メセナアワード

メセナアワード2004

[メセナ大賞部門]メセナ大賞

大日本インキ化学工業株式会社

川村記念美術館の運営

活動内容

川村記念美術館は、大日本インキ化学工業が関連グループ会社とともに収集した美術品を公開するための施設として、1990年、千葉県佐倉市の郊外に開設された。
所蔵作品は20世紀美術を中心に、レンブラントの肖像画から、印象派、西欧近代絵画、戦後アメリカ美術まで1,000点を超える。なかでもマーク・ロスコの7枚の大作からなる《ロスコ・ルーム》や、フランク・ステラの18点のコレクションが特色を成している。
開館以来、所蔵の代表作50~80点による常設展とともに、年3~4回の特別展・企画展を開催。人気の高い美術家の展覧会や現代美術の巨匠の作品を紹介し、幅広い層の美術ファンを集めている。これまで平均して年間10万人ほどの来館者を迎えており、2004年3月末には通算145万人に達した。
教育普及活動にも力を入れており、毎日午後に行われる無料のガイドツアーや、小中学生向けの美術鑑賞プログラムにも取り組む。多彩なコレクションと独自の展覧会、教育普及活動への取り組みなど、真摯な美術館活動が高く評価された。

フランクステラのコレクション

フランク・ステラのコレクション

評価ポイント

公立美術館と比しても遜色のない安定した活動を着実に展開してきている。
同館の存在が、「文化のまち・佐倉」のイメージづくりにも寄与している。

企業プロフィール

本社所在地:東京都中央区
設立年:1937年
資本金:824億円
従業員数:4,636人
業種:化学
URL:http://kawamura-museum.dic.co.jp/
(2004年3月現在)

[メセナ大賞部門]現代総合芸術賞

アサヒビール株式会社

「NPOとの協働による「アサヒ・アート・フェスティバル」

活動内容

「アサヒ・アート・フェスティバル」は、北海道から沖縄まで全国約20のアートNPOや市民グループがゆるやかにつながりあい、ジャンルを越えたさまざまなプロジェクトを行うアートの祭典である。「市民の主体的な参加によるアート・フェスティバル」とのコンセプトのもと、アサヒビールが市民との協働により2002年にスタート。夏の約1ヶ月を集中期間として、全国各地で30以上の個性あふれる多彩なアートプロジェクトが展開されている。
水上バスでのダンスパフォーマンスや元・米屋を改装したカフェ、酒蔵や商店街など、既存のアートスペースではない場所が舞台となり、それぞれの地域に密着したプロジェクトが試みられる。また、単にアート作品を鑑賞するのではなく、創造のプロセスに市民が参加するコミュニケーション重視のプロジェクトやワークショップなども多い。6つのNPOとの協働により開催された「全国アサヒビールロビーコンサート」では、各地の同社社員も企画段階から関わっている。
運営体制は、NPO・市民グループが主導の実行委員会を組織、団体の大小や地理的距離を越えたネットワークが形成されている。

アサヒビール音楽キャラバン in 岡山
「表音記号 陶音記号」

縁台ツアー2003 「縁台的環境演出講座」

縁台ツアー2003 「縁台的環境演出講座」

評価ポイント

各地のNPOの主体性に任せて、それぞれの場でやることの意義を見出している。
多彩なジャンルを対象に新たな取り組みを展開しており、将来への展望を感じる。

企業プロフィール

本社所在地:東京都中央区
設立年:1949年
資本金:1,824億3,100万円
従業員数:3,779人
業種:食料品
URL: http://www.asahibeer.co.jp/
(2003年12月現在)

