帆風美術館は、東京に本社を置く印刷会社、株式会社帆風が、青森県八戸市に設立。
八戸市郊外の工業団地にある同社の製版処理施設、帆風八戸センターの一階エントランスホールを活用して、2008年にオープンしました。江戸期の日本美術を中心に、同社のデジタル光筆画技術によってつくる複製画の企画展を開催しています。その活動は、メセナアワード2012「四季のそよかぜ賞」にも選ばれました。

 2014年度メセナ・アソシエイトによるレポートでは、さまざまな美術体験を生み出すメセナ活動を取り上げ、リサーチを行いました。このたび、帆風美術館の活動を取り上げたレポートの一部が、帆風美術館友の会誌に掲載されました!以下にその全文を掲載します。
帆風美術館友の会誌PDFはこちら


【美術体験を広げ、深めるさまざまなメセナ活動】

 帆風美術館写真.jpg帆風美術館は、東京に本社を置く印刷・デザイン会社、株式会帆風が、青森県八戸市の郊外の工業団地に1993年に設立した製版処理施設、帆風八戸センターの1階エントランスホール空間を活用し設けられた。センター設立15周年を記念して2008年にオープン、江戸期を中心とした日本美術に焦点をあて、同社の持つデジタル光筆画による複製画の企画展を開催している。複製画なので、明るい照明の下での鑑賞を許されるだけではなく、実際に手に取って鑑賞できる利点がある。
 「これまでにないことをしよう」という社風と、企業に蓄積されたカラーマネジメントと印刷の高い技術、そして現・美術館館長であり帆風の元アートディレクターであった小原紹一郎氏の日本美術に対する熱意と深い造詣がキーとなった。創業者であり取締役会長でもある犬養俊輔氏の「企業最終目標は社会貢献である」との理念に基づき、「江戸期の日本美術を高品質複製画で再現し、鑑賞の機会の少ない地方、八戸の方々に届けよう」という現在の美術館の活動方針が決定づけられた。2008年の開館当初は年に1回のペースで、近年は年に2回のペースで企画展を開催し、無料で地方の方に解放し、これまで10回(2015年3月現在)の展覧会を重ねてきた。

美術のアウトリーチ
 実は、デジタル画像技術を活用し古い美術品を複製する取り組みはほかにも、キヤノンの「綴プロジェクト」(2007年~)や、大日本印刷の「伝匠美」(2007年~)等がある。これらのプロジェクトが、美術作品がもともとあった場所に復元され、文化財の保護と次世代への継承を目的に行われいるのに対し、帆風の活動は、自分たちで企画する一つの「展覧会」のために、それに応じた作品を選んで複製画を制作しており、前者とは異なるベクトルを持つ。その理由は、八戸という地方都市で美術鑑賞の機会が少ない地域への文化貢献的な意味合いが強い。
 また先に紹介した大塚国際美術館の環境的な作品は持ち運びが困難だが、掛け軸や屏風は日本の建築様式に応じて発展した歴史から持ち運び可能という特徴を持っており、それが偶然にも美術アウトリーチをしやすくした。実際に、八戸市の中心地から少し離れた工業団地に足を運びにくい方々のために、中心市街地にある八戸ポータルミュージアムや八戸市美術館にも作品を展示する試みを5年前より開始しており、より多くの地域の方に美術体験を提供している。

鑑賞者目線の充実した展覧会資料
 帆風美術館では、展覧会の広報資料としてチラシやカタログのほか、年4回、友の会会員向けの季刊誌『風』を発行している。また美術館館内で配布する資料は、専門的な知識がなくても楽しめるような切り口で見どころを紹介するなど心がけているそうだ。
 中でも興味深いのは、カタログの構成が一般的な美術展のそれとはひと味違って、企画者が鑑賞者と同じ側に立ち、美術観賞の楽しみ・面白さを伝えたいという気持ちが滲み出ていることだ。専門家による既存の研究、解釈を丁寧に紡ぎなから、日本画の中には、日本人だからこそわかる感性や言葉使いによる文学や言葉が、折り重なるように描き記されていることなどが伝わってくる。
 これらの印刷物を制作することは、美術館であればあたり前のことかもしれないが、小規模の美術館でこれほどの数を作成できているのも、デザイン・印刷会社が運営している強みといえるだろう。

出典:
メセナに関する事例研究
http://www.mecenat.or.jp/ja/introduction/research/post/2/
公益社団法人企業メセナ協議会「メセナ・アソシエイト」2014年度事例研究レポートhttp://www.mecenat.or.jp/_data/introduction/research/uploads/mecenat_associate2014_miyamoton.pdf

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