メセナアワード

メセナアワード2006贈呈式

2006年12月1日(金)、「メセナアワード2006」贈呈式をスパイラルホール(東京・港区)にて開催しました。
贈呈式では各受賞活動の紹介につづき、近藤信司文化庁長官より「文化庁長官賞」部門、福原義春企業メセナ協議会会長より「メセナ大賞」部門の賞の贈呈をおこないました。受賞企業・団体の代表者はそれぞれ受賞の喜びをスピーチされ、審査委員からは審査評が述べられました。

「メセナアワード2006」受賞企業・団体の紹介

当日は受賞企業・団体関係者の皆さま、「メセナアワード2006」応募企業・団体の皆さまをはじめ、企業メセナ協議会会員、関係者、報道関係の方々を中心に、総勢350名を超える方々にご出席いただきました。また贈呈式終了後は、同会場にて記念レセプションを実施しました。

メセナ大賞部門
メセナ大賞 株式会社ベネッセコーポレーション/財団法人直島福武美術財団
香川県直島での継続的なアート活動
地域文化支援賞 財団法人岡田文化財団
三重県内における文化・芸術活動への助成等
収蔵作品充実賞 株式会社グリーンキャブ
マリー・ロランサン美術館の運営
写真文化賞 コニカミノルタホールディングス株式会社
51年におよぶ写真ギャラリーの運営
音楽総合文化賞 財団法人サントリー音楽財団
クラシック音楽・現代音楽の普及・振興
文化財保存賞 財団法人住友財団(東京都)
国内外の文化財維持・修復事業助成
庭園文化賞 富士建設株式会社/財団法人中津万象園保勝会
大名庭園「中津万象園」の復元と維持保全
文化庁長官賞部門
文化庁長官賞 近畿労働金庫
「エイブル・アート近畿 ひと・アート・まち」の開催

審査委員スピーチ

審査委員 いとうせいこう 氏

僕は一般の人たちの目から審査をさせていただきました。応募資料が審査会場に続々と届けられ、審査委員全員で見ていくわけですが、こんなにたくさんの企業による文化支援活動があるということを知らずにいました。どの企業の案件も孤軍奮闘のような印象を私は受けましたが、各地で地域のいろいろな文化を支援していて、立派に行ってらっしゃることに深い感銘を受けました。
資料を見ながら、もっと知られていいはずなのに、もったいないなぁ、と正直思いました。この「メセナアワード」というものは、一般の方々にもっと宣伝していいものだと思います。残念ながら選に漏れた企業の方々も素晴らしい活動をいろいろと行っていらっしゃいました。私の役割として、ぜひ一般の方々に、こういうことが行われている、ずっと続けられているということをあらゆる機会をとらえて宣伝してまいりたい、と思います。皆様、素晴らしい活動をご苦労さまでした。これからも続けていかれることを期待しています。

【プロフィール】
作家、クリエイター。映像や舞台、音楽、ニューメディアなど幅広いジャンルで表現活動を行う。著書に『ノーライフキング』(88年)、『ボタニカルライフ』(99年)、『見仏記』シリーズ等多数。最近は『自己流園芸ベランダ派』を出版するほか、園芸ライフスタイル・マガジン『PLANTED』の編集長を務める。NHK教育テレビ「天才ビットくん」、テレビ朝日「虎の門」、スペースシャワーTV「Oxala!」に出演中

審査委員  大笹吉雄 氏

企業によるメセナ活動が、これほどまで全国にわたりさまざまな形で行われているとは・・・、と審査会に臨んではじめて知りました。実にたくさんの活動がなされているのですが、私は専門が演劇なので、そのことで申し上げますと、演劇部門へのメセナ活動の応募がほとんどないのが非常に残念でした。圧倒的に多いのは美術と音楽で、なぜ演劇が少ないのかと考えこまざるをえないくらいに案件が少ない。この機会をお借りして、ぜひ演劇にもメセナの手を、愛の手を、と声を大にしてお願いしたいと思います。来年は、演劇の活動にトロフィーを差し上げることが出来るよう期待しますし、演劇へのメセナを積極的にやっていただきたいと願っています。決して演劇も見捨てたものではなく、コミュニケーションということでいえば演劇こそがまさにライヴ・コミュニケーションの場でもあります。そこから企業のメセナ活動へ発展していくことは充分可能だと思います。どうぞ皆様よろしくお願い致します。

