「2025年度メセナ活動実態調査」報告会 支援から共創へ~さまざまに連携し、社会に新しい価値をつくるメセナ活動~
企業による芸術文化振興の取り組みに関する「メセナ活動実態調査」の2025年度調査結果の報告会を開催します。
前半は最新の調査結果をご報告するとともに、外部組織と連携してメセナ活動に取り組む企業3社の活動事例を、各ご担当者様にご発表いただきます。後半では、外部連携により広がるメセナの可能性について、モデレーターと事例紹介企業ご担当者様とのディスカッションを通じて、理解を深めていきたいと考えております。
皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
【開催概要】チラシ(PDF)
■日 時:2026年7月30日(木) 14:00~16:00(開場13:30)
■会 場:印刷博物館 B1F 研修室
(〒112-8531 東京都文京区水道1丁目3番3号 TOPPAN小石川本社ビル)
■参加費:一般:4,000円 学生:500円 協議会会員:無料
■定員:
・会場:70名 (定員になり次第、受付終了いたします)
・オンライン:人数制限なし ※アーカイブ配信[8月6日(木)~9月6日(日)]
■お申込み方法:
(1) クレジットカード(VISA, Master, JCB, AMEX)払いの方
Peatix:https://mecenatresearch2025.peatix.com
(2)事前振込または当日会場支払い(現金のみ)の方、協議会会員の方
専用フォーム:https://pro.form-mailer.jp/fms/2e1fa8d9335016
■お申込み締切:7月23日(木)
<アーカイブ視聴の申込> Peatix(クレジットカード払い):7月29日(水)まで、専用フォーム(事前振込、協議会会員):8月5日(水)まで
主催:公益社団法人企業メセナ協議会 協力:TOPPANホールディングス株式会社
委託:独立行政法人日本芸術文化振興会委託事業「令和8年度文化芸術活動の動向把握に向けた基礎資料収集事業」
【プログラム】
◇開会ご挨拶 夏坂真澄[企業メセナ協議会 理事長]
◇2025年度メセナ活動実態調査結果報告
天野真一 氏[企業メセナ協議会 調査研究部会長/キヤノン(株) サステナビリティ推進本部 社会文化担当主幹]
◇メセナ活動のご紹介
(1)株式会社AOI Pro.
「映像を活用した地域活性化~新たな地域共創のカタチ~」
鳥居 碧 氏[ビジネスプロデューサー(子会社/株式会社つなぐ 代表取締役 兼務)]
(2)近畿労働金庫
「アートがつなぐ共生の輪」
東中健悟 氏[営業推進部 地域共生推進室 室長]
(3)SOMPOホールディングス株式会社
「SOMPOの文化・芸術を通じたコミュニティ・社会への貢献」
市川アダム博康 氏[サステナブル経営推進部長]
◇ディスカッション
モデレーター:片岡まり[企業メセナ協議会 常務理事]
鳥居 碧 氏、東中健悟 氏、市川アダム博康 氏
◇閉会ご挨拶 片岡まり
※会場参加の皆様には、16:00頃より印刷博物館の学芸員による約30分ほどの見学ツアーにご参加いただけます。この機会にぜひご参加ください。
【登壇者プロフィール】(敬称略)
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天野真一 *企業メセナ協議会 調査研究部会長 [キヤノン(株) サステナビリティ推進本部 社会文化担当主幹] 1987年入社。障がい者用機器開発に携わったのち、キヤノンの技術とアートを結びつけるメセナ活動「キヤノンアートラボ」を担当。その後、広報部門でのカメラ担当を経て、CSR部門にて、メセナ活動、フィランソロピー活動に従事。2022年1月より現職。 |
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鳥居碧 [(株)AOI Pro. ビジネスプロデューサー(子会社 / (株)つなぐ 代表取締役 兼務)] 2013年株式会社AOI Pro.入社。広告映像の制作進行に従事したのち、2019年に社長室配属。社長秘書として秘書業務および事業開発に従事する。主に地方創生事業や教育事業の開発に従事し、多数の自治体・教育機関案件を手掛ける。2023年に新規事業開発を担うBiz-dev.部チームリーダーに就任。2025年には子会社 株式会社つなぐを設立し、代表取締役に就任。地域の課題解決や人財育成に取り組んでいる。 |
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東中健悟 [近畿労働金庫 営業推進部 地域共生推進室 室長] 近畿労働金庫に1997年に入庫後、事業推進や地域連携分野を中心に経験を重ねる。誰もが自分らしく活躍できる社会の実現を目指し、多様性を尊重した取組みを推進。直近では、生協とエイブルアートによる「ARTS in CO-OP」の立ち上げに携わり、アートを通じた地域共生の輪の拡大に注力している。 |
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市川アダム博康 [SOMPOホールディングス(株) サステナブル経営推進部長] ワシントンDC生。保険金支払い部門を経て、2010年からサステナビリティ部門に従事。グローバルイニシアティブのルールメイキングに注力する一方で、NGOやスタートアップ企業との共創、新美術館建設や美術展覧会企画など、ビジネス、社会、アートを横断する協働プロジェクトを経験。2025年3月より現職。 |
開催報告
2026年7月30日(木)に印刷博物館(東京都文京区)において、「2025年度メセナ活動実態調査」の報告会が開催された。
今年度のテーマは、「支援から共創へ~さまざまに連携し、社会に新しい価値をつくるメセナ活動~」。メセナ活動の最新調査結果の報告に始まり、メセナ活動に取り組む企業3社の事例を発表。会の最後に、外部連携におけるメセナの可能性などについて、モデレーターと事例紹介企業登壇者によるディスカッションが行われた。
◇2025年度メセナ活動実態調査結果報告
天野真一 氏[企業メセナ協議会 調査研究部会長/キヤノン(株) サステナビリティ推進本部 社会文化担当主幹]
2025年度メセナ活動実態調査(対象期間:2024年4月〜2025年3月)は、日本国内企業2,097社、企業財団325団体を対象に実施した。調査結果は、『MécénatReport2025』(2026年2月発行)として発表されている。今回の報告会では、レポートの中から「事後評価の現状と成果」「外部連携の現状とメリット」「AIへの関心と活用の展望」の3点に着目して分析がなされた。