[メセナ大賞部門]企業理念賞

株式会社希望社

本社ギャラリーの展示・コンサートなど

活動内容

設計・施工・保繕まで一貫して行う建設業に取り組む希望社は、1994年、岐阜市に新社屋を竣工。同社は社員の労働時間を定めず、自主性と創造性を重んじた感性豊かな会社づくりを目指す。
希望社の文化活動は、同社「道楽苦グループ」の社員が担当する。「道楽苦」社員とは、本業の建築に関する業務とは関係なく、自分の思いのままにものづくりをする社員のことで、歴代、陶芸家や写真家らが所属してきた。現在の道楽苦社員は、本社1階ギャラリーでの展覧会の企画、コンサート等のイベント実施、また別棟の「きぼう工房」で陶芸教室を担当している。
ギャラリーではこれまでに計70回以上の絵画・彫刻・写真・工芸等の展覧会を開催、近郊で活動するアーティストや一般の人たちにもスペースを提供。「きぼう工房」には窯と作業室が設けられ、近隣の住民が気軽に出入りしている。2003年は、同社創立15周年を記念してのコンサートを7回開催。他にも、ダンスや朗読会などの催しを企画。ユニークな企業スピリットに裏付けられたのびやかな活動が、多くの人々を惹きつけている。

 

評価ポイント

企業の姿勢と文化活動への取り組みが根本的に結びついている。
近隣住民が気軽に社屋へ足を運ぶという状況新鮮に感じる。

企業プロフィール

本社所在地:岐阜県岐阜市
設立年:1988年
資本金:1億4,420万円
従業員数:109人
業種:建設
URL:http://www.kibousha.co.jp/
(2004年3月現在)

[メセナ大賞部門]運営創造賞

財団法人新日鐵文化財団

紀尾井ホールの運営と公演活動など

活動内容

「紀尾井ホール」(800席・洋楽/250席・邦楽)は、新日本製鐵の創立20周年記念事業として、1995年4月にオープンした。
開館に先立つ94年、同社およびグループ会社等の出捐により新日鐵文化財団を設立。財団スタッフ自らが公演をプロデュースし、年間に洋楽約30本、邦楽約20本の公演と公開レッスンを開催。98年設立の「友の会」会員は現在1,200人を擁する。
洋楽部門では、95年に、レジデントオーケストラ「紀尾井シンフォニエッタ東京」を創設。実力あるベテラン・中堅を核に、若手演奏家を育んできた。同オーケストラは2002年、NPO法人として独立、意欲的な活動で多くの聴衆に室内オーケストラの魅力を伝えている。
また、大阪のいずみホール、名古屋のしらかわホールと提携した「3ホール作曲共同委嘱」シリーズを2000年から実施。当初3年間に毎年2曲の新作を世に送り出し、各方面からの高い評価を得た。
邦楽分野では、古典から新作までの演奏会や、教員や邦楽に興味を持つ人々が和楽器に触れる「実技入門」、邦楽と人形劇や朗読のコラボレーションなど幅広い取り組みを行っている。

紀尾井ホール

紀尾井ホール

紀尾井シンフォニエッタ東京

紀尾井シンフォニエッタ東京

評価ポイント

洋楽・邦楽の両部門で音楽かを育成するとともに、聴衆の拡大も図っている。
多彩な事業展開により、ホールに多くのファンが定着している。

団体プロフィール

財団所在地:東京都千代田区
設立年:1994年
正味財産:19億9,100万円
職員数:14人
業種:財団[鉄鋼業]
URL:https://kioihall.jp/
(2004年3月現在)

[メセナ大賞部門]生活文化賞

株式会社鈴廣蒲鉾本店

「小さな美術展 かまぼこ板絵国際コンクール」の実施

活動内容

鈴廣かまぼこが創業120周年の記念イベントとして、かまぼこ板に絵を描くコンクールを実施。これが好評で、その後も隔年で開催するようになり、2003年で11回目を数えるにいたった。
作品に使用できるかまぼこ板は、2枚まで。ただし他のメーカーのかまぼこ板でもよく、画材や技法も問わない。応募者は0歳から100歳までと幅広い。10回展からは海外にも呼びかけている。約1万点ほどの応募作品のなかから、「ジュニアの部」「一般の部」それぞれに受賞作品を選出。入賞・入選作品は、小田原にある「鈴廣のかまぼこ博物館」2階ギャラリーで展示した後、都内の百貨店で全応募作品による展示会を開催している。
また、一般参加者とともに、漫画家や美術家など毎回20名程度の招待作家に、かまぼこ板を使った作品制作を依頼。手塚治虫や松本零士といった大御所から、赤瀬川原平や村上隆といった現代美術作家も参加している。
これまでの応募作品、招待作家の作品はすべて保管し、一部はホームページ上で公開するほか、「かまぼこ博物館」で順次作品を入れ替えながら展示している。
小さな美術展 かまぼこ板絵国際コンクールweb http://itae.jp/