【プロフィール】
演劇評論家、大阪芸術大学教授。主な著書に『日本現代演劇史』(全8巻、続刊予定)、『花顔の人・花柳章太郎伝』、『現代演劇の森』、『女優 杉村春子』ほか。サントリー学芸賞、大佛次郎賞受賞。紀伊國屋演劇賞、朝日舞台芸術賞等の選考委員を務めるほか、日韓演劇交流センター会長、日本演劇学会理事、日本劇団協議会理事、としま未来文化財団理事、新国立劇場運営財団評議委員等を務める。

審査委員 岡部真一郎 氏

アワードを受賞された皆様、おめでとうございます。仕事でパリとウィーンに行き、戻ってきたところです。ウィーンでは、フィンランドの女性作曲家、カイヤ・サーリアホの「シモーヌの受難」という作品を観てきました。フランスの思想家、シモーヌ・ヴェイユをテーマにした大変に素晴らしい作品でしたが、この作品をはじめ、音楽や演劇などのパフォーミング・アーツは、上演される場に赴き、その空気と時間を共有しなければ、真価を理解することは難しい。これはパフォーミング・アーツの宿命でもあり、本質的な問題であると思います。また、美術などと比べると具体的な形として後に残るものがないゆえ、そのような分野のメセナ活動をどう評価するのか、我々審査委員も知恵を出し合って考えてなければならない課題でもあります。しかし、その場で、はかなく消え、だからこそ非常に大きく強く、時には、人生をも変えてしまうくらいの感動を与えてくれるジャンルでもあります。多くの企業がメセナ活動を通してこのジャンルを支援してくださっていることに、心から感謝しています。
シモーヌ・ヴェイユが、「人々はパンと同じように詩、すなわち芸術を心から欲しているのだ」という言葉を残しているように、芸術・文化というのは、我々一人一人に絶対に必要不可欠なものです。企業の皆様からのさらなる理解と芸術文化活動への支援をお願いし、かくなる活動が今後一層発展していくことを心から願っています。

【プロフィール】
音楽評論家、明治学院大学教授。専攻は音楽学、特に20世紀音楽および同時代音楽。『日本経済新聞』、『朝日新聞』、『レコード芸術』、『音楽の友』等で評論活動を展開するほか、NHKテレビ・ラジオの音楽番組の解説、キャスターなどを務める。著作に『ヴェーベルン 西洋音楽史のプリズム』(2004年)、「消費社会の指揮者像」、「装置としてのオペラ――タン・ドゥン:《マルコ・ポーロ》序論」などがある。

審査委員 樺山紘一 氏

今日の芸術文化支援を推進する代表的な企業・団体の方々に賞を差しあげることは、私ども審査員としても大変な喜びです。また、今回は残念ながら受賞に至らなかったなかにも、それぞれの地域で、NPOやボランティア、あるいは市民の方々とともに取り組んでいるメセナがたくさんあり、これら地域社会とのつながりの中から今後の発展が見込めると確信できる活動がありました。とりわけ地域のなかで、従来のメセナの考え方そのものが大きく変わりつつあるということを感じられたような気がします。私も博物館運営の現場におりますが、近年ますます地域住民の方々、お子様や高齢者の方々と共に、文化芸術活動を推進していくことが必要となってまいりました。
先ほど受賞者のスピーチにもありましたが、防衛庁を防衛省に昇格させるならば、同時にぜひとも文化庁を文化省に昇格させてほしい、それが世界に対するメッセージではないかと思います。都心の六本木・防衛庁跡地には、来年3月にサントリー美術館が開館します。今後とも、日本がますます文化国家として成長しますように、私どもを含めまして頑張っていきたいと思います。

【プロフィール】
東京大学名誉教授、印刷博物館館長。元・国立西洋美術館館長。専攻は西洋中世史、西洋文化史。現代における市民社会、地域社会と、学術・文化・芸術活動との連携や協調のあり方を幅広く探る。著書に『西洋学事始』(82年)、『ルネサンスと地中海』(96年)、『地中海―-人と町の肖像』(2006年)、共著『解はひとつでない―グローバリゼーションを超えて』(2004年)など多数。

審査委員 北川フラム 氏

昨今、あらゆることが平均的・均一的・単利的な世の中になっています。そういう中で人間の五感を通して、自然あるいは身体と密接につながっていく部分がますます重要になるだろうと常々考えています。今回、受賞されたサントリー音楽財団とベネッセコーポレーションは各々の分野で強烈なお仕事をされています。きわめて現代的で、しかも個人の内面に入っていくような、また時代に真っ向からぶつかっていくようなアートを応援している活動を評価できたことは、とても重要な意味があると思っています。
もう一つ、岡田文化財団に関してですが、僕は以前、三重県立美術館の設立をお手伝いしたことがあります。その時、美術館の収蔵作品が、現代美術を含めて、とてもハイグレードなものを集めていることを知ったのですが、なんでそんなすごいことが出来るのか、つい最近まで全く分かりませんでした。各企業が、個々に作品を選ぶメセナ活動もありますが、どちらかというとそれは趣味的な傾向が強くなる場合もあります。それに対して、専門家が選んだものを企業が無条件に応援するという、もう一つのメセナの形を岡田文化財団はやってこられた。これはこれで、なかなか素晴らしいことだと思い、他のやり方とは違う方法もあるということをご紹介しておきます。今日は皆さんどうもありがとうございました。
昨今、あらゆることが平均的・均一的・単利的な世の中になっています。そういう中で人間の五感を通して、自然あるいは身体と密接につながっていく部分がますます重要になるだろうと常々考えています。今回、受賞されたサントリー音楽財団とベネッセコーポレーションは各々の分野で強烈なお仕事をされています。きわめて現代的で、しかも個人の内面に入っていくような、また時代に真っ向からぶつかっていくようなアートを応援している活動を評価できたことは、とても重要な意味があると思っています。
もう一つ、岡田文化財団に関してですが、僕は以前、三重県立美術館の設立をお手伝いしたことがあります。その時、美術館の収蔵作品が、現代美術を含めて、とてもハイグレードなものを集めていることを知ったのですが、なんでそんなすごいことが出来るのか、つい最近まで全く分かりませんでした。各企業が、個々に作品を選ぶメセナ活動もありますが、どちらかというとそれは趣味的な傾向が強くなる場合もあります。それに対して、専門家が選んだものを企業が無条件に応援するという、もう一つのメセナの形を岡田文化財団はやってこられた。これはこれで、なかなか素晴らしいことだと思い、他のやり方とは違う方法もあるということをご紹介しておきます。今日は皆さんどうもありがとうございました。

【プロフィール】
アートディレクター、アートフロントギャラリー代表。主なプロデュースとして「アントニオ・ガウディ展」(78年)、「アパルトヘイト否!国際美術展」(88年)等。街づくりの実践では「ファーレ立川アート計画」、「越後妻有アートネックレス整備構想」ほか。2000年より「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」の総合ディレクターを務める。フランスよりレジオン・ドヌール(シュヴァリエ章)受章。

審査委員 山根基世 氏

これまで美術番組に長く関わってきたなかで、「アートに何が出来るだろう、世の中に対して力を持つのだろうか」と葛藤を抱くアーティストに会う機会がありました。直島で、内藤礼さんの家プロジェクトを取材した際、最初は「現代アート、なんじゃそれは?」と言っていた島民が、作品が出来上がる頃には、「きれいじゃのう」とその意識が変わっていく過程を見て、現代アートはわけのわからないものと見られているけれども、人の心を変える力を持つのだと信念として感じとりました。人の心が変わることによって地域が変わり、社会が変わる、そういう力がアートにあると実感したのです。本日受賞された活動は、すべて人々の心を動かし、そのことによって世の中を少しずつより良い方向に動かす力を持つ活動だと信じております。
文化庁長官賞の近畿労金の活動についても、企業が障害者の方たちの表現活動を支援するだけでなく、市民が障害者の方といっしょに活動をすることで、参加者みんなの心に何かが芽生えていく。また、それぞれの人々との関係が変わることで社会が変わっていく。このようにして、今までの古い価値観だけでものを見るのではなく、何が美しくて何が美しくないのかという自分の中のものさしが出来て、自分の目でものを見、ものを考え、自分の言葉で人々が語りはじめたときに、本当に世の中が変わっていくのだと思います。
企業のメセナ活動が実施されることで、企業は社会を変える原動力となり、さらに芸術文化の意義をしっかり見据えて活動を継続するということは、昨今の暗いニュースばかりのなかで、大きな希望を見る思いがします。芸術文化こそが社会を変えていくのだという思いを私自身も肝に銘じて頑張っていきたいと思っております。色々と教えていただきまして、ありがとうございました。

【プロフィール】
NHKアナウンス室長。アナウンサー現役時代、旅番組で全国各地を取材するほか、10年あまり美術番組を担当し、400人以上の芸術家を取材する。国土庁地域表彰委員、文化庁国語審議会委員などを務める。2000年、放送文化基金賞受賞。著書に『であいの旅』(91年)、『歩きながら』(94年)、『ことばで「私」を育てる』(99年)等がある。

あなたが選ぶメセナ賞が決定

メセナ大賞部門で選ばれた6つの活動に対して一般投票を募る「あなたが選ぶメセナ賞」。
400票近いご投票をいただいた結果、最多得票となった富士建設株式会社/財団法人中津万象園保勝会に「あなたが選ぶメセナ賞」をお贈りしました。

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