調査報告会レポート2017

2017年度メセナ活動実態調査報告会およびシンポジウム「SDGsとメセナ」

企業メセナ協議会・調査研究部会により、例年全国の企業・企業財団を対象に実施している「メセナ活動実態調査」。昨年度は企業を対象に調査を行いました。
今回は、2017年度調査結果のご報告とともに、「SDGsとメセナ」をテーマに専門家の方々をお招きし、今後のメセナの発展に向けてご講演をいただきます。
講演の後には、ご来場の皆さまと質疑応答を含めたディスカッションの時間も設けておりますので、ぜひふるってご参加ください!

■日時:2018年5月23日(水) 16:00~18:00
■会場:ビジョンセンター田町 405室
(東京都港区芝5-31-19 オーエックス田町ビル4階)

■スケジュール
1.実態調査報告:
吉村真也氏  TOA(株)経営企画本部 広報室 主事、
社会貢献・メセナ担当 [調査研究部会長]
2.講演:
根本かおる氏  国連広報センター所長
太下義之氏   三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)主席研究員
3.質疑応答・ディスカッション
モデレーター 吉本光宏氏 (株)ニッセイ基礎研究所 研究理事

■定員: 60名
■参加費:協議会会員/無料、非会員・一般/2,000円、学生/1,000円

■お申込み
【定員に達したため参加受付を締め切りました。たくさんのお申込みありがとうございました。】
① メールでお申込み:mecenat@mecenat.or.jp に、件名を「5/23報告会申込み」とし、お名前・ご所属(お役職)・電話番号をご明記のうえ、お送りください。
② FAXでお申込み:PDFより「参加申込書」に必要事項をご記入の上、FAX:03-5439-4521までお送りください。
③ WEBからお申込み:PDFよりお申込みください。

■詳細チラシ(PDF)

開催報告

2017年度メセナ活動実態調査報告会およびシンポジウム「SDGsとメセナ」[レポート]

文・天田 泉[メセナライター]

2018年5月23日(水)ビジョンセンター田町にて、「2017年度メセナ活動実態調査」報告会およびシンポジウム「SDGs〈エスディージーズ〉(持続可能な開発目標*1)とメセナ」が開催された。専門家による講演のあとは、参加者を交えた質疑応答・ディスカッションが行われ、メセナにおける社会的課題とのむすびつきについて議論を深めた。

2017年度の調査結果課題からSDGsとメセナの親和性を探る

企業メセナ協議会の澤田澄子常務理事の挨拶に続き、吉村真也調査研究部会部会長(TOA株)が「2017年度メセナ活動実態調査」を報告。340社の企業が参加した調査の結果を2000年度と比較することで、以下の3つのポイントが浮かび上がった。

1. メセナ活動の基本方針として“企業理念”を掲げている企業が46.3%と約半数を占める。また、「他団体への支援・提供」の割合が減少し、「自主企画・運営」による活動が増加、メセナは企業活動の一部として、社員が仕事として取り組んでいる。

2. メセナ活動の目的として「芸術・文化による社会課題解決」を掲げる企業が半数を超えている。なかでもメセナ活動を取り組む社会課題として「次世代育成・社会教育」「まちづくり・地域活性化」「社会福祉」などの割合が高く、「SDGsの17ゴール*2」と親和性がうかがえる。

3. 2020年のオリンピック・パラリンピックに向けたメセナ活動が徐々に増加している。


吉村真也氏<調査研究部会 部会長・TOA(株)

吉村氏はSDGsの掲げる「17のゴール」を解決する際のパートナーとして、アートを活用することをひとつのアイデアとして提案。SDGsと企業メセナの親和性に触れて、続く講演会につなげた。

SDGs誕生の経緯と文化との接点

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国連広報センター所長 根本かおる氏

講演会では、最初に根本かおる国連広報センター所長が登壇し、地球温暖化を含む気候変動、世界的な格差の広がり、紛争(とくに内戦)および難民・避難民の増加など、地球の持続が不可能になりつつある現状に触れた。

「“続かない世界”から、“続く世界”に変える。そのために力を結集しようと、生まれたのがSDGs(持続可能な開発目標)です。その前に2001〜2015年に実施されたMDGs(〈エムディージーズ〉ミレニアム開発目標*3)の実施がありました」

根本氏はまずSDGs誕生までの経緯を説明することで、参加者の理解を深めていった。

MDGsは、貧困人口、飢餓人口、妊産婦死亡率、乳幼児死亡率の削減といった、主に途上国の社会開発問題を解決するべく8つの目標をまとめ実施してきた。2015年までに貧困人口の割合は減少するなどの効果はありつつも、サハラ砂漠以南アフリカでは期待したほどの効果が見られないなど、積み残しも多かったという。

SDGs は、そうしたMDGsの積み残しに加え、気候変動や格差の拡大という21世紀に顕著になった課題を解決すべく、途上国と先進国も含めたすべての国の国内課題にも関わる世界目標としてまとめられた。

SDGs誕生までの経緯
・2000年9月 国連セミットで「国連ミレニアム宣言」採択
・2001〜2015年 ミレニアム開発目標(MDGs)の実施
・2015年9月 国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」採択
17の「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げる
・2016年〜2030年 持続可能な開発目標(SDGs)の実施

