メセナアワード2025
[大賞]メセナ大賞
MEET YOUR ART
活動内容

人が持つ無限の創造力を信じ、多様な才能とともに世界に感動を届けることを理念に、エイベックス・グループの中でアート事業を推進するエイベックス・クリエイター・エージェンシーは、2020年に「MEET YOUR ART」を開始した。国内のアート市場は小規模かつ閉鎖的であり、才能ある若手芸術家が社会とつながる機会が少ないといった課題から、日本のエンタテインメントを牽引し、音楽・マネジメント事業で培ってきた強みを活かしてアーティストの価値の最大化とアート市場の発展を目指している。
主に若手・中堅アーティストを中心にアートの情報を幅広く伝える動画メディアを運営。インタビューや対談を通じて現代アートに関する知識を紹介するほか、著名人による展覧会案内やアトリエ訪問などのコンテンツもある。4年間で600本以上配信し、潜在的にアートに関心ある層にも働きかけ、1動画あたり平均1-10万回再生、チャンネル登録者数は8万人を超える。さらに、番組から発展してネットショップなども複合的に展開する。
2022年からはリアルな交流の場として「MEET YOUR ART FESTIVAL」を開催し、天王洲運河一帯を会場に若手キュレーターによる展覧会やアートフェアをはじめ、音楽・食・ファッションなど領域を横断したイベントを運営している。また、アートを軸にさまざまなカルチャーの発信拠点として西麻布に「WALL_alternative」をオープンし、多様な人が有機的に混ざり合う場となっている。
年々規模を拡大し、東京都、文化庁や経産省、またパートナー企業と官民連携で複合的に事業を推進。芸術文化全体の活性化に向けて、先進的な手法でアートの扉を開き、可能性に挑み続けている。
受賞理由
事業ノウハウを活かした独創的な手法で若手アーティストを支援し、オンラインとリアルの相乗効果により、現代アートの裾野を拡げている。
官公庁や企業との協業を広げ、日本のアート業界に新たな仕組みと潮流を築く将来性が期待される。
企業プロフィール
エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社
本社所在地:東京都港区
設立年:2022年
資本金:1億円
従業員数:11名(2025年3月現在)
主な事業::MEET YOUR ARTを中心とする複合的なアート事業
URL:https://avexcreatoragency.com/
(2025年10月現在)
エイベックス株式会社
本社所在地:東京都港区
設立年:1988年
資本金:47億5,500万円
従業員数:1,487名
主な事業:音楽事業・アニメ・映像事業ほか
URL:https://avex.com/
(2025年3月現在)
[優秀賞] ―時代に合わせた対応で読書啓発を50年間継続―
すべての子どもたちに読書の喜びを
活動内容

伊藤忠商事の戦後再発足25周年に設立された伊藤忠記念財団は、青少年の健全育成を目的にさまざまな事業を展開してきた。現在は「すべての子どもたちに読書の喜びを」をテーマに、2つの事業を軸に青少年の読書環境の整備に取り組む。
一つ目は1975年から継続する「子ども文庫助成事業」である。主に地域の子ども文庫や読み聞かせ団体、病院・特別支援学校などで読書啓発活動を行っているボランティアなどを対象に、30万円の資金助成または財団選書の100冊を贈呈する図書助成、そして長年読書啓発に貢献してきた個人への顕彰を行う。特に資金助成については、財団職員が全国各地にある応募者の活動場所を訪問、対面で情報交換することで現場の状況を理解し、事業の改善につなげている。これまで国内外に2,925件・約12億円を助成し、さらに2011年以降は被災地の学校図書館に図書の寄贈も継続している。
2つ目は2010年に始めた「電子図書普及事業」である。紙の書籍では読むことが困難な子どもたちのために、児童書を電子化(マルチメディアDAISY規格)し、全国の学校、図書館などに寄贈している。2024年度までに累計915作品を製作、延べ16,665カ所に寄贈するとともに、「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」にも提供。また、全国の図書館などの協力のもと、障害のある子どもたちへの読書支援に必要な知識や方法を学ぶ機会として「読書バリアフリー研究会」を開催している。
同財団は2024年度に設立50周年を迎えた。今後も社会の変化やニーズに応じながら、子どもたち一人ひとりが本に触れる環境をつくり、本を読む楽しさを伝え続けていく。
受賞理由
半世紀にわたる読書振興への貢献とともに、多くの子どもたちの豊かな心の醸成に寄与している。
現場のニーズを汲み取り、地域の図書館や教育機関との連携により、読書文化の向上につなげている。
団体プロフィール
