『メセナnote』80号掲載(2014年3月発行)

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髙嶋達佳 (公社)企業メセナ協議会会長

 企業による芸術文化支援から始まったメセナは、現在、芸術・文化を通じた社会創造として活動領域を広げ、地域にも浸透し、CSRの一環として積極的に取り組まれるようになっています。協議会は今後も活動を全国に展開し、各企業やメセナに携わる人々がつながり、情報を共有できるプラットフォームの役割をはたしていきたいと考えています。
 かつて高度成長期には、経済的な豊かさを追求し、文化的なことは後まわしだった感がありますが、本来、豊かな社会とは、経済と文化の両輪があってこそ実現できるものだと思います。日本には豊かな自然があり、日本人は四季折々の美しさの中で感性を育んできました。その類いまれなる感性が文化に生きていることが日本の特徴だと思います。世界無形文化遺産になった和食は、美味しいだけでなく目にも美しい点が評価され、建築、ファッション、アニメなども国際的に認められています。誇りを持って日本の文化を発信していきましょう。
 メセナはクリエイティブな行為です。クリエイティビティが重要な広告も原点は「人の心を動かす」こと。メセナを通じて企業イメージやブランドが向上する、地域とのよい関係が培われるというのも、人の心を動かしていくからです。さらにこうした活動を続けることで時代の空気を逸早く感じ、多様な価値観に触れることができます。新たな気づきや今までと違う視点がそこから出てきます。メセナの地道な取り組みが、いずれ大きな影響を社会や地域、企業にもたらすことを実感していただけるよう、協議会活動に取り組みたいと思います。

たかしま・たつよし
1944年神奈川県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。66年(株)電通入社。同社代表取締役社長執行役員、取締役会長などを経て、2013年より会長、2016年より相談役、一般社団法人日本広告業協会理事長。

 

 

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尾﨑元規 (公社)企業メセナ協議会理事長

 社会は今、量的な拡大の時代から質の向上に加速度的に変わり、豊かさの意味も変化しています。特に震災以降、経済的な拡大や効率の追求が犠牲にしてきたものに気づき、人々のつながりやコミュニティーの再生、幸せな生き方が問われています。
 芸術・文化に触れた時に「楽しい」と人が感じるように、芸術・文化は人間のベースにある本来的な楽しみです。それによって感性が育まれ、価値観や思考のしかたが広がり、情緒性が伸びていく。そうすると社会そのものの質が豊かになります。さらに人々は、情緒的な価値を求めるとともに、環境や高齢化、健康志向といった社会的価値への要請をますます高めています。情緒性に社会価値をどう融合させて企業活動の高付加価値化につなげるか。「芸術・文化振興による社会創造」としてのメセナがそこに機能していくことで、企業が目指す方向と社会や人々が求めるものが一致していくのではないでしょうか。
 今日のグローバル化により、人、もの、情報の行き来がボーダレスになりましたが、一方で、文化はローカルなものです。日本は地理的にも歴史的にも熟成された独自の文化がある。「コーポレート・メセナ・イヤー」を機に、その特長を力強く発信したいと思います。それとともに、国を超えた関係性の中で、他の文化を受け入れていくことも大事です。相互の文化を理解し、交流から融合へと向かう過程で新たな活動も始まり、お互いに人々の幸せな生活につなげていく。ネットワークを広げながらスパイラルに事業を展開し、メセナの成果を可視化して多くの方々と共有していきたいと考えています。

おざき・もとき
1949年長崎県生まれ。72年慶應義塾大学工学部卒業、花王石鹸(株)(現・花王)入社。企画部ブランドマネージャー、化粧品事業本部長、ハウスホールド事業本部長を経て、2002年取締役執行役員、04年代表取締役社長執行役員、12年より取締役会会長。14年顧問に就任。17年同職を退任。


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