「SDGsの重要な原則は“誰も置き去りにしない”こと」と根本氏。とくに世界人口の4人に1人にあたる15〜24歳の若者層の声を聞くことを重視している。取り組みのひとつの例として、「持続可能な開発目標SDGs 学生フォトコンテスト*4」を紹介した。

また、敷居を低くして多くの人たちにSDGsを知ってもらうべく、と吉本興業と連携し芸人たちと製作したイメージビデオ*5を放映。

最後に、2030アジェンダの中の「文化*6」について触れ、メセナとSDGsが連帯する可能性について言及した。

「アートには人の心をオープンにする効果があります。SDGsを頭で理解することも大事ですが、同時にわくわく感をもって触れてほしいですね。また、メセナ活動で地域の課題に取り組んでおられる企業も多くいらっしゃいますが、SDGs は足元の課題も世界レベルの課題もつなげて考える力があります」と結んだ。

SDGsとメセナの未来

続いて登壇したのは、太下義之三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)主席研究員。SDGsの認知度に関する視点から、メセナとSDGsの未来について語った。


三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)主席研究員 太下義之氏

SDGsの認知度:一般国民(電通)
電通が10代〜70代の一般国民に行ったインターネット調査では、SDGsの認知度は14.8%と低い結果だった。また内閣府が全国の自治体に行った調査では認知度は14.6%。経済産業省が日本企業に向けて行った調査では「SDGsに取り組む上での課題」の1位、2位が「社内の理解度が低い 57.7%」「社会的な認知度が高まっていない 51.1%」となったことを紹介。

「現状では一般国民、自治体、企業ともSDGsの認知度が低い」。太下氏はそう指摘すると、このように続けた。

「認知が進まないのはSDGs自体が『よくわからない』という理由が挙げられています。『わからない』というのは、知識として理解しているけれど、腹落ちしていない状態ではないでしょうか。」

そして、MDGsの流れをSDGsが引き継いだその過程に、わかりにくさの原因があるのでは、と分析した。

外務省の資料「MDGsとSDGsの違い」

太下氏によれば、「SDGsのゴール(目標)が多いことが理解度が低い原因のひとつ。また、MDGsがもともと途上国を主な対象にしていたこともあり、途上国に関係が深いという印象を与えてしまうのも、SDGsが把握されない理由」。

では、SDGsを理解するためにはどうすればいいのだろう? 太下氏はこう言う。

「まず、われわれは国際的な決まりごと(グローバル・アジェンダ)自体が変化をし、パラダイムシフトが起きていることを理解するのが必要です」

その上で、今後日本にはSDGsに関して、大まかに二つの選択肢があると言う。それは17のゴールに合わせる“優等生”になるのか、もしくはパラダイムシフトしている世界に対応して、“未来の開拓者”になるのか、そのいずれかである。

“正解”のない時代を生きている私たちには「新しい社会の課題に踏み込むようなクリエイティブなことをやっていくことが必要」と太下氏。「SDGsはそのための大きなチャンスではないのかという気がしています」と述べた。

「SDGs17の目標と169のターゲット」のなかにある「文化」に関する記述に注目した。そのなかで「文化多様性*7」というキーワードが浮かび上がってきた。
クリエイティビティと文化の多様性は相互に関係していると考える太下氏。LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)や障がい者の存在に注目し、マイノリティの人たちが暮らしやすい社会は、いわゆる健常者にとっても暮らしやすい社会であり、両者は「互恵」の関係にあると考えている。

ディスカッション

続くディスカッションでは、「SGDsのゴールが多すぎて理解が深まらないのでは」という太下氏の指摘に対して、根本氏がまず「すべてのゴールに関わる必要はなく、自分がこだわりをもってできることから考えてもらえばいい。今後は、身近な関わり方をライフスタイルレベルで提案したい」と述べた。

モデレーターの吉本光宏ニッセイ基礎研究所研究理事が「SDGsによって、メセナのアプローチが多様に広がる可能性がある」との考えを話すと、吉村氏もこう続けた。

「正解のない時代だが、メセナに20年以上関わってきた経験からアートの力を信じている。アートも正解がないが、アートのもっている包摂性などが何かしら作用して、思いもよらないような変化や成果を生み出してきたのが日本の企業メセナ。SDGsはメセナが次のステップにいけるチャンスだと思う」

SDGsを機に、今後のメセナ活動が新たな広がりを見せることを期待して、閉会した。

*1:SDGs〈エス・ディー・ジーズ〉は、2030年に向けて人と地球の繁栄ための行動計画として17の目標を掲げた「持続可能な開発目標」のこと。
*2:「SDGsの17ゴール」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html
*3:MDGs〈エム・ディー・ディーズ〉は、2000年9月の「国連ミレニアム・サミット」に参加した189カ国によって採択された「国連ミレニアム宣言」をもとに、2015年までに達成すべき国際社会共通の目標としてまとめた開発目標。 http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg/mdgoverview/mdgs.html
*4:http://www.unic.or.jp/news_press/info/28639/
*5:http://www.yoshimoto.co.jp/sdgs/
*6:36.(文化)我々は、文化間の理解、寛容、相互尊重、グローバル・シチズンシップとしての倫理、共同の責任を促進することを約束する。我々は、世界の自然と文化の多様性を認め、すべての文化・文明は持続可能な開発に貢献するばかりでなく、重要な成功への鍵であると認識する。ー「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」より
*7:4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。

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