公益財団法人伊藤忠記念財団
団体所在地:東京都港区
設立年:1974年
正味財産:59億3,264万円
職員数:9名
主な事業:青少年の健全育成事業(子ども文庫助成事業、電子図書普及事業)
URL:https://www.itc-zaidan.or.jp/
(2025年9月現在)
[優秀賞] ―地方再生の先導者として文化芸術支援を継続・拡充―
石見銀山における古民家再生活動
活動内容
世界遺産石見銀山のお膝元である大田市大森町を拠点に、義肢装具やシリコーンゴム製の人工補正具を製作する中村ブレイス。同社では「町に文化力を」との想いから、古民家を買い取り、修復・再生事業に取り組む。1988年に創業者・中村俊郎氏が私財を投じて始め、毎年数件のペースでホール、資料館、飲食店や雑貨店、宿泊施設などに生まれ変わらせてきた。これまでに手がけた建物は60軒以上に上る。
2014年には旧大森郵便局庁舎を世界一小さなオペラハウス「大森座」としてオープン。地元出身のアーティストによる凱旋コンサートや地域のピアノ教室の発表会などに利用されており、演奏家と観客との距離が近いアットホームな空間が好評を得ている。2023年には「石見銀山まちを楽しくするライブラリー」を新設。島根県立大学と共同で、ライブラリーやカフェ、コワーキングスペースをつくり、学生・地域住民・観光客の交流拠点として運営する。学生主催のイベントや研究発表会など、地域の一員として活動する機会を創出している。
現在では大森町への移住者が増え、義肢装具士の国家資格を取得した就職希望者が全国から集まり、社員やその家族など約70人が古民家を再生した社宅や社員寮に住んでいる。一時は幼稚園児が一人まで減少したものの20人に増え、運動会や文化祭などを通して以前からの町民とのつながりもできている。
同社の社是は「Think」、そして社名の「ブレイス」は、患者一人ひとりに寄り添い、身体も心も「支える」という誠実さを大切にしている。「再び世界に誇れる町に」と希望をもち、歴史や景観を守り育てる姿勢が、人と自然の共生する持続可能な地域へと広がっている。
受賞理由
長年にわたる地域資源の保存再生と拡大により、持続的なまちづくりに寄与している。
多様な人々が交流できる場や仕組みを創出し、地域ににぎわいと誇りをもたらしている。
企業プロフィール
本社所在地:島根県大田市
創業年:1974年
資本金:2,000万円
従業員数:70名
主な事業:義肢装具・医療用具の製造販売
URL:https://www.nakamura-brace.co.jp/
(2025年9月現在)
[優秀賞] ―写真文化の継承と若手写真家の育成―
写真文化を守り育て、写真の持つ力を発信する「フジフイルム スクエア」の活動
活動内容

写真フィルムで培った技術を活かして幅広い領域で事業を展開し、社会に新たな価値を創出する富士フイルムは、写真文化を守り育て、写真の持つ力を発信する場として「フジフイルム スクエア」を運営している。館内には企画展や公募展、若手写真家の作品発表の場である「富士フイルムフォトサロン」や、写真とカメラの歴史を伝える「写真歴史博物館」などが併設され、2007年の開館以来、延べ1,800回以上の展示を実施、来館者数は850万人を超える。
富士フイルムグループの創立90周年を記念して開催した展示では、「フジフイルム・フォトコレクションⅡ」として収集した20世紀の写真史に名を連ねる著名な海外写真家のオリジナルプリント53点を公開し、好評を博した。「写楽祭!―日本の写真集 1950~70年代」では、それぞれの時代に注目を集めた写真家の写真集に焦点をあてた展覧会を開催。当時の写真文化の振興において写真集と写真展が果たした役割を再考する機会をつくった。
幅広いジャンルの展示に加え、写真作品に触れる機会が少ない若年層に向けたユニークな企画や同社の元社員がコンシェルジュとして写真の歴史などを解説するツアーは、修学旅行に組み込まれるなど、若い世代の写真文化への興味を喚起している。
さらに、写真家を志す45歳以下の人を対象に個展開催の機会を提供する「写真家たちの新しい物語」や、著名な写真家が応募作品を講評、受賞者を選定し、受賞者とともに個展をつくる「ポートフォリオレビュー/アワード」を開催。新しい感性を持つ写真家の支援に取り組んでいる。
「フジフイルム スクエア」は、写真文化を大切に育みながら、若手写真家の育成も支援し、写真表現の可能性を追求している。
受賞理由
写真の歴史や文化の継承に取り組むとともに、写真の持つ価値を幅広い層へ発信し続けている。
若手写真家の育成支援を通して、写真の新たな可能性を探求し、写真文化の発展につなげている。
企業プロフィール
本社所在地:東京都港区
設立年:1934年 (2006年 富士写真フイルム(株)から商号変更)
資本金:404億円
従業員数:7万2,593名(連結)