11回入賞作品作家作品

11回入賞作品作家作品

評価ポイント

手のひらサイズのかまぼこ板で、誰でも自由にに創作できるという発想がユニーク。
他メーカーのかまぼこ板も使用でき、楽しくリサイクルしようという視点もいい。

企業プロフィール

本社所在地:神奈川県小田原市
設立年:1865年
資本金:2,000万円
従業員数:400人
業種:食料品
URL:http://www.kamaboko.com/
(2004年3月現在)

[メセナ大賞部門] 音楽人材育成賞

住友商事株式会社

ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラの活動支援

活動内容

ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラは、1972年の創設。国内でも歴史あるユース・オーケストラのひとつである。
住友商事は、92年よりジュニア・フィルの支援を始め、以来一貫して、同楽団の運営事務局に対する経常的な支援を行ってきた。また、ジュニア・フィルにより多くの演奏機会を提供すべく、主催コンサート「住友商事ヤング・シンフォニー」に取り組み、これまで通算33回の公演を開催。さらに2003年のイギリス、チェコでの親善演奏旅行では、同社の海外駐在員も積極的に公演をサポートした。こうした物心両面にわたる支援は、ジュニア・フィルを支える大きな柱となっている。
現在、ジュニア・フィルは、10歳から大学4年生までの約120名の団員で構成。作曲家の故・山本直純の遺志を継ぎ、第一線で活躍する音楽家が、若き演奏家たちを教える。1,000人近い卒団生の中からは、数多くのプロが誕生。彼らもまた、トレーナーとしてジュニア・フィルに関わり、楽団の歴史を築き上げている。単に音楽を学ぶだけでなく、より良い市民を育むという教育的意義に賛同し、住友商事では今後も歩みを共にしていく方針である。

2003年8月、夏合宿での練習

2003年8月、夏合宿での練習

「2003年国際音楽祭 ヤング・プラハ(チェコ)」にて

「2003年国際音楽祭 ヤング・プラハ(チェコ)」にて

評価ポイント

人材育成という面から見ても意義深い活動への支援である。
海外駐在員も含め、国内外における公演の支援体制が整っている。

企業プロフィール

本社所在地:東京都中央区
設立年:1919年
資本金:1,694億円
従業員数:4,683人
業種:卸売業
URL:https://www.sumitomocorp.co.jp/csr/
(2004年3月現在)

[メセナ大賞部門]映像開拓賞

日本ビクター株式会社

「東京ビデオフェスティバル」の継続開催

活動内容

日本ビクターがVHS方式の開発に成功した2年後の1978年、手軽な自主制作映像づくりの場を提供することを目的にスタートしたのが「東京ビデオフェスティバル」(TVF)である。以来、毎年開催し、2003年で26回目を数えるにいたる。
当初より、誰もが参加できる開かれたビデオ映像祭を標榜し、応募者の国籍や資格を一切問わず、唯一、20分以内という時間制限を設けて作品を募集。03年は過去最高の2,881本(国内938本、海外1,943本)の応募があった。
TVFでは市民のビデオによる自己表現と、作品を通じたコミュニケーションを目指している。そこで、時代の変化や社会の事象をどうとらえているか、主張やメッセージの強さを重視して審査が進められる。映画作家の大林宣彦氏らが委員を務め、入選100本を選び、そこからさらに優秀作品と大賞などを決定。優秀作品は同社ホームページで公開し、一般のWeb投票による「ピープル賞」も設けている。
TVFは四半世紀以上にわたり、市民ビデオの広場として、社会を反映するビデオ表現を生み出してきた。

