メセナアワード

メセナアワード2017

[大賞]メセナ大賞

三菱地所株式会社

三菱地所のShall Weコンサート(出張コンサート)

活動内容

「Shall Weコンサート」は1996年より始まり、当初は地域交流と社会福祉を目的に、自社で企画・運営・実施するコンサートをホール等で開催、音楽による福祉支援を長年にわたって行ってきた。
2004年からは出張コンサートとして、毎年、都内特別支援学校60校程の小中高等学校を対象に実施校を募り、年5,6校で実施。これまでにのべ76回を開催し、参加した児童・生徒は約1万人にものぼる。
学校への呼びかけから、全体のコーディネート、企画・制作を社員が担当し、出張先の学校とコミュニケーションを重ねながら、各学校の状況と要望に応じたプログラムを演奏者とともにつくり上げる。まさに手づくりのコンサートとして、三菱地所の手づくり型メセナ活動の伝統を引き継いでいる。
校内の体育館などを使用した1時間程度のコンサートでは、普段、気軽に演奏会などへ行くことが難しく、接する機会が少ない子どもたちが、ライブで音楽に触れたときのさまざまな反応や身体いっぱいに感動を表現する姿が、活動の喜びでもあり、継続の原動力につながっている。そして工夫や改善を重ねた蓄積が力となり、ネットワークを生み、さらなる活動の発展へと好循環を生み出している。
身近に音楽に触れられるような工夫をし、学校ごとにきめ細やかな対応をしながら、体験型プログラムの充実を図るなど、演奏だけにとどまらない多彩なプログラムも展開。未来を生きる子どもたちの感性と可能性を広げ続けている。

評価ポイント

長年にわたって障がいのある子どもたちへ音楽鑑賞・体験の機会を創出し、豊かな感性を育んでいる。
社員の主体的な運営により、学校に応じたプログラムの充実と発展に寄与している。

企業プロフィール

本社所在地:東京都千代田区
創立年:1937年
資本金:1,418億円
従業員数:755名
主な事業:オフィスビル・商業施設等の開発、賃貸、管理
URL:http://www.mec.co.jp/
(2017年3月現在)

受賞スピーチ

三菱地所株式会社 執行役社長 吉田淳一 様

感性と可能性の広がりを、未来を生きる子どもたちへ

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[優秀賞]アートの玄関賞

株式会社アーバネットコーポレーション

アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション

活動内容

「アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション(AAC)」は、2001年に始まった学生限定の立体アートコンペである。都市型マンションの不動産開発を行うアーバネットコーポレーションが、文化的で洗練された住空間をプロデュースする「アートのあるライフスタイルの実現」と、プロへの道が険しい立体作家を志す学生の支援を目的に立ち上げた活動だ。
同社が施工する新築マンションの1棟を対象に、エントランスホールに展示する立体作品を毎年公募する。手探りで始まった活動は少しずつ認知され、16年の応募数は62作品(57名)。東京に限らず、金沢や京都などの工芸が盛んな土地で、陶器はじめブロンズ、アクリル、漆など、多岐にわたるアイデアが寄せられた。書類審査を経て、入賞3点以上・入選数点が決まる。
入賞者には20万円が支給され、同社の設計・施工担当による技術サポートのもと、実際に作品を制作する。学生には自分の表現との調和を持たせながら、耐久性や安全面を考慮し、長期展示に耐えうる作品の制作にプロとしての意識が求められる。最終審査はマンションのエントランスを会場に、作品のプレゼンテーションと4名の審査員によって行われる。最優秀賞受賞者には表彰式で賞金100万円を贈呈するほか、マンションに恒久的に作品を設置。そのほか、入賞者には別のマンションに飾る立体アートの制作を依頼することもある。
活動後も学生と社会をつなぎ、未来へ羽ばたくステージを用意している。くらしとアートの出会いの創出とともに、明日の才能の扉を開いている。

評価ポイント

彫刻分野で学生を対象にした前例のない活動であり、新たな才能を見出している。
経営資源を活かした継続的な支援により、若手の育成に貢献している。

企業プロフィール

本社所在地:東京都千代田区
創立年:1997年
資本金:16億7,300万円
従業員数:40名
主な事業:不動産開発事業、不動産賃貸業、不動産仲介業
URL:http://www.urbanet.jp/
(2017年6月現在)