調査の全体像とメセナ活動費の推移
2025年度調査では企業539社、財団195団体からの回答があった。また、活動総件数は、企業は1,604件、財団は642件で、財団の活動総件数は前年度よりも24件減少したが、企業については前年度調査より141件増加した。メセナ活動費は 総額143.6億円(前年度比約14%減)、財団の活動費用は 総額557.5億円(前年度比約3%減) であった。活動費用は企業・財団ともに減少傾向にあるが安定的な取り組みを続けている。

事後評価の現状と重視される成果
メセナ活動の成果を「事後評価している」企業は約4割となった。事後評価を実施している企業では、活動の成果として「地域での自社ブランドの向上」を挙げる企業が63.8%となり、5年前比で8.6ポイント増加し、5年前と比較した項目の中で最も伸びが大きい結果となった。さらに事後評価を継続している企業は、実施していない企業に比べ、「地域における自社の存在感」を成果としてより強く認識しており、地域での価値向上はますます重要な要素となっている。また定性・定量的な評価の蓄積が、活動意義に対する社内認識を深めていく傾向にあるといえる。


外部連携の現状とメリット
回答のあった企業・財団の約5〜6割が、NPO、自治体、大学、国連機関等の外部組織と連携している。 外部組織が持つ高度な専門性や多角的な視点を取り入れることで、自社単独では成し得ない支援が可能となる。外部連携には意思決定プロセスの複雑化などの課題はあるものの、新たな知見の獲得やノウハウの共有など、活動の可能性を広げる機会となりうるものである。また連携の高まりは、メセナ活動の意義が従来の一方向的な支援から、価値をともにつくる”共創”へと変化していることも示唆している。

AIへの関心と活用展望
今回の調査では、AIに対する関心度は企業・財団ともに約3割(30%程度)という結果であった。しかし天野氏は、この3割という数字は「法人としての関心度」を反映したものであり、個人レベルにおける関心はこれよりはるかに高いと分析している。今後はAIを「単なる業務効率化」ではなく、情報収集の高度化やデータ分析に活用へと広がっていくと予想される。
また、AIと芸術文化との関係についてもさまざまな意見が寄せられ、AIの活用によって芸術表現の独創性が損なわれることへの懸念がある一方で、AIを新たな創作ツールとして捉え、人間の創造性を拡張する可能性に期待する声も見られる。このことから、メセナ分野においても、AIは業務の効率化を支えるツールとしてだけでなく、芸術文化のあり方そのものに影響を与えうる新たな技術として認識され始めていることがうかがえる。

