を築き上げてまいりました。毎回、手仕事で作品を制作する作家、約50名が公募で選ばれていて、本展を楽しみに毎年足を運んでくださる方も多くいらっしゃいます。また本展に加えて、ニッケ鎮守の杜にある「gallery らふと」では継続して、作家の作品発表の場やワークショップの機会を設けています。恒常的に活動を展開する中で、地域の方々には庭づくりのボランティアやクラフト展のスタッフとして運営に参加いただいてまいりました。そうした意味でもこのたびの受賞は、地域の皆様とともに賜ったものと、本当にうれしく思っています。

―メセナ活動を通じて、地域との関係を育まれてこられたのですね。

弊社は1896年の創業以来、自然の恵みであるウール製品をご提供してまいりましたが、“人と地球に「やさしく、あったかい」企業グループ”との経営理念に基づき、地域社会に貢献し共生できる事業を推進しています。創業の地である加古川市でも工場跡地を再開発し、地元とともに発展できる「街づくり、暮らしづくり」に取り組んでいます。私どものメセナ活動は、事業ととても近いところにあります。「朝日ニッケ英文コンテスト」はウール素材の学生服を着用する中高生を対象に始まり、羊毛の産出国オーストラリアとの国際親善もかねています。また震災復興支援企画「ぬくもりを届けよう」では、「工房からの風」のチャリティー販売による義援金と、ニッケの毛糸を使った手編みの帽子やマフラーなどをお届けしました。
ニッケグループは本年12月に創立120周年を迎えます。文化や伝統を育むとともに、新しい価値や未来の豊かな生活文化を創造する企業に進化すべく、さらにチャレンジを続けてまいります。


とみた・かずや

1959年静岡県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ニッケ(日本毛織株式会社)入社。コミュニティサービス事業部長などを経て、2009年に執行役員、12年に常務執行役員、13年に取締役、本年2月より現職。
 

メセナアワード2016 メセナ大賞受賞

日本毛織株式会社
工房からの風

活動内容
千葉県市川市、本八幡駅から線路沿いに10分ほど歩くと、ショッピングセンター「ニッケコルトンプラザ」が見えてくる。運営する日本毛織株式会社は、1896年より毛織物を手がける中、繊維にとどまらず多角的に事業を拡大し、1988年、工場跡地に同施設をオープンした。約50,000坪の敷地には「ニッケ鎮守の杜」と呼ばれる一角があり、工場時代から残されるお社を中心に豊かな自然がひろがる。野外クラフト展「工房からの風」は、この地をステージに、2001年に始まった。
毎年、10月に行われる同展に出品したい工芸作家を公募する。対象は、陶磁器・木工・金工・染織など自然の恵みを素材に手仕事で作品を制作する、プロまたは明確にプロを目指す新人作家。「ニッケ鎮守の杜」内の「galleryらふと」スタッフは約50名を選び、春から伴走者となって展示の準備を進める。この間、値付けから展示方法など作家として必要なスキルを伝授するほか、作家同士の交流を図り、切磋琢磨によるクリエイションの向上にも寄与する。
イベント2日間で来場する約20,000名のうち、7割が地元の住人でファンも多い。「使う」工芸の作家にとって、使い手との交流は制作のインスピレーションを得る大切な機会だ。またギャラリストやバイヤーからの声掛けで、この日にデビューのきっかけをつかむ作家も少なくない。本番までの半年にわたる準備期間は、作家にとってより確かな成長への足がかりとなるのだ。
作り手と使い手をつなぎ、豊かな暮らしづくりを提案する。工芸によるアクションは、生活の中にやわらかな風を吹き込んでいる。

評価ポイント
日常に結びついた工芸に着目し、豊かな生活文化の醸成に寄与している。
新人作家の登竜門として機能するだけでなく、充実した支援により育成にも貢献している

企業プロフィール (2016年5月現在)
本社所在地:大阪府大阪市(本店所在地:兵庫県神戸市)
主な事業:衣料繊維事業、産業機材事業、人とみらい開発事業、生活流通事業
設立年:1896年
資本金:64億6,500万円
従業員数:503名(単独)、4,649名(連結)
URL:http://www.nikke.co.jp

『メセナ アワード2016』掲載(2016年11月24日発行)

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