受賞スピーチ

株式会社アーバネットコーポレーション 代表取締役社長 服部信治 様

くらしとアートの出会いから、明日の才能の扉をひらく

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[優秀賞]しまんちゅ心と技賞

株式会社沖縄タイムス社

沖縄タイムス伝統芸能選考会・選抜芸能祭

活動内容

沖縄を代表する日刊新聞「沖縄タイムス」は、戦後の荒廃の中、郷土再建を志した県内初の民営新聞として1948年に創刊された。創刊者の1人・豊平良顕氏は「戦後の復興は文化から」の信念のもと、優れた伝統芸能の復活と振興を提唱し、古典の正しい継承と新人育成を掲げて54年に「新人芸能祭」を創設。郷土芸能発展の礎を築き、67年には「沖縄タイムス芸術選賞」と改め、その一環として「伝統芸能選考会」を実施、2016年は創設から60回目を迎えた。
琉球古典舞踊・琉球古典音楽(三線、箏曲、太鼓、笛、胡弓)の6部門で、新人賞・優秀賞・最高賞・グランプリの4段階を設ける。沖縄芸能協会・沖縄新進芸能家協会に所属する芸能家の推薦を受け、新人賞では中学2年生から応募できる。選考会では、時間(テンポ)・発声発音・姿勢・衣装や化粧など、伝統を重んじた芸域を重視。16年は680人が選考に臨み、311人の入賞者が同社紙面に掲載された。
受賞者は協会に加盟するとともに、毎年10月に開催する「選抜芸能祭」に参加。各部門による5日間の公演を通し、琉球芸能の実演家として第一歩を踏み出す。活動から巣立った実演家たちは国内外で活躍の場を広げ、ポーラ賞受賞者や重要無形文化財「組踊音楽太鼓・歌三線」保持者ら人間国宝も輩出。そのほか、小学生対象の「こども芸能祭」の開催や、活動60年の節目になる14年は宮古島での特別公演を実施。技芸の継承から地域交流へと発展している。
近年では中高生のグランプリ受賞者も出てきた。郷土を愛し守り抜いてきた島人の心は、大きな遺産となって、美しく気品に満ちあふれた文化を築いている。

評価ポイント

60年を越えた沖縄伝統芸能の保護・継承により、地域振興や文化交流に寄与している。
継続的な新進芸能家の育成を通し、芸能文化の発展に貢献している。

企業プロフィール

本社所在地:沖縄県那覇市
創立年:1948年
資本金:3億347万円
従業員数:309名
主な事業:日刊新聞沖縄タイムスの発行、文化事業、出版事業
URL:http://www.okinawatimes.co.jp/
(2017年10月現在)

受賞スピーチ

株式会社沖縄タイムス社 専務取締役 上原 徹 様

沖縄の誇りと魂を取り戻すのは文化と芸能である

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[優秀賞]地域光らせ賞

株式会社ジェイティービー

JTB交流文化賞

活動内容

1912年に創立されたジェイティービーは、2012年に100周年を迎え、従来の総合旅行業から進化し、観光を通したあらゆる交流の創造に取り組んでいる。地域に眠る宝を発掘して磨き上げ、交流人口を拡大することで、地域が抱えるさまざまな課題の解決と活性化につなげる。「JTB交流文化賞」は、そうした同社の理念のもと05年に創設された顕彰活動だ。
同賞には組織・団体部門、一般体験部門、ジュニア体験部門の3部門を設け、組織・団体部門では、国内外における観光交流・地域活性化の取り組みを募集。自然や文化、歴史など土地固有の資源を活用し、創意工夫に富んだ持続可能な活動を応援する。個人を対象とした2部門では、心に残る旅のエピソードや感動体験を募り、16年には82作品(一般)、1,355作品(ジュニア)の応募があった。地域文化や人とのふれあいが自由で瑞々しい文章に書きおこされ、選考会では各部門で最優秀賞1作、優秀賞2作を決定する。
毎年1月に授賞式を開催し、贈賞後は、組織・団体部門の受賞地域のまちづくりを継続的に支えていく。広報活動の強化をはじめ、「地恵のたび」など各種ツアーの商品化や、地域との連携にも積極的に取り組む。人の流れを生み出すほか、地元住民の関心も高めることにより、「YOSAKOIソーラン祭り」や「越後妻有アートトリエンナーレ」など、今では有名になった活動も多い。
地域で生まれた新たな光は、旅の先で見つけた感動へとつながっていく。そして、人々の心をいつまでも明るく照らし続けるだろう。

