調査報告会レポート2020「SDGsとメセナ」vol.6

「2020年度メセナ活動実態調査」報告会
~今こそメセナ!コロナ禍での対応と今後の展望~

企業メセナ協議会により1991年から全国の企業・企業財団を対象に実施している「メセナ活動実態調査」。
2020年度の調査結果をまとめた『Mécénat Report 2020』を本年3月に発行しました。
今回は2020年度調査の傾向を報告するとともに、セミナーシリーズ「SDGsとメセナ」の第6弾として、
トヨタ自動車株式会社ローム株式会社公益財団法人ローム ミュージック ファンデーションをお迎えし、それぞれの取り組みについてお話しいただきます。
講演後には、参加者の皆さまとの質疑応答を含めたディスカッションの時間も設けております。

2020年度調査では、近年の「地域」と「企業価値創造」を重視する傾向に加え、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている声も多くありました。
コロナ禍でのメセナ活動の課題や可能性についても議論を深めたいと存じます。ぜひ皆さまお誘い合わせのうえご参加ください!
また、本報告会は当日オンライン配信(YouTubeライブ)も行います。
会場に来られない方はぜひオンラインでご参加ください!

■開催概要 ※協議会ウェブサイト:https://www.mecenat.or.jp/ja/events/11737
日時  | 2021年6月11日(金)16:00~18:00(開場予定15:45)

会場  |東京ミッドタウン・ホールB [ミッドタウン・イーストB1F](〒107-005 東京都港区赤坂9-7-1)

参加費 |一般2,000円 学生1,000円(協議会会員は無料)

定員  |
・会場:先着100名 ※通常期のホール収容人数408名に対して収容人数を30%程度に制限
・オンライン:人数制限なし ※見逃し配信あり(6月15日~6月25日)

お申込み|※6月9日12時締切
①Peatix:https://research2020.peatix.com
 ※コンビニまたはATMでお支払いの場合は6月8日までにお支払いをお済ませください。
協議会会員の方は以下②~④の方法でもお申込み可能です。
②協議会ウェブサイト参加申込フォーム:https://www.mecenat.or.jp/ja/event_form/20210611seminar
③メール:件名を「調査報告会申込」とし、別紙「参加申込書」(ページ下部参照)記載事項を本文にご記入の上、
mecenat@mecenat.or.jpまでお送りください。
④FAX:別紙「参加申込書」(ページ下部参照)をご記入の上、03-5439-4521までお送りください。

■内容
[16:00~16:10 開会ご挨拶・登壇者紹介・次第説明] 企業メセナ協議会
[16:10~16:25 2020年度メセナ活動実態調査結果報告] 部会長:森実尚子[日本電気(株)]
[16:25~17:15 講演] ※各社/団体20~25分
「トヨタが幸せを量産するために取り組むメセナとは」
        トヨタ自動車(株) 社会貢献推進部 部長/トヨタ博物館 館長 布垣直昭氏
「文化を育むロームのメセナ活動について ~豊かな暮らしと社会のために~」
        ローム(株)・(公財)ローム ミュージック ファンデーション
        ローム(株)メセナ推進室長 兼 (公財)ローム ミュージック ファンデーション事務局長 竹内善行氏
[17:15~17:55 質疑応答/ディスカッション]
※登壇者へのご質問を受け付けます。報告会開催前はメール(research@mecenat.or.jp)のみ、報告会開催中はメールまたはYouTubeライブ配信画面のチャットにて随時受付いたします。
 すべての質問にお答えできない場合もありますのでご了承ください。
[17:55~18:00 閉会ご挨拶] 企業メセナ協議会

■2020年度 調査研究部会メンバー一覧 [企業五十音順、敬称略]
部会長:森実尚子[日本電気(株)]、上坂陽次郎[(株)朝日新聞社]、吉本光宏[(株)ニッセイ基礎研究所]

■開催案内・参加申込書はこちら

※【会場参加ご希望の方】参加申込のご連絡をいただいた時点で、下記事項に同意したものとみなします。
・新型コロナウイルス感染リスクがあることを承諾した上で当セミナーに参加することに同意します。
・感染リスクを含むあらゆるリスク、損失において参加者ご自身による自己責任であることに同意します。
・万が一、参加された方に感染が確認された場合、調査機関への情報開示、参加された方へご連絡差し上げることに同意します。

※【会場参加ご希望の方】新型コロナウイルス感染症への対策のためご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
・体温測定の実施       受付にて体温測定を実施いたします。
・マスクの着用           必ずマスクをご着用の上ご来場ください。
・アルコール消毒       ご入出・退出の際は必ず手指のアルコール消毒を行ってください。