◇メセナ活動のご紹介
(1)株式会社AOI Pro.
「映像を活用した地域活性化 〜新たな地域共創のカタチ〜」
鳥居 碧 氏 [ビジネスプロデューサー(子会社 / 株式会社つなぐ 代表取締役 兼務)]

まずは映像制作会社AOI Pro.による、学生向け映像制作ワークショップ「撮り旅」が紹介された。このプロジェクトは、学生がプロの指導のもと、「企画・撮影・編集」のプロセスを通じて、地域の魅力を映像にアウトプットするというもの。映像制作会社の確かな知見を、次世代育成と地域課題解決に活用していく取り組みだ。2022年に開始し、これまで計29回・697名の学生が参加した。最短3日間で開催可能なプログラムで、完成した映像は自治体での2次利用が可能で、多くの自治体や企業から高評価を得ている。
活動の主な目的と期待効果は、「若者たちの地域貢献心の醸成」と現代を生き抜く「人材育成」にある。映像制作プロセスによって、多角的な視点で構成を考える創造力や、撮影許可や天候不順といった現実的な制約を乗り越える課題解決力、チームや地域住民との作業によって培われるコミュニケーション能力などが養われる。これらは、座学では学べない「非認知能力」として、未来を担う人材に必要な力としても注目を集めている。
また本プロジェクトは参加自治体・企業のブランディング向上に留まらず、自社の採用活動における透明性の確保にも寄与している。参加学生はワークショップを通じて実務を等身大で学ぶことができるため、入社後のミスマッチが減少し、離職率低下とエンゲージメント向上につながっている。鳥居氏はこの地域共創プロジェクトについて「地域を巻き込んでPR映像をつくることで、地域にも映像制作ノウハウを伝え、サステナブルな取り組みにしていきたい」と締めくくった。
(2)近畿労働金庫
「アートがつなぐ共生の輪」
東中健悟 氏 [営業推進部 地域共生推進室 室長]

次に、近畿労働金庫が行う エイブル・アート SDGs プロジェクト「ARTS in CO-OP」が紹介された。これは金融機関という日常的な空間を、地域共生とアートの接点として活用する取り組みである。労働金庫は戦後の混乱期、働く人々が銀行から融資を受けられず高利貸しに頼らざるを得なかった苦難の歴史から誕生した。「助け合い」という相互扶助の精神が組織の根底にあり、この理念がアートを通じた地域共生へとつながっている。エイブル・アート(可能性の芸術)とは、「誰も疎外されたり排除されない社会の実現」を目的に1995年に生まれた芸術運動である。特に障がいのある人たちがアートを通じて社会とつながり、誰もが豊かに安心して生きられる社会の実現を目指している。
「ARTS in CO-OP」とは、障がいのあるアーティストが店舗を訪れ、職員や利用者との交流から作品を生み出すプロジェクトである。単に作品展示を行うのではなく、アーティストが店舗のバックヤードを見学し、職員と対話する制作プロセスそのものを重視している。また作品展示を行う店舗内にアートが溶け込むことで、普段接点の少ないアーティスト、職員、利用者の間に自然な会話が生まれていく。これが「誰一人取り残さない」共生社会を具現化することへとつながっている。展示活動以外でもアーティストとの交流会や学習会を実施するなど接点を多角的に提供し、アートを通じた地域課題解決に寄与している。
「店舗空間そのものをギャラリーへと変化させることで日常を非日常空間にし、アートをきっかけとしたコミュニケーションを促進させる。それによって誰一人取り残すことのなく安心して暮らせる地域社会の実現に寄与したい。」と東中氏は語った。
(3)SOMPOホールディングス株式会社
「SOMPOの文化・芸術を通じたコミュニティ・社会への貢献」
市川アダム 博康 氏[サステナブル経営推進部長]

事例紹介の最後は、SOMPOホールディングス株式会社による文化・芸術に関する企業活動の歴史と展望が発表された。SOMPOホールディングスは1888年に創業した東京火災が起源であり、一貫して文化・芸術に関する活動や事業を継続してきた。企業とゆかりが深い画家・東郷青児の美術館を1976年に本社ビル内の高層階に開館し、「SOMPO美術館」(2020年に新築した美術館棟で移転オープン)へと名称変更した今でも、新館の建築デザインに東郷のモチーフを取り入れるなど、東郷とともに築いた文化・芸術支援の精神は着実に根づいている。
転機となった1987年のゴッホ《ひまわり》購入と美術館での公開は、当時、一部から「ジャパンマネー」への批判もあった。しかし40年近く、美術館の常設展示を経た現在、それは同社のアイデンティティーを象徴する柱となっている。また、同社が支援するSOMPO美術財団による次世代育成支援活動の一つである、新宿区の小中学生を対象とした「対話による美術鑑賞教育」では、正解のないアートを前に他者と対話する経験が自信の獲得につながるなど、通常の教育現場では得られない学習経験を与えている。
美術館運営の支援やアートを通じた活動は、社員のエンゲージメント向上にも大きく寄与している。その一つが「SOMPO大壁画プロジェクト」である。社員の有志が議論し、自社のパーパスを絵画として具現化した。ひまわり、水溜まりに飛び込む子ども、怪我を象徴する絆創膏といった自社の社会からの認識や存在意義を表すシンボルを用い、挑戦と支え合いの企業精神を可視化している。
SOMPOが行う文化・芸術活動は、アートを通じてさまざまなステークホルダーを包摂的につなげることを目指している。その結果として、地域との連携や社会への還元を通じた、安心・安全・健康な社会の実現へ導いている。
◇ ディスカッション
参加者:鳥居 碧 氏、東中健悟 氏、市川アダム博康 氏
モデレーター:片岡まり [企業メセナ協議会 常務理事]
パネルディスカッションでは、事前に集まった質問に答えるかたちで、外部との連携がもたらす活動の可能性の拡大や企業のサステナビリティにおける芸術文化支援活動の意義などが議論された。

まずは外部連携についての議論が展開された。鳥居氏 (AOI Pro.)は、連携先の選定に際し「最終的にどのような社会を実現したいか」というゴールの共有が大切だと述べた。また外部連携においてプロジェクトの成功確率を高めるには、自社の強み・弱みを明確にし、弱みを外部の専門的な組織に補完してもらうという役割分担の設計が成功のポイントと伝えた。
東中氏(近畿労働金庫)は、外部連携の社内への波及効果にも注目している。「労働金庫の理念はすばらしい」といった評価を社外の第三者であるアーティストやNPOから受けることは、担当部門からの情報発信や社内での教育よりも社員が自社の存在価値を再認識する「鏡」として機能する。社員のワーキング・エンゲージメントを高める強力な動機づけとなると語った。
次に「企業のサステナビリティにおける芸術文化支援活動の意義」について議論が展開された。市川氏(SOMPOホールディングス)は、芸術文化支援に関する活動を進めるうえで、ステークホルダー(利害関係者)が何を求めているかを見極め、活動を社会との接点として機能させることの重要性を指摘した。ステークホルダーの求めていること、そして自社のアイデンティティーに基づいた活動を尊重しながら活動していくことは、活動自体の持続性を高める。また「企業の社会的責任に関する活動」と「芸術文化支援活動」を混同しないため、それぞれのスタンスや意味を明確にして進める必要性も述べた。さらに社会貢献を単なる金銭による「寄付」で終わらせるのではなく、事業に溶け込ませ、多様性を社内に取り入れる成長機会として捉えるべきであると議論された。
2025年度の報告会では、芸術文化や地域等との連携は、企業にとって価値創造の源泉となることが明らかになった。日常的にAIが使われるようになっても、人の感性によってつくり出されるものは唯一無二だ。ステークホルダーとともに価値を育む「共創」もメセナ活動における重要な視点である。メセナ活動による社会と企業の接点は、自社のアイデンティティー形成や社員の育成につながり、長期的な企業価値向上にも寄与していくだろう。社会や人々への「共感」の感性を磨くことは、持続可能で多様性のある社会の実現を目指す企業にとって、少なからず意義を持つのではないだろうか。