評価ポイント

活動を通して地域の多様な観光資源を顕在化し、その魅力を多面的に発信している。
事業で培ってきた知見をもとに、ヒトやモノが行き交うしくみの創出と地域経済の活性化につなげている。

企業プロフィール

本社所在地:東京都品川区
創立年:1963年(創立年 1912年)
資本金:500億万円
従業員数:27,000名
主な事業:旅行事業、出版・広告事業、ソリューション事業
URL:https://www.jtbcorp.jp/jp/index.asp
(2017年4月現在)

受賞スピーチ

株式会社ジェイティービー 常務取締役 大谷恭久 様

「交流の創造」「地域活性化」を掲げ、さらなる高みを目指す

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[優秀賞]プラッと音楽賞

公益財団法人東日本鉄道文化財団

駅コンサートの開催

活動内容

東日本鉄道文化財団は、鉄道を通じた地域文化の振興を掲げ、駅を単なる通過点としてではなく、憩いの場、文化発信の場として、多岐にわたった芸術文化活動を展開している。駅コンサートの開催は、その代表的な取り組みの1つだ。
もとは1987年の国鉄の分割民営化を機にJR東日本が行っていた「とうきょうエキコン」が前身で、本物の音楽を気軽に楽しめる場をつくろうと、2004年にJR東京駅の丸の内北口ドームで始まった。06年には、赤煉瓦の丸の内駅舎の保存・復原工事に伴って、上野駅と仙台駅に拠点を移すことになる。以来、「上野の森コンサート」「杜の都コンサート」として春と秋に開催し、16年は上野で52回、仙台では65回を数えた。
開始当初から音楽監督に作曲家の池辺晋一郎氏を迎え、クラシックをはじめ映画音楽や日本の童謡など、ジャンルを超えて様々な楽曲を取り入れている。リハーサルから出入り自由の開かれたコンサートには、子どもから年配者まで幅広く訪れ、入場者はのべ20万人を超える。そのほか「30分の音楽会」と題し、地方の新幹線停車駅などではミニコンサートを開催。地域の交響楽団や若手音楽家による演奏で、通りがかりにふらっと立ち寄れるような安らぎの空間を演出している。不特定多数の人が行き交う公共の場では、演奏者・観客・駅利用者の安全面を最優先に、場内誘導や巡回など、駅社員の協力体制も万全に整っている。
安全で安心な環境のもと、名手たちによる香り高い文化を創出する。豊かに響き渡る音色は、そこに訪れる人、過ぎゆく人を温かく包み込んでいる。

評価ポイント

さまざまな人が利用する公共空間を活用し、気軽に本物の音楽に触れる機会を創出している。
多彩で心豊かな文化を継続的に発信しており、地域の振興に貢献している。

企業プロフィール

本社所在地:東京都渋谷区
創立年:1992年
資本金:100億円
従業員数:98名
主な事業:地域文化の振興、調査・研究の促進と支援、国際理解・国際交流の推進
URL:http://www.ejrcf.or.jp/
(2017年9月現在)