TVF2004 発表・表彰式

TVF2004 発表・表彰式

評価ポイント

表現媒体としてのビデオの可能性にいち早く着目し、ニュースメディアを開拓した。
映像ジャンルのフェスティバルとして規模が大きく、継続年数も長い。

企業プロフィール

本社所在地:神奈川県横浜市
設立年:1927年
資本金:341億1,500万円
従業員数:8,032人
業種:電気機器
(2004年3月現在)

[メセナ大賞部門]児童文化賞

松下電器産業株式会社

「子供のためのシェイクスピアシリーズ」公演の支援

活動内容

「子供のためのシェイクスピアシリーズ」は、松下電器産業が90年より支援してきた「東京グローブ座」で95年からスタート。
シェイクスピア作品のおもしろさ、普遍性を子供たちにも伝えようと、原作を大胆に再構成、長い作品も2時間ほどに圧縮し、わかりやすい台詞でスピード感ある舞台は大人にも人気でリピーターも多い。夏の恒例企画として定着してきたものを、2000年からは東京以外の地域でも開催しようと、松下電器が「Panasonicツアー」を主催、松下グループ各社・事業場と協働して全国展開をはかっている。
2002年、東京グローブ座の経営が代わり、同シリーズの継続が危ぶまれたが、松下電器のサポートによって「子供のためのシェイクスピアカンパニー」として再結成した。
「Panasonicツアー」はこれまで全国13ヶ所で開催。チラシ作成やチケット販売、舞台設営、受付・会場案内にまで携わり、社員や学生ボランティア を投入することで、廉価なチケットを実現。また、地元のNPO等との協働で、リハーサルや舞台裏の見学、小中学生を対象としたワークショップを行い、観客の育成にも努めている。

2003年「シンベリン」公演より (c)石川純

2003年「シンベリン」公演より (c)石川純

2003年公演舞台裏見学の様子

2003年公演舞台裏見学の様子

評価ポイント

作品制作に対する資金提供だけでなく、運営を支える人的な協力が大きい。
各地のNPOとも協働し、次世代の鑑賞者を育む機会を設けている。

企業プロフィール

本社所在地:大阪府門真市
設立年:1918年
資本金:2,587億円
従業員数:52,376人
業種:電気機器
(2004年3月現在)

[文化庁長官賞部門]文化庁長官賞

株式会社フェリシモ

「神戸学校」の開催など

活動内容

「神戸学校」は、1997年に開始した月1回の公開講座である。95年の阪神淡路大震災を経た神戸市民の心の復興を目指したもので、2002年からは「生活デザイン学校」という新たなコンセプトのもと、神戸発の文化形成を目指して取り組んでいる。
これまでに80人を超える各界からの多彩なゲストが登場。2003年は、写真家・荒木経惟や明和電機の土佐信道らが、パフォーマンスを取り入れながら講演した。
参加料は、社員とその家族、同伴者は無料。一般参加者は1,200円。全額が「阪神淡路震災復興支援10年委員会」を通して、震災遺児の育英基金として活用され、寄付総額は、500万円を越えた。
また同社では、社員の自己啓発制度として「長期特別休暇制度」が設けられている。「神戸学校」に出席した同日に3.5時間勤務した場合、その時間を積み立てることができ、126時間になると1ヶ月間の休暇を取得できる。在籍社員のうち「神戸学校」参加経験者が約9割、そのうち休暇取得者は約80名である。独自のユニークな取り組みで、社員の自己実現を促している。

神戸学校、フェリシモホール での様子

神戸学校、フェリシモホール での様子

社員が運営スタッフとして参加

社員が運営スタッフとして参加

評価ポイント

神戸文化を自社の文化と捉え、地域に開かれた活動をおこなっている。
社員の自己啓発を促す独自の仕組みを設けている。

企業プロフィール

本社所在地:兵庫県神戸市
設立年:1965年
資本金:1億円
従業員数:1,050人
業種:小売業
URL:http://www.felissimo.co.jp/kobe/
(2004年3月末現在)

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