※【オンライン参加ご希望の方】報告会前日の6月10日にご視聴のご案内をお申込書記載のメールアドレスへご連絡いたします。

お問い合わせ|足立|research@mecenat.or.jp|TEL:03-5439-4520|FAX:03-5439-4521

2020年度メセナ活動実態調査は、「令和2年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」として文化庁から委託を受け、実施しました。
SDGsとメセナセミナーシリーズは、「令和3年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」として文化庁から委託を受け、実施しています。

 

開催報告

「SDGsとメセナ」vol.6
「2020年度メセナ活動実態調査」報告会
~今こそメセナ!コロナ禍での対応と今後の展望~ [レポート]

2021年6月11日(金)東京ミッドタウン・ホールB(港区赤坂)にて、(公社)企業メセナ協議会主催による「2020 年度メセナ活動実態調査」報告会が行われた。緊急事態宣言下、会場では万全の感染予防対策に努めるとともに、オンラインでのライブ配信も行われた。本報告会は、2018年から企業メセナ協議会が継続して取り組む「SDGs(エスディージーズ)とメセナ」についての6回目のセミナーにあたる。筆者はアーカイブ配信を視聴しレポートを作成した。

「2020年度メセナ活動実態調査」結果報告
企業メセナ協議会の澤田澄子常務理事兼事務局長の挨拶に続き、森実尚子調査研究部会部会長(日本電気(株))から「2020年度メセナ活動実態調査」についての報告があった。本調査は1991年から継続し、2020年度の調査は2019年度の活動実績についての結果となる。回答企業数は465社。回答財団数は178団体となっている。2020年度調査の総括として、メセナ活動の取り組みは「地域」と「企業価値創造」を重視する傾向にあること。メセナ活動の成果として、「地域」や「自社ブランド」に加え、「社内への効果」をあげる声が増加したことが報告された。
さらに時事設問として新型コロナウイルスについての報告があった。2020年9月時点で、コロナの影響を受けていると回答した企業、財団は80%以上。具体的には、自主もしくは支援先プログラムの開催中止、延期が多数。運営施設の休館の解答も目立ち、企業、財団ともにリアルな実施が難しいものはオンライン等の代替方法や実施時期を試行錯誤する回答も多くあった。森実部会長から2021年度についても引き続きコロナに関する時事設問を設け、企業、財団のコロナ禍での課題や取り組みを調査したいとの意向が示された。

講演① トヨタが幸せを量産するために取り組むメセナとは
続いて、トヨタ自動車(株)社会貢献推進部 部長/トヨタ博物館 館長 布垣直昭氏による講演があった。

講演は、「トヨタは車を作っているのではなく幸せを量産している」というトヨタ流のメッセージから始まった。トヨタは、車を通して、世界中の「人の心を動かし」続けてきた企業だからこそ、「人の心を動かす」メセナ活動について支援をする必要があると考え、その信念は揺るぎない。
コロナ禍におけるトヨタの取り組みについて、3つの段階に分けての説明があった。1つ目。感染拡大への緊急対応として、工場のノウハウや車両の知見を応用した医療支援やトヨタ生産方式のノウハウをワクチンの効率的接種へ応用する試みなどがある。博物館に代表される文化貢献施設では、いち早い感染防止対策を実施した。メセナ活動については、オンラインでできることに取り組み、ウィーン・プレミアム・コンサートの無料配信、プロ演奏者による中高生向けオンラインレッスンの実施、障がい者アートの感染予防SNSスタンプの制作などがある。特筆すべきは、コロナ禍において、アートマネジメント総合情報ウェブサイト「ネットTAM」が絶好のプラットフォームとしての存在感を発揮した事である。ウイルスに立ち向かうためのお役立ち情報として、助成金情報をはじめ、様々な情報や読み物記事を発信した。さらにオンライントークイベントを企画、コロナ禍での様々な困難について、考えだそう、歩きだそうと呼びかけた。
2つ目。わざわい転じて福となす。創意工夫で文化イベントを開催した。前述ウェブサイトのトークイベントから派生した企画である、コロナの影響で中止となったコンサート会場を使ってアーティストに発表の場を提供した。
3つ目。コロナによる環境激変後の未来。リモート環境の世界同時拡充と意識変化により、現状を捉え直し、「人の心を動かす」新たなあり方を模索している。オンラインで全国のアマチュアオーケストラをつなぎ、SDGsについて話し合う機会を作ったり、トヨタ青少年オーケストラキャンプはオンラインでの開催となった。トヨタ博物館ではリアルとバーチャルが融合したニューノーマルな博物館へのモデルチェンジを図っている。
トヨタのメセナ活動の強みは、長年培ってきた強固な土台の上で、コロナ禍による環境激変への対応ができている点にある。場当たり的な対応とは対局にあり、トヨタが幸せを増産するために取り組むメセナ活動の真骨頂だ。

講演 ② 文化を育むロームのメセナ活動について ~豊かな暮らしと社会のために~
次に、ローム(株)メセナ推進室長 兼 (公財)ローム ミュージック ファンデーション事務局長 竹内善行氏による講演があった。

ローム及びローム ミュージック ファンデーションと言えば、我が国の音楽文化支援のリーディングカンパニーである。1991年の財団設立以来、継続して若い音楽家たちの夢をサポートしている。支援してきた奨学生たち「ローム ミュージック フレンズ」は、4,600人以上を数え、国内外の音楽界で目覚ましい活躍をしている。
講演は企業紹介から始まった。ローム株式会社の企業目的、経営ビジョン、ブランドスローガンをはじめ、社会的責任と商品による貢献についての説明。「社会」と「企業」の双方に価値を生み出す企業理念に基づき、グローバル規模での社会的課題解決に努め、SDGsの達成、社会の持続的な発展に積極的に貢献している様子がよく分かった。さらにロームシアター京都の支援に代表されるロームの「文化・地域交流」とローム ミュージック ファンデーション設立経緯についても説明があり、ロームのメセナ活動における安定した基盤の礎を実感することができた。
ロームの音楽文化支援活動の特徴は、音楽文化の発展(音楽家の育成)と音楽文化の普及(聴衆の拡大)にあるが、コロナ禍においては、多くの事業を中止し、支援している奨学生も苦しい状況に直面せざるをえなかった。
コロナ禍においては「今できること」を模索し、4つの取り組みがなされた。1つ目はオンラインでの選考審査。2つ目は認定式報告会の開催。3つ目はコロナ禍での公演への協賛。4つ目は、ローム ミュージック フェスティバルの開催である。オンラインでの選考審査は、このような時だからこそ、途切れることなく、奨学援助事業、音楽活動への助成を行いたいと考え、審査レベルの維持と公平性の保持を担保するため、細かく応募内容を規定した。オンラインで認定式報告会を開催することで、コロナ禍であっても学生同士の交流の機会を作り、奨学生のモチベーションアップを実現した。公演への協賛は、中止することなく延期という形で行っている。そしてローム ミュージック フェスティバル 2021については、公演直前に緊急事態宣言の発出が決定されたことを受けて、急遽無観客公演に変更となった。当初より配信を予定していたこともあり、中止することなく本格的なライブ配信をお届けすることができた。
今後の取り組みについても、安心・安全なコンサートの実施と配信事業の更なる拡大。公演事業を中止することなく、年間を通して継続して行うことを目指している。我が国の音楽文化、特に若い音楽家たちはコロナ禍においても歩みを止めることなく音楽活動に邁進できた。未来の音楽文化の発展において、この功績は計り知れない。

質疑応答/ディスカッション
講演後には質疑応答の時間が設けられた。会場ではドイツ在住の音楽家などから、音楽と科学について、中小企業のメセナ活動について、といった熱心な質問があった。音楽が精神に与える影響について、特に生演奏が人の心を動かす力については、被災地支援などの実体験を交えながら丁寧に回答されていた。最後に、登壇者から本日の感想と一言ずつ締めの言葉があり、その共通した見解はコロナ禍において、そしてコロナ後において、世界は変わるというものであった。メセナ活動のあり方が変わる可能性、芸術文化を支える構造が変わる可能性について言及があった。時代とともに変化、進化するメセナは、次のステップへと歩みを進める事ができる、という力強いメッセージと共に本会は締めくくられた。

 

【報告】メセナライター:和田大資 Taisuke WADA アートマネージャー
1977年神戸生まれ。兵庫県立神戸高等学校、同志社大学文学部美学及び芸術学専攻卒業。伊勢丹を経て日本フィルハーモニー交響楽団へ転職。広報宣伝、営業、企画制作を担当。2012年帰郷。京都市音楽芸術文化振興財団にて京都会館再整備、京都コンサートホール主催事業を担当。2015年より箕面市メイプル文化財団に勤務。2020年4月より(同)芸術創造セクションマネージャー。

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