受賞スピーチ

公益財団法人東日本鉄道文化財団 理事 清野 智 様

地元に愛される駅、鉄道であるために

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[優秀賞]街が踊る賞

ポラス株式会社

南越谷阿波踊り

活動内容

埼玉・東京・千葉エリアにわたり住まいに関する提案を行うポラスは、本社のある越谷市を中心に、地域密着型経営を目指してまちづくりを行う。グループの創業者・中内俊三氏は「越谷に愛着を持ち、ふるさとと呼べる魅力ある街にしたい」と、同氏の郷里である徳島の阿波踊りの開催を呼びかけた。地元への恩返しとして1985年に始まった祭りは、2016年で32回目を迎えた。
毎年8月の3日間で開催し、越谷の夏の風物詩として約70万人が訪れる。踊り手は6,000人以上に上り、参加連の7割が地元住民やグループ社員、取引先などで構成。「踊らにゃ損々」と、自由に手を挙げ足を運び、駅周辺の全10か所の会場で踊りを披露する。準備・運営にはグループ社員1,000名以上で構成された「南越谷阿波踊り振興会」が携わるほか、01年から警察消防や地元商店会による実行委員会を立ち上げ、開催の決定権を担う。市の観光課も協力し、本祭1か月前から駅前が阿波踊り一色になる。
地域に密着した活動は、若い世代へ着実に受け継がれている。地元中学校では踊りを体育祭行事に取り入れ、高校生はあらたに連を結成し、参加の歴史をつなぐ。また、振興会主催の徳島ツアーや、徳島の招待連による踊り指導など、地域間交流も育まれている。12年からは東日本大震災の被災者に向けて阿波踊りの慰問を行っており、5回目となる16年は、名取市の仮設住宅の住民19名を本祭に招待した。
故郷の夏の風景は、地域の架け橋となり、子どもたちへとつながっていく。文化として根づいた祭りの輪は、これからも大きく広がっていくだろう。

評価ポイント

一企業による地元・公共への貢献として、長年をかけてふるさとづくりに寄与し、地域祭礼へと成熟している。
祭りを通して世代間や地域間をつなぎ、地域社会に活気を与えている。

企業プロフィール

本社所在地:埼玉県越谷市
創立年:2001年(創業1969年)
資本金:4,000万円
従業員数:238名(単体)、4,052名(連結)
主な事業:分譲住宅事業、注文住宅事業、木材プレカット事業、不動産賃貸住宅事業
URL:http://www.polus.co.jp/
(2017年9月現在)

受賞スピーチ

ポラス株式会社 代表取締役 中内晃次郎 様

阿波踊りで30年、新興住宅地の郷土愛づくり

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[特別賞]文化庁長官賞

富士ゼロックス株式会社

文化伝承活動

活動内容

富士ゼロックスの文化伝承活動は、先人の工夫や生きる知恵が語り継がれる古い書籍や伝統文書を無償で複製・復元する取り組みである。京都の呉服商に伝わる古文書をコピーしてほしいと依頼を受けたことから、「1200年の歴史を支えてきた市井の文化財を蘇らせ、後世に伝えていくことこそ、コミュニケーションによる価値創造を本業とする、富士ゼロックスらしい社会貢献である」として、2008年に京都で始まった。その後、地域に寄り添って活動を続け、14年からは研究・開発拠点の横浜でも展開、全社をあげた取り組みへと広がっている。
複製までの流れは、歴史的背景などの調査情報をもとに、原本に近い質感の和紙を用意。色再現技術や特色トナーなど、最新のデジタル技術によって独特の色彩や光沢、シミや虫食いなども忠実に再現する。失敗を繰り返しながら、長いものでは1年をかけるという。同社の技術を駆使して出来上がった複製品は、地域の販売会社の社長から依頼者へ手渡しされる。
和菓子の図案や大判地図、祭事装束の絵や戦闘術書など、これまでに250点以上を扱い、寺社仏閣をはじめ、旧家や市町村、大学などにおいて「誰でも見て触れられる」資料として、展示・公開・研究に広く活用されている。複製品は、経年劣化による損傷や保存方法などの課題解決とともに、郷土研究の進展や新たな観光資源として、地方創生へと発展していく役割も担う。
まちの歴史や文化、紡がれてきた暮らしに想いを馳せる。「時を超えたコミュニケーション」は、これからも未来を生きる人々の心を豊かに育んでいく。

評価ポイント

地道な活動を通して、古文書や絵巻物など、貴重な文化財を次世代へ継承し、文化の発展に寄与している。
公開や活用により、資料の発掘、記録、保存といった、アーカイブの形成へと発展していくことが期待される。

企業プロフィール

本社所在地:東京都港区
創立年:1962年
資本金:200億万円
従業員数:8,172名(2017年3月期 単独)
主な事業:オフィスプロダクト事業、オフィスプリンター事業、プロダクションサービス事業
URL:https://www.fujifilm.com/fb/
(2017年3月現在)

受賞スピーチ

富士ゼロックス株式会社 CSR部部長 吉江則子 様

最新技術で価値ある歴史を未来の世代へ

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