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メセナアワード2005贈呈式

2005贈呈式

2005年11月25日(金)、「メセナアワード2005」贈呈式をスパイラルホール(東京・港区)にて開催しました。
贈呈式では、河合隼雄文化庁長官の挨拶、「メセナアワード2005」選考経過の報告に続き、映像にて受賞活動を紹介。そして受賞企業・財団には、表彰状とトロフィーが贈呈されました。
また贈呈式終了後は、同会場にて記念レセプションを実施しました。当日は、受賞企業・財団関係者のみなさま、「メセナアワード2005」応募企業・財団のみなさまをはじめ、企業メセナ協議会会員、関係者、報道関係の方々を中心に、多くの方々にご出席いただきました。

「メセナアワード2005」受賞企業・団体の紹介

メセナ大賞部門
メセナ大賞 株式会社三越(本社所在地:東京都)
日本橋三越本店を中心とした芸術・文化事業の展開
アートスタイル経営賞 株式会社板室観光ホテル大黒屋(栃木県)
自然と現代アートを融合させた斬新な旅館経営
児童文化賞 株式会社イトーヨーカ堂(東京都)
子ども図書館の運営と「小さな童話」大賞の実施
服飾文化賞 財団法人京都服飾文化研究財団(京都府)
「COLORS ファッションと色彩:VIKTOR&ROLF&KCI」展の開催
市民文化賞 株式会社信濃毎日新聞松本専売所(長野県)
劇場「ピカデリーホール」による映像と舞台芸術活動への支援
文化財保存賞 財団法人住友財団(東京都)
国内外の文化財維持・修復事業助成
アート情報文化賞 大日本印刷株式会社(東京都)
ウェブサイト「DNP Museum Information Japan アートスケープ」の運営
地域文化賞 田苑酒造株式会社(鹿児島県)
「田苑酒蔵サロンコンサート」の実施
審査委員奨励賞 株式会社崎陽軒、ほか8団体(神奈川県ほか)
「大倉山水曜コンサート」の継続的な運営支援
文化庁長官賞部門
文化庁長官賞 株式会社損害保険ジャパン(東京都)
アートを活かした地域活動―損保ジャパン東郷青児美術館/人形劇「稲むらの火」

メセナアワード2005贈呈式 受賞者スピーチ

株式会社三越 代表取締役会長 中村胤夫 様

メセナ大賞:日本橋三越本店を中心とした芸術・文化事業の展開

2005贈呈式メセナ大賞三越
中村胤夫この度は栄誉ある賞をいただきましてメセナ大賞という大きな重たい賞を受賞して、大変に感激しておりますとともに、光栄の至りと思っております。
三越は、1673年に呉服業をスタートさせ、江戸のころから商売をしてきました。近松門左衛門の物語のなかに、「越後屋」という言葉がたくさん出てきますが、当時から「世の中の人たちに物だけでなく、いろいろな文化を提供していかなければならない」と我々の先輩たちが言っておりまして、このDNAを持ち続けてきたわけです。
時が下って1904年、「デパートメント宣言」をもって近代百貨店のはしりをつくりあげてまいりました。そのとき最初に催したのが、「尾形光琳遺品展」です。尾形光琳の文様を着物に用いたもので、その遺品展とあわせて図案大賞を募集いたしました。当時、大変話題になったという記録が残っております。1907年に美術部ができ、まもなく100年を迎えるわけですが、この間、多くの作家や美術の先生方がご贔屓(ひいき)くださり、世の皆様に楽しんでいただき、美を愛していただきました。また、1927年には劇場ができまして、歌舞伎やお芝居、落語などさまざまな催しをご提供申し上げ、今日に至っているわけです。
昨今の百貨店業界は、大変厳しい状況にあります。小売という業態が本当に多様になり、百貨店もその一部になりました。そのようななかで、いま一度、百貨店というものを考え直さねばならないところにきています。
そこでやはり、経営の柱のひとつとして「文化・芸術」が大きくクローズアップされてきました。私どもは日本橋本店を中心に、三越をアートの殿堂にしようという合言葉で商売してきております。また、「コト・モノ・百貨店」などとも言っております。この文化芸術活動は、景気の悪いときには大変苦労いたしまして、どうしても縮小してしまう。でもそれをずっと続けてきた百貨店・三越が評価されて受賞になったと思います。私も以前、この仕事に直接携わってまいりまして、各国の美術館や演劇の先生方とご相談しながら実行してきましたが、実現に至るまでの苦労は並大抵ではございませんでした。しかしながら、こうしたメセナ活動は、経営の柱として大きな意味を持ってきている。そういう意味でも、このような時期に三越が受賞したことは、百貨店業界にとっても本当にありがたく、意義ある受賞と思っております。またこれを支えてくれた私ども仲間も大変喜んでおりまして、これからも頑張ろうという気持ちでおります。
最後に福原会長様、また審査委員の皆様、そして事務局の方々にも厚く御礼申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。

選考評スピーチ

審査委員 池上 惇 氏

河合隼雄先生(「メセナ大賞」元審査委員。現・文化庁長官)の後任として、4年間、審査委員を務めさせていただきました。
私どもは文化経済学について学会をつくっておりますが、この学問の創始者にラスキンという有名な人がおります。この人の言葉に、「芸術というものは芸術そのものとして最高のものでなければならないが、その芸術が人生を輝かすことができれば、さらにすばらしい」というものがございます。毎回、その言葉を思い出しながら審査させていただきました。
企業の皆様が社会貢献として取り組んでおられる活動も、この3年のうちに急速に進化してきております。昨年は、企業のメッセージ性というものがいかに大きなものであるかを感じましたし、本年はいよいよ、非営利事業が経営の柱のひとつであるということをはっきりと伺いまして、本当に文化というものは人生を輝かせるのだということを痛感いたしております。
ご担当の皆様方はじめ、文化を持続的に発展させようとしておられる企業の方々の姿勢に触れるにつけ、教えられることが多くありました。特にご担当の方には、「私どもは企業の他の人が懸命に働いた成果を文化に捧げている。一瞬の緩みも許されない」とおっしゃる方が大変多くなりました。これは今日の企業社会というもののモラルの高さを示すものではなかろうかと思います。
そしてまた、文化の持続的な発展を支えているのは、現在ではNPOをはじめとする市民の方々との連携です。非常に多くの市民の方々がボランティアとして、またさまざまな専門家として、まちの創造拠点を支えているという印象を強く持つようになりました。その創造拠点から発せられるまちの文化力、そうしたものが地域の人々に感動を与えているのではないか、と思っております。
先ほど受賞された方のお言葉にございましたように、日本という国は、まだまだ文化の空白が多い。ある意味ではやるべきことの多い国でして、文化の領域の多くは開拓されておりません。しかしながら、この分野に多くの企業のメセナ活動が展開していることに、この3年間、本当に感銘を受けました。日本の文化力というものは、これからが本番ではないでしょうか。政府の財政が制約され、厳しい条件下で、もはや市民の力を借りなければ多くの文化の発展はない時代にきたのではないかと思います。
皆様方には今後も持続的な活動を心がけていただきますとともに、私どもも微力ながら人材育成やその他の活動にご協力させていただく所存です。本日はどうもありがとうございました。

【プロフィール】
経済博士。文化経済学会元会長。日本財政学会顧問。研究領域、固有価値と創造都市。
主著に『文化経済学のすすめ』、『生活の芸術化―ラスキン・モリスと現代』、『情報社会の文化経済学』、『現代のまちづくり(共著)』(91年~00年丸善)、『財政思想史』(99年有斐閣)、『文化と固有価値の経済学』(03年岩波書店)

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