主な事業:ヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングにかかわる製品・サービスの提供
URL:https://www.fujifilmholdings.com/
(2025年3月現在)
[優秀賞] ―社員の音楽活動を支援し、地域の音楽文化を高める―
ブリヂストン吹奏楽団久留米
活動内容
「ブリヂストン吹奏楽団久留米」は、1955年、ブリヂストン創業の地・福岡県久留米市で地域の音楽文化向上と社員の文化活動を目的とし、創業者の石橋正二郎氏によって創設された、久留米工場と鳥栖工場の従業員によって構成される社会人吹奏楽団である。『最高の音楽で社会に貢献』を楽団の使命として、会社はシフトや勤務地の調整を行い、現場の同僚従業員からも支えられながら、現在、約60名の団員がタイヤ生産と音楽活動の両立に励んでいる。
2024年度は、久留米市にある石橋文化ホールでの定期演奏会など13の演奏会に参加し、久留米地域をはじめとする全国各地の人々へ吹奏楽の豊かな音色を届けた。また、地域貢献の一環として施設や学校を訪問し演奏する活動や、地域の音楽イベントへの参加なども積極的に行っている。
近年は、次世代育成のための活動も活発になっている。久留米市の中学・高校の吹奏楽部を対象とした「楽器指導」、全日本吹奏楽コンクール課題曲の解説とミニコンサートがセットとなった「吹奏楽コンクール課題曲講習会」、さらに2024年からは楽器演奏や指揮を体験できる「こどものためのコンサート」を開催しており、子どもや学生などが音楽に親しむきっかけづくりや吹奏楽の普及・向上にも意欲的に取り組んでいる。
また、同楽団は「全日本吹奏楽コンクール」に1957年に初めて出場し、1970年には初の金賞を受賞した。団員は3交替制勤務の厳しい状況の中、仕事も音楽も全力で打ち込んでおり、同コンクールで2024年までに50回以上の出場と38回の金賞受賞を重ねている。
「ブリヂストン吹奏楽団久留米」は、常に高みを目指し、最高の音楽を奏でながら、地域の音楽文化の振興・向上に貢献している。
受賞理由
創設以来、70年にわたり、従業員の仕事と音楽活動の両立を支援している。
卓越した演奏や次世代育成のための活動を通じて、工場所在地を中心に全国で、音楽がもたらす感動と喜びを届けている。
企業プロフィール
本社所在地:東京都中央区
設立年:1931年
資本金:1,263億5,400万円
従業員数:1万4,207名
主な事業:プレミアムタイヤ事業、ソリューション事業等
URL:https://www.bridgestone.co.jp/
(2024年12月現在)
[優秀賞] ―女性音楽家のキャリア継続支援で活躍の場を広げる―
東京女子管弦楽団への活動支援
活動内容

1973年設立のモデュレックスは、ビルや商業施設の照明デザインを起点に、人々にとって心地よい環境をつくり出すのに必要な各種技術を、独自に統合したソリューション体系として構築し提供する中堅企業である。その範囲は照明、空調、映像、音響、香りの制御といった領域に加え、建物が抱えるエネルギー課題の解決までおよぶ。同社はこうした事業活動に加え、学術活動、芸術活動にも積極的に取り組み、社会課題を解決しながら事業を推進するソーシャルインパクトビジネス化を経営方針として掲げている。
東京女子管弦楽団(TWO)は2022年に同社が設立発起した、日本で初めての女性音楽家のみで構成されるクラッシック音楽専門のプロフェッショナルオーケストラだ。女性音楽家は出産・育児などライフステージの変化に伴い、家庭と演奏の両立の難しさからキャリアをあきらめることが多い。そうした中で、女性音楽家の社会的地位向上とキャリア問題解決を目指す楽団への資金支援をはじめ、継続的な演奏活動機会を創出している。
社員と取引先に向けた2週に1回の社内音楽会では、代表者自ら曲目の作曲背景や楽器の解説を行い、同社デザイン部門が照明・映像・香り・音・風・味覚の五感を融合させた空間演出を施し、企業メセナと社業の相乗効果を生んでいる。全社を挙げて支援することにより、社員と取引先とのコミュニケーションの活性化にもつなげ、クラシックファンの拡大に寄与している。
2025年は新たに「TWOは、未来を『ひらく』。」というコンセプトを打ち出した。演奏家・管弦楽・聴き手のさらなる可能性を切り拓き、新時代を築いていく挑戦は始まったばかりだ。
受賞理由
女性音楽家の継続的かつ安定したキャリア形成を支援し、クラシック音楽業界の課題に挑戦している。
自社資源を活用した演出の創意工夫により、音楽の新たな可能性とファンの拡大に努めている。
企業プロフィール
本社所在地:東京都渋谷区
設立年:1973年
資本金:1億5,700万円
従業員数:234名
主な事業:統合環境ソリューション事業
URL:https://www.modulex.jp/
(2025